【感想】スタートアップ、社会を変える
日本財団さんが展開している、期間限定のオンライン動画プログラム「スタートライン」について、今回は「無料公開」しているセッションの感想になります。
サブタイトルが『社会課題を解決するビジネスの始め方、支え方』というもので、鈴木雅剛さん、高塚清佳さんという支援側の方々、松田崇弥さん、水野雄介さんという社会的起業家の方々、計4人が登場されました。
まず、定番の漫画「美味しんぼ」から京極さんに登場していただきます。
「なんちゅう、なんちゅうもんを見せてくれんのやー」です。
地方行政に携わるものの最大のミッションは「地域課題の解決」にあると考えています。そして、将来を考えると「地域課題の解決」を行政だけで実践することは無理筋な話であり、いかに地域や民間の方々とセッションをしていくかという、手法が今、問われています。
そして、その「一つの解」が「社会的起業」にあると考えていますので、その考えを再認識する上で、実に刺激的で魅力的なセッションでした。官民問わず、多くの方に御覧いただきたい魅力に溢れるコンテンツでした。
さて、個人的なことを申し上げれば、そもそもスタートアップという分野が「大好物」なのです。私が「お仕事三部作」と表現している「公務員の仕事についての物語」、「フロンティアミッション」「公民館物語」「元宮ワイナリー黎明奇譚」は、実は全て「スタートアップ」の話になります(公民館物語はリ・スタートです)。さらに、新作となる「題名のない物語」は、「恋のスタートアップ」の話になりますので、大好きな分野なのです(宣伝失礼しました)。
さて、前振りが長くなりましたが、ここからセッションの内容についての感想です。咀嚼できていない部分や誤解、曲解の部分もあると思いますが、忘備録ということで、御理解ください。
1 事業のスタートのきっかけは
立場の異なる4人の方々ですが、共通していたのは「ギャップ」「違和感」に対する気づきのようです。「あれ、何かおかしくない」「これ、もっとよくなるのでは」という感覚です。もしかしたら、誰もが感じていることかも知れません。
日常生活の中にある、小さなギャップ。ほとんどの方は、それを「見ないこと」にしています。自分の生活に支障がないとすれば、そこに関わるのは「余計なこと」なのだろうと思います。しかし、セッションに参加していた皆さんは、「自分のこと」として捉え、そのギャップを埋めるために行動しているようでした。また、そこに在るのは「このギャップをそのまま次代に残すことはいけない」という「将来への責任感」のようにも感じました。
未来のために今すべきことは何なのか、自分ができることは何か。そのような想いを抱きながら、手探りでのbaby step、されど偉大な1歩を踏み出した方々のようです。
2 仲間集めについて
「自分が何ができるか」という時、今回のスピーカーの方々に共通していたのが「一人で抱えこまない」ということのようでした。自分ができないことを認めるという謙虚さかとも思います。
そんな中で、「声に出す」「旗を揚げる」、手法はいくつかありますが、自分にできないことを認め、他の方の力を借りるという「巻き込み力」を発揮しながら、歩みを進めたようです。なかなか難しいことです。私が学んだ「学校教育」では「他者の力を借りる」手法はありませんでした。しかし、課題を解決するためには、「他者の力を借りる」のは必要不可欠なことだろうと、社会での経験を踏まえて感じています。
そして、他者を巻き込む原動力となるのが「ワクワク」する「理想」なのだろうと感じました。「ビジョン」、「夢」など、色々な意味を含みますが、「このギャップを埋めることができたらより良い未来になる、一緒に未来を創ろう」という、志なのかも知れません。
とは言え、「夢や理想では飯を食えない」ということもありますので、そのバランスには苦労されたことと推察しますが、大事なことは「続けること」、自分たちの理想に向けて、行動し続けることが、仲間を集めるための、仲間の信頼を得るための大きな力になったように感じました。
3 より早く、より大きく
イメージとしては、「伝い歩き」からさらに成長して「自分で走る」ような環境づくりでしょうか。いつまでも伝い歩きでは世界が広がらない。勇気を出して、手を放すことができるか、より広い世界に歩きだすための行動を起せるか。というステージが、スタートアップを成功させるために必要な通過儀礼となるのかも知れません。社会を変えるために、自分達が変われるかという局面になるのでしょうか。
ここでは「経営と事業」という言葉が印象的でした。事業を展開していくための「仕組みづくり」がある程度うまくいく、言わば「単年度黒字」というビジネスモデル、一定の収益が見込めるようになった時、「経営」とのバランスを維持できるかが問われるようです。
自分の領土に固執するか、さらに拡大を図るか。難しい選択になると思います。せっかくの利益を、成功体験を壊しかねないのですから。しかし、そこで、考えるべきところは「原点」なのかも知れません。「目的」なのかも知れません。
「何のために、その事業を実施しているのか。利益を出すためか、儲けるためか」、そう問われた時に、正しい答えを出す方々に、応援する方が集まり、大きな成功につながるのでしょう。
ゴールは何処にあるのか、同じビジョンを見ることができるのか。これはスタートアップに限らず、企業が持続的な成長をしていくために、重要な視点なのかも知れません。
4 スタートラインとは
事務局からの、この質問に対し「意味が無いものに価値を」「次世代により良い社会を」「信じること(自分、仲間、未来)」「行動すること」ということをお話されていました。
価値観が大きく変化する時代だからこそ、勇気を出して行動することが必要なのでしょう。よりよい未来を創るためのスタートラインは、私たちの目の前に存在しています。後は行動できるかどうかです。
最後に、また宣伝になりますが「元宮ワイナリー 黎明奇譚」という小説の主人公は、困難を前にこう呟きます。
「動いてみますか」