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【創作】星が降る夜 #シロクマ文芸部
星が降る夜は、あの娘のことを想わずにはいられない。
「流れ星が消える前に三回願いごとを唱えると、夢が叶うのよ」
と下僕が言っていた。
僕が願うのは
「あの娘が幸せでありますように」
ということだけ。もう叶えられていると信じているけれど、星が降る夜に願わずにはいられない。
下僕の帰宅が遅い、帰宅したら叱ってやらなきゃ。
彼女を見たのは保健所の倉庫だった。和風の顔をした、小さくて可愛いい三毛猫がキャリーバッグから小さくて狭い檻に入れられた。彼女は
「パパ、ママ、パパ、ママ、どこー」
って何度も言いながら泣いた後に疲れて寝てしまった。側に行きたかったけど、僕も檻の中の猫。何もできなかった。黙って彼女の悲しみを受け入れるだけだった。
その後すぐに下僕と暮らすようになった僕は、その後の彼女の運命を知らない、知る術もない。ただ彼女が幸せに暮らしていることを星に祈るだけ。
会いたいなんて贅沢は考えない、同じ空の下、僕と同じように幸せでいて欲しいと願う。
ドアの鍵が開く音がした。
「ただいまぁ、いい子にしてたかなぁ」
下僕がようやく帰宅したようだ、遅い!叱ってやる。
「今日からこの娘も一緒に暮らすから、仲良くしてね。友達が飼えなくなっちゃったから、うちで引き取ることにしたの」
下僕が手にしているキャリーバッグには警戒と戸惑いの顔をした三毛の美猫がお座りをしていた。
下僕、褒めてやる!
僕は「彼女を幸せにします」って流れ星に三回誓った。
(おしまい)
#シロクマ文芸部
お題「星が降る」に参加です。
困った時の「三毛猫かずらさんのイラスト」です。イラストを使わせていただき、ありがとうございます。
物語としての出来は兎も角、参加できて安堵です。何となくnoteの投稿は「書き手としての土づくり」をしているイメージで、花も咲かず実も成らずで良いのです。
#何を書いても最後は宣伝
シロクマ文芸部や毎週ショートショートnoteで耕した畑から生まれた作品集がこちらです。
お読みいただけたら嬉しいです。
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