パグだろ、パグ #創作大賞感想
パグ愛を抱く人による、パグ愛を抱く人のための、パグ好きとこれからパグを好きになる人のための小説。とでも称しましょうか。うー-ん、間違いではないけど、ちょっと違う気がします。
読書感想文ですが「ネタバレはありません」、安心してお読みください。
最初に読み終えた時の自分のコメントから抜粋すれば
うん、これが感想の全てみたいな気がします。なのでも少し詳しく語らせていただきます。
1 とにかく緻密!
「設計士か!」とか「職人か!」とかツッコミたくなるくらい、設計図がしっかりしています。ミステリー小説好きということも背景にあろうかと思いますが、読者を騙す気満々というか、野球で言えば
「ゲッツ―狙いでランナーを出す」
という感じで、最初から最後まで練り込まれている、登場人物(動物を含む)の台詞、動き、心理描写、その一つ一つに意味があるというか、無駄がないというか。
ベテラン設計者が構築したジェットコースターのように
『ガタガタガタガタ 静かに上っている。この後急降下だよね』
ギャー----っ。ほら落ちたー-!
と驚かされ、
『右急カーブ、次は逆方向(ノ・ω・)ノオオオォォォ-』
と思ったら、ツイストかー-い!
と驚かされるのです。王道展開なのに良い意味で予想の斜め上をいかれるのですが、それがまた気持ち良いのです。
2 文体が滑らか
読みやすくわかりやすいです。格好つけた難しい語句や知識を披露するような蘊蓄も少ないです。小学校高学年から中高生でも読みやすい物語になっています。また作者特有の深い心理描写もあり、道徳的で
『これPHP文庫として最適じゃないですか』
と言いたくなります。
道徳的で少年少女に読みやすく、自分自身の行動を考えさせられる展開が続きます。読みやすいので真面目な展開にも滑らかに誘われるのです。
また、全体としてはそれなりの文字数ですが、群像劇として描かれていますので、それぞれの物語は短めで完結するので、長い物語を「読まなきゃいけない」ようなストレスが少ないことにも匠の技を感じます。
3 パグ愛が凄い!
古い歌の歌詞にあるように
「あんたちょっと良い女だったよ、だけど狡いおんなー--!」
と言いたくなるくらい、「狡い」というくらいのパグ愛に溢れています。冒頭『これからパグを好きになる人のための小説』と表現しましたが、そうではなく、
『このお話を読んだら、みんなパグ大好きになるんじゃない』
と言いたくなるくらい、パグが魅力的です。それも「可愛く描く」とか「格好良く」という意図的なものではなく、著者が綴る自然な文章が「パグ愛」に溢れるような印象です。
4 群像劇であり成長譚という理想!
あ、申し遅れましたが私も時々「創作物語」に挑戦しています。未だに到達できていませんが、理想としているのは
〇1幕1場の物語
〇群像劇であり成長譚
というスタイルです、これを「してやられました」。基本的に『適応指導教室「かけはし」に誰かが訪れる』ことから物語が始まります。主人公は受け身ですが、ここでの会話と回想で物語は深みを増していきます。まさに「1幕1場」です。
さらに「来客」が自分の悩み・課題を解決していくという「群像劇」であり、主人公が(どちらかと言えばメンタルが弱くヘナチョコで迷走しがちなのに)、最後は爽快感を抱くくらいに成長します。
脇を固める「犬・鳥・申のような同僚」が場面に彩りを添えます。
この作り方なら「低予算で製作できる」という商業的なツボを抑えつつ、「ゲストキャラ・追加エピソードを増やしやすい」ということになろうかと感じています。
ここまで含めて、作者の「緻密さ・滑らかさ・パグ愛・商業主義」という戦略を感じ、感服してしまうのです。
あ、もちろんお話そのものも面白かったです。ただ、こうして持ち上げてばかりですと「提灯記事」みたいで嫌なので、恐縮ですが最後に不満を申し上げます。
「もっと、読ませていただきたいです。悩める子どもたちに救いの手を!」
と言わせてください。
商業出版・映像化される時の加筆を楽しみにしています。