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一人暮らしクロニクル その3

 題名にクロニクル(年代記・偏年史)とつけたのに、2010年の話からスタートしてしまいました。そこであらためて、1988年4月に時を戻します。
 国家公務員Ⅲ種(高卒程度)として横浜税関に採用された私は、東京都新宿区市ヶ谷にありました「税関研修所」の寮に入寮しました。

 税関は、日本を分割して、北は函館税関から南は沖縄地区税関まで9税関で所管していますが、初任者研修は全国で採用された職員が一箇所に集められ入寮して行われていました(1988年当時)。

 寮生活、しかも3人1部屋(7.5畳+勉強スペース)、風呂、トイレ共同、食事は朝、昼、夜とも食堂を利用可能。ということなので、正確には「一人暮らし」ではないのですが、入寮にあたり管理人から注意されたことを、お伝えしたいと思います。

「悪い女性には、引っかからないように」

 これだけは、覚えています。全国の田舎から出てきた少年たちは、格好の「かもねぎ」ということで、路上で声をかけて仲良くなった後に、態度を豹変させ、
「この落とし前をどうしてくれる」
と、トラブルになった先輩がいたとのことでした。真偽は定かでは無いですが、新生活を送る方にとっては不変のことかと思います。

 また、御給料が安いので、遊ぶお金を捻出するため「食費を削る」を実行したところ、体調を悪くしました。寮で一人で安静にしながら
「食事は三食ちゃんとしたものを食べよう」
と心に誓い、遊ぶことを我慢するようになりました。叔父から
「東京はお金があれば面白いところだよ」
と言われましたが、お金が無いと外出もままなりません。寂しい私を慰めてくれたのは、寮にあった「図書コーナー」でした。「日本文学全集」という真面目な固い本しかありませんでしたが、話によると若くして不慮の事故で亡くなった税関職員の御両親が寄贈された本とのことでした。

 基本的に「日本文学」には興味が無い私でしたが「金無し・暇有り」でしたので、「あ」から順に全巻読破に挑戦しました。今から振り返ると、note街における「スキ☆マラソン」の奔りだったかもしれません。
 今の時代はインターネットがありますので、安価に時間を潰す方法もいくつかあると思いますが、
「一人暮らしでお金が無い時は、図書館を利用するのも有りかと」
 30年以上経過した今、当時読んだ本の内容は全く覚えていませんが、私の血肉に溶け込んでいるのではないかと考えています。
 noteではあまり発揮されませんが、kindle出版している本で「文学的な香り」がしたとすれば、当時の経験が生きているのだろうと思います。

 ちなみに、サムネ画像の猫は雄ですが、去勢済みなので「悪い雌猫」に引っかかる可能性は無いと思います。私が引っ掻かれて生傷を作るくらいです。さて
#何を書いても最後は宣伝

 本稿と全く関係はありませんが、東京で一人暮らしをした後、故郷に帰る男の物語が、こちらの「元宮ワイナリー黎明奇譚」に収録している「題名のない物語」になります。
 また、最新作「スプラウト」の主人公も寮生活をする場面があり、この時代のことを懐かしみながら「3人部屋」を描きました。
 人生、何が役に立つかわからないものです。

#ひとり暮らしのエピソード

サポート、kindleのロイヤリティは、地元のNPO法人「しんぐるぺあれんつふぉーらむ福島」さんに寄付しています。 また2023年3月からは、大阪のNPO法人「ハッピーマム」さんへのサポート費用としています。  皆さまからの善意は、子どもたちの未来に託します、感謝します。