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ネパールでコミュニティラジオ会議

 2024年11月28日〜12月2日、AMARC-AsiaPcific(世界コミュニティラジオ放送連盟 アジア太平洋地域)の活動に参加するため、事務局のあるネパール・カトマンズを訪ねました。


AMARC Asia-Pacificとは

 AMARC Asia-Pacific(世界コミュニティラジオ放送連盟 アジア太平洋地域)とは、コミュニティ放送の価値を守り、促進し、古いメディアモデルに代わるものを構築するための国際連帯運動組織です。事務局はネパール・カトマンズにあり、約20ヵ国から約1500局をネットワークしています。およそ4年に一度、各国からコミュニティラジオ関係者が集まる大会を開催しています。私は2013年の韓国大会から参加しており、昨年開かれたタイ大会からは東アジア代表理事の役をお預かりすることになりました。今回はその初仕事としての訪問です。

AMARC Asia-Pacific 事務所入り口の看板

AMARC Asia-Pacificの事務所を初訪問

 カトマンズ空港から車で約30分〜1時間(約9km)、高級住宅街のサネパ地区にAMARC Asia-Pacificの事務所があります。3階建ての建物で、11名のスタッフが働いています。ネパール流のおもてなしで、民族柄の素敵な布を首にかけて歓迎してくれました。

ピンク色レンガの立派な事務所
財務担当ゴピさんの仕事部屋
訪問した理事と事務局スタッフ

各国からメンバーが集まっての理事会

 今回集まった理事会メンバーは9名。代表のラムさん(インド)、副代表のスーフィニヤさん(タイ)、事務局長のスマンさん(ネパール)、会計のレイモンドさん(フィリピン)、女性国際ネットワークのアーティさん(インド)、太平洋地域代表理事のシェーンさん(オーストラリア)、東南アジア代表理事のシナムさん(インドネシア)、南アジア代表理事のスバスさん(ネパール)、東アジア代表理事の私橋爪(日本)です。

3階の会議室にて理事会

 理事会は2日に渡って行われ、AMARC Asia-Pacificの活動内容や財務状況、今後の課題などが話し合われました。紛争と平和、家父長制とジェンダー、政策、メディア法、気候変動、移民、フェイクニュースなどの社会課題解決のためにコミュニティラジオを活用することがテーマです。現在進行しているプロジェクトとしては、地域社会におけるカースト、ジェンダー、宗教、民族、地理などに基づく差別から生じる紛争に対処するコミュニティラジオジャーナリストの能力強化。貧困緩和のために弱い立場の人々が参加できる番組をつくり、政治家や専門家へ問題をつなげていくプロジェクト。小規模家族農家の役割を促進することを目的としたラジオキャンペーン。フェイクニュースへの対応に関するコミュニティラジオの影響評価調査。先住民の知恵を記録し地域に普及していくラジオキャンペーン。このほか、各国コミュニティラジオの現状調査や若者向け人権トレーニング、フォーラムなどでの講演活動などをしています。大きなプロジェクトはドイツのファンドから資金援助を受けています。

理事メンバー9名

コミュニティ放送強化のための国際ワークショップ

 今回の滞在中、ネパールコミュニティラジオ協会ACORABとの共催で「ネパールのコミュニティ放送強化のための国際ワークショップ」が行われました。カトマンズ近郊のコミュニティラジオ関係者が参加し、英語とネパール語の同時通訳を介してAMARC Asia-Pacificの理事たちが各国の事例を報告しました。

国際ワークショップ参加者 集合写真

 オーストラリアからは多様なコミュニティ間の関係を促進する上でのコミュニティラジオの重要性の報告がありました。インドではカーストや民族、宗教の違い、女性へのセクシャルハラスメントや暴行などの問題があり、社会で発言できないことをラジオを通じて発信したり、音楽が架け橋の役割となっています。災害の多いインドネシアでは、災害時の解決のために必要な番組をコミュニティの人々と作っていること、特に被災者が経験を話したり、民族楽器を演奏したり、トラウマヒーリングとなるような番組作りをしています。フィリピンは人権がテーマで、暴行や内戦、銃社会の事件などの解決のためにコミュニティラジオが役立っている事例紹介。タイからはフェイクニュースの問題が上がりました。何でもネットに繋がる社会になり、お金を取られたり騙されたりする事件が増えたことを背景に、警察などと協力をして子どもたちにメディアリテラシーを教育する放送を行なっています。ネパールは、142の部族と124の言語があります。小さなコミュニティの中で、自分たちの部族の言葉を保存するためにコミュニティラジオが一役買っています。また、13歳の少女がレイプされたとうショッキングな事件が起きた時、放送を通じて警察が動き、犯人が捕まって話し合いが持たれたという事例が報告されました。まだ残るカーストや民族、女性への差別、貧困など解決のためにコミュニティラジオがあり、社会課題解決のためのジャーナリスティックな精神を持っていることが印象的でした。私は、日本のコミュニティラジオの概要と、阪神・淡路大震災をきっかけに誕生したFMわぃわぃのヒストリーをご紹介させていただきました。

インドネシアの事例を紹介するシナムさん
熱心にプレゼンを聞く参加者
多くの質問が寄せられ活発な議論が交わされた

 国や文化が違うと想像もできなかった事例があったり、共通の出来事もたくさんあります。コミュニティラジオの意義と可能性についてより深く考えさせられた時間で、このようなネットワークはとても大切だと感じました。 

 AMARC Asia-Pacificでは、4年に一度を目安に各国から多くのコミュニティラジオ関係者が集まる大会を行っています。前回は2023年タイ・バンコクで、19カ国から約150名が参加しました。次は2027〜28年ごろで、候補地にはマレーシアとフィリピンが上がっています。ぜひ日本からも多くのご参加をお待ちしています。コミュニティラジオで働く方は自分の地域の中で一生懸命だと思いますが、一歩外に出てみると、同じコミュニティラジオというテーマで繋がれる仲間たちが世界中にいて、言葉が違っても共通の話題があります。互いに経験の共有をし合うことで様々なアイディアをいただき、インスパイアされることと思います。

2023年にタイ・バンコクで開催された第5回AMARC Asia-Pacific大会


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