いつかの吉野家
30年以上前、税関の研修所は東京の市ヶ谷にあった。
ある日、同期に誘われ、徒歩で新宿駅付近に遊びに行き、吉野家で昼食を摂った。当時、福島県内に吉野家はなく、18歳にして吉野家初体験となった。
「500円で、こんな美味しいものが食べられるのか。東京って凄い」
感動に近い想いを抱いた、田舎の子どもが抱いた正直な感想である。
研修過程を無事に終了し、配属された横浜税関の職場近くには吉野家があった。夜勤明けの午前中に、時々利用していた。メニューはいつも「特盛、卵に味噌汁」であり、同期と腹を膨らませながら、他愛も無い話で笑いあった。
今は福島県郡山市にも吉野家があるけれど、ほとんど利用することはない。牛丼で幸せを感じていた時代が遠くなってしまった。大人になれば幸せになれると考えていたけれど、そうとばかりは限らないらしい。
もしかしたら、あの時代の牛丼に満たされていたのは、夢とか希望だったのかも知れない。
あの頃と同じ味を食すことは難しいけれど、まだ、夢を見ることは諦めない。未来から見れば、今日の自分が一番若い。
久しぶりに吉野家を利用しながら、そんなことを考えた。
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