理不尽は耐えるものです
漫画家の荒川弘先生の作品が大好きです。ですが、「鋼の錬金術師」に登場する「ウインリィ」のセリフ
「勘違いしないで、理不尽を許してはいないのよ。」
これは、未だに納得できていないのです。結構「名セリフ」として扱われていますので、私の読解力が足りないのを嘆くのです。
師父のこれは、ストンと腑に落ちます。
実は、拙著「スプラウト」のテーマは、「理不尽」でした。
農家さんという生き方を考えると「理不尽」なことばかりですが、それに「堪える」ことで活路を見出すようなイメージを持っていました。
しかし、平成8年に発生した「Oー157問題」という理不尽に対して、カイワレ農家さんたちは、「堪える」だけではなく、「戦う(訴訟)」という道を選びました。
『何故、カイワレ農家さんたちは戦ったのか』
憤り・名誉・誇り・意地・営業などの言葉では、納得ができませんでした。
「勘違いしないで、理不尽を許してはいないのよ。」
も、しっくりきません。そんなある日、この言葉が降りてきました。
「悪意を許してはいけないのよ。」
そう、理不尽は耐える必要があると思うのです。人知ではどうしようもないことは、受け止め、受け入れ、未来に進むことが必要だと思います。
しかし、
「悪意を許してはいけない、だから、戦う!」
これで、『何故、カイワレ農家さんたちは戦ったのか』の方向性が見えた気がしました。そして、約25年前の「Oー157問題」に関する所管省庁の公式資料から見える悪意。
ある食材については検査を行わないまま「安全と思われる」と公表し、カイワレ農場は「14箇所検査して、菌は検出されませんでしたが、感染源として否定できない」という。
下衆の勘ぐりになりますが、「ある食材」を検査したら、菌が検出される可能性が高いので、「検査を行わず、安全と思われる」と発表したように考えてしまいます。これを悪意と言わずに、何と言うのでしょうか。
そして、「国の言うことだから」と乗っかったマスメディア。
第二次世界大戦の頃の「大本営発表」と同じ構図に見えてなりません。
これ以上、この話をすると「身の危険」を感じますので、この辺りで稿を閉じますが、「国の悪意」を最大限に具現化したものが「戦争」ではないかと考えています。
「悪意を許してはいけない。戦争を許してはいけない」
そんな想いを込めた物語が、こちらの「スプラウト」です。
主人公は国の「悪意」に戦いを挑みます。
沖縄を訪問して、平和への願いを強くします。
そして、農業を続けます。農作物を作ることで、農家として生きることで、理不尽に耐え、悪意と戦い続けます。
ちなみに、この作品を書くにあたり、荒川弘先生の「銀の匙」と「百姓貴族」を全巻読み返しました。
荒川弘先生のおかげで、この作品を生み出せましたこと、先生に感謝申し上げます。