【創作SS】スライダーの偉大な滑り方 #毎週ショートショートnote
「いかに滑るか、それが問題だ」
教授が厳かに語り始める。ゼミ生は
(また独説が始まった)
という気持ちだが、逆らうことも、異を唱えることも許されない。
教立大学のゼミにおいて、教授は神にも近い存在である。
「君たちは単位と卒業、そして私の推薦での就職を狙い、参加していることは承知してます。悪いことではないです」
教授は椅子から立ち上がり、テーブルに座る学生の周りを歩き出す。コツン、コツンと鳴る足音が、ゆったりとリズムを奏でる。
「上昇指向を持つのは素晴らしい。上を目指し価値を高めようとする姿勢も良いです。しかし、しかしです、一つ問います。
目的と手段が混在していませんか。
上を目指したとして、そこに幸せはありますか。
私は幸せは上にだけあるとは考えないです。
皆さんに幸せになって欲しいです。
この本を読んで感想を提出しなさい。
出世スライダーの偉大な滑り方をした役人の話です。
敗者に価値を見出す、ウィナーメーカーでもあります」
(本文ここまで)
ということで、ここまでお読みいただきありがとうございます。
たらはかにさんの【毎週ショートショートnote 裏お題 スライダーの偉大な滑り方】に参加しつつの、
#何を書いても最後は宣伝
です。
https://note.com/tarahakani/n/nb474f2465709
少しネタバレになりますが、「元宮ワイナリー黎明奇譚」の主人公 大沼は、役人として、ある程度順調に仕事をしていましたが、ある日「ありえない状況」に陥ります。
「役人として上ろうとするなら、この話は断ることが正しい。けど、人として一市民として、この機会を逃したら一生後悔する。俺が出世から滑り落ちても、解職でも仕方ない」
と考え、四面楚歌孤軍奮闘七転八倒することを選択します。
損な滑り方をした、馬鹿なオッサンの物語です。
なお、フィクションです、実在の組織人物等とは一切関係ありません。
モデルもありませんこと、申し添えます。
ちなみに、この話に出てくるオッサンと、ちょっとキャラが被ります。
お付き合いいただきありがとうございました。