人違い4
雨です。
雨といえば水溜りです。
アスファルトの道では少ないですが
私の歩く土の道では、少しまとまった雨が降るだけで
大きな水溜りになるところがあります。
いつぞやの大雨の数日後、
うちの黒い犬と歩くいつものその土の散歩道
には大きな水溜りがありました。
細い道です。道を塞ぐ大きな水溜りを避けて通るには、
水溜りを右からなぞるように歩くか
左からなぞるように歩くかのどちらかです。
私は右からなぞる道を犬と選びました。
前方からは女性が歩いてきます。
その方も同じ方をなぞって来られました。
つまりこのまま進むと、水溜りの脇の細い陸地で
お互いがぶつかり、どちらかが水溜りに足を入れないと
いけない状況になります。
彼女は意図的なのか、どうなのか。
そしてお互いを目の前にして、お互い立ち止まりました。
女性が私に言いました。
「あら、今日はワンちゃんの散歩なのね」
この道を通るのは、ほぼ犬の散歩のときのみなのですが
「はい」
笑顔でそう言ってすれ違いました。
あの女性はいったいどなただろう?
靴下ごしに履いたサンダルを水溜りに浸しながら
考えておりました。
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