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【創作SS】神無月 #シロクマ文芸部

 月めくりカレンダーの金具の端っこを左手で押さえ右手で慎重に紙を引っ張る。
 ピリとビリの間の音を小気味良く鳴らしながら古い月が破れ、離れていく。
 端から中央に、そして反対側へと左手と音が移動する。
 うん、綺麗にできた。
 軽く悦に入った俺の目に
『10月  神無月』
の文字が飛び込んでくる。

 知り合いの禰宜によれば
「出雲に神様が集まるから、他の土地からは神様がいなくなる。だから神無月」
というのは江戸時代あたりに生まれた俗説らしい。
「いつも神様は土地にいらっしゃいます」
に加えて
「いつの時代も、あの人のように【もっともらしい嘘】を騙り、広げる方がいるのでしょう」
と笑って話していた。

 確かに毎年10月に神様が土地から居なくなるなんて話は、ちゃんちゃらおかしな話だ。出雲以外の神社は門を封じなきゃいけなくなる。そんなことがある訳が無い。神様はいつも土地や人に寄り添っているんじゃないだろうか。

 俺に寄り添っている神様は、悪戯好きなんだろうな。それとも無茶振りを楽しんでるのか。
 奈良で生まれて育った俺が、大学で埼玉に行き東京で就職したのはともかく、高校時代の国体で恋心を抱いた相手と大学で再会し、交際結婚はともかく、その人と福島県二本松市で暮らすようになるとは、全く不思議な話だ。

 けど、有難く幸せな話。この縁を繋いでくれた「山の上の三女神」に、何度お礼参りしても足りる気がしない。
 今日も家の小さな神棚に、米水塩を捧げ謝意と決意を宣っとる。
「宗像三女神様のおかげで、無事に新しい朝を迎えることができました。本日も浄明正直に歩みます、お見守りくださるようお願いします」
 心の中に神様を感じる。10月だから神が居ないなんてナンセンスだと思う。

「隆夫さーん、朝ご飯準備できてるよー」
妻の声に、現実世界に引き戻される。出勤するための時間の余裕は無い。
「悪い、遅くなった」
キッチンの妻に声をかけテーブルに着く。
「ご飯食べる時間、無いかもだけど。味噌汁だけでも呑んで欲しいな。何も食べないのは止めてね」
妻の言葉に頷きながら、(遅刻してもいい。ご飯はしっかりいただく)と覚悟する。有難いことに、今の上司は
『ワークライフバランスなんて考えるなよ。仕事のための家庭じゃない。家庭のために仕事をしてください。ライフファーストですよ。皆さんの健康と家庭が最優先です。健康と家庭が基礎にあるから良い仕事ができます。良い仕事をするためにも、ライフファーストです』
と騙り、実践している。
 
 この上司、浮世離れしている感じが、神様みたいだと思ったりする。出世は遅いらしい。

 そして神様は、上司だけじゃない。
 妻里美。恥ずかしいから言わないけれど、俺にとっての女神だと思い続けている。
 振り返れば里美と出会い、想い続け生きてきた時間と行動の全てが「神の導き」のような気がする。

 妻だけど「山の神」ならぬ「川の女神 里美」

  一緒に居てくれて有難う。君と出会い、夢を叶え続け、俺は今、二本松市で暮らしている。山の上の三女神・宗像三女神、川の女神・里美、カヌーで世界を目指す子どもたち、そして世界に広がる絹・「goddess cloth」と一緒にここに居る。

   俺は神とともにある。神無月で神が居ないなんて俗説は「知らんがな」だな。

 味噌汁を飲み、ご飯とおかずもゆっくりと味わう。
 今日もご飯が美味しい、家族がいる、仕事がある、仲間がいる。
 今日もたくさんの幸せを神様からお預かりしている。神無月で神が居ないなんて、ちゃんちゃらおかしいは。

 神様は俺に寄り添っていらっしゃる。
 俺は神様に背かないよう、10月も浄明正直に生きていく。

 ただ、神様にはお願いしないけど、ここまで読んでいただいた方にはちょっとお願いしたい。
 俺・中村隆夫と妻・里美の物語が、こちら「光流るる阿武隈川」

 そして「宗像三女神と禰宜」の話が「夢見る木幡山」になる。「もっともらしい嘘」を騙る人が書いた物語、騙されたつもりで読んで欲しい。

#何を書いても最後は宣伝
#シロクマ文芸部

 シロクマ文芸部に参加しつつ、Kindle作品の宣伝をさせていただきました。
 最後までお読みいただきありがとうございます😊

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