![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/153548238/rectangle_large_type_2_d3e2402f549c82ad2243e35a4a50d1ad.jpg?width=1200)
チョコレートに学ぶ豊かさと貧しさ
フェアトレードではなくて本物の味のお話
私のやっているお店パネテリエでは、キッチンに化学的な香料は置いてありません。
それは、体に悪いからというある種ヒステリックな理由からではなく、ズルいから。どんなものでも努力や誠意を必要とせず、香りを入れることでまるで良いもののようにできてしまうから、怖いという思いからです。しかし、香料というのは、大義でいうと、ハーブや胡椒も香りづけという意味では香料ですが。
パネテリエの材料には本物を使う事をお約束しながらも、本物というモノの価値観や考え方が実に不安定で、まだ出会っていないなどの理由から、自己ベストなだけであり、自分の中でも抽象的だと感じます。
香料を使っているお菓子
そして、パネテリエのお菓子ではこれまで唯一、ベルギー産チョコレートが使われているお菓子がありました。フールセックという、クッキーを缶に詰めたもの中の榛というチョコサンドのようなお菓子です。
この榛というお菓子は、ヘーゼルナッツのお菓子で、生地にも、サンドしたクリームにもヘーゼルナッツをつかっています。ヘーゼルナッツとチョコレートというのはとても相性が良く、ジャンドゥーヤと呼ばれる、チョコレートベースのクリームを作り、ヘーゼルナッツのラングドシャにサンドしています。そのチョコレートには、ベルギーのカレボー社の3815というチョコレートを使っていて、このチョコレートは、世界中でプロの方々が使うチョコレートの中でも有名です。たとえばサロンドショコラで受賞されているようなショコラであっても、原材料はこういった、有名メーカーのチョコレートを溶かすところから始まります。
そしてそのチョコレートには、当然カカオ豆やカカオバターが使用されており、また当然のように香料が使われています。各国大量に生産するために、ロースト具合と合わせて香料や乳化剤などで均質化を計っています。そう、カカオ豆の品質に合わせてブレてはいけないし、欠品もできないため、ある程度の枠(よく聞く最高品質のとかいう抽象的な枠です。)で仕入れられた原材料を様々な方法で均質化されています。
キラキラの裏側で
そして、まだ行ったことはないのですが、カカオの生産は熱帯雨林気候。そこではキラキラとしたサロンドショコラのような世界とはほとんど無縁の方々が農家としてカカオ豆を収穫し、ロバで運び(偶然昨日写真で見て感動!)発酵、乾燥、して主に欧米のメーカーへ送られています。よく聞かれるように欧米との貧富の差や、労働者と経営者の間には私もまだまだ理解しきれていない格差があるのだと思います。
でも、今回はそこのお話ではなくて
題名にも書いた、私の伝えたい豊かさと貧しさとは、この、貧富の差の問題はもちろん含まれていますが、それよりももっと我々自身が気づかないといけない事があります。
「そのチョコレートってカカオ豆の味ですか?」
「本当のカカオ豆、知っていますか?」私は、自身にも問いかけます。本物ってなんだろう。
私はこの日本で、豊かな暮らしをしているつもりでいて、チョコレートは大好きで、パティシエ時代にはカカオのこともそれなりに学んだつもりでいました。しかし、知っていることなんて薄っぺらい取り扱いのこと程度。誰がどうやってこのチョコレートを作ったのかなど、愚問とも言える世界でした。
本当の豊かさってなんだろう。チョコレートの原料の味、産地の違い、どんな人がどうやって畑で作っているのか、知ることもなく調整済みのしかも原産国ではなくて第三国であるヨーロッパなどで作られたものを、私も一緒になって本物のチョコレートだと思い込んでいました。
発酵して、乾燥して、ローストされただけのカカオ豆。
私の今手にしている豆の産地が特別なのかもしれませんが、今まで食べたものの中でも特徴的で香りが全くちがいます。その華やかな風味、心地よい苦味。我慢できずに朝日と共にキッチンでお菓子を作りました。
あんなふうに、こんなふうに、どんどんイメージは膨らみます。
最近、ようやく、カカオ豆生産者さんと出会うことができました。
そのカカオ豆に感動をして早速お菓子作りもスタートしています。
つくる理由がしっかりとあるお菓子を。
日本の豊かと私の貧しさ
そしてみなさまと一緒に考えていきたい、本当の豊かさ。自分の貧しさ。
てっきり、世界中のショコラを選び使う事ができるこの日本は豊かで恵まれていると勘違いしていました。身の回りにあるほとんどのショコラが、さまざまな理由からある種の純粋さを失い、原産地と我々の間に真っ暗な箱が存在してしまっているように思えてしまいます。
そんな暗闇に光を入れる活動。個人が発信できるいまだから叶う、つくると食べるをしっかりとつなげられる仕組み。
私の作りたいのは、生産者の笑顔が見えるカカオのお菓子。
そのカカオの感想をお客様が生産者さんへ直接メールできるような距離感。いいですよね。
畑から私へ届いたカカオは加工も調整も最低限に抑え、そのブレを感じながら楽しみながら南米の今を想像できるようなお菓子。
少し色々やりたいので時間はかかるかもしれませんが、私がいまベストだと思える本物をこれからみなさまへお届けします。
この出会いのきっかけをくれた、真理子さん、聡さん、真鈴さん、ありがとうございます。
オーブンからいい香りがしてきました。ジロ、ここにはバナナもたくさんあるよ。ジロも手伝いに行きたいね。