【駄文】黒田の三代記
拙著「黒田製作所物語」は、創業者(初代社長)が主人公の位置づけで、妻(二代目社長)と、娘(三代目社長)がそれぞれ奮闘する姿を中心に描いています。そういう意味では社長三代記という見方ができます。しかし、正直に言えば、三代記を書こうとしていた訳ではなく、最初のイメージでは「日本一きれいなステンレス専用工場」を看板に掲げた三代目社長に興味を惹かれ、そのお話を聞きたいと考えたのです。
しかし、企業について情報収集していく中で、
「三代目社長の精神の源流は、初代社長にあるのでは」
ということを感じ、そこを掘り起こしたくなり、軌道修正して
「創業時の話と三代目の話を描きたい」になり、
「創業者の話が凄過ぎる、創業者に焦点を絞ろう」
という形になり、二代目、三代目の描写が少なくなりました。
そして、実は「緑川凛さん」のあとがきで、初めて気づかされたのですが、「二代目社長、三代目社長」、そして「冨塚」という若手職人が女性ということで「女性の三世代」について描いた三代記という側面も生まれていました。
時代背景もあり、二代目社長は「内助の功」のような存在として、三代目社長は「自立した女性」として、冨塚は男女にある「壁」に一度は負けそうになりながら、三代目社長のエールを受け、男女の垣根を超える「女性活躍推進」を体現するような描かれ方をしています。
正直に申し上げます。この展開については、全く意図していませんんでしたので、緑川さんのあとがきが無ければ、気付かなかった可能性もあります。緑川さんに、あらためて御礼を申し上げます。
ちなみに、緑川さんについては、全く別な企画から生まれた、「緑川さんの言葉」と「かこさん」とのコラボイラストが好き過ぎて、よく使わせていただいている方です。
緑川さんは、note街の人気クリエイターさんですが、「オーラ診断士」、「他己分析アドバイザー」として活躍されていますので、観る目、読み解く力が鍛えられているのでしょうね。
さて、意図せず「女性活躍三代記」を描いた背景ですが、「だってそれが事実だから」ということになります。意識して登場人物を女性にしたのでは無いのです。作中で描かれる「全日本ボイラー溶接士コンクール」で、若き女性職人が優勝したのは、モデル企業の実話を基にしています。ということで、「このエピソードは残したい」と考え、演出を加えて本編に入れ込んだところです。
ただ、中小企業が持つ大きな役割の一つとして
「地元の雇用に貢献している」
という話を書きたかったことが背景にはありました。別な中小企業経営者のお話として
『我社の採用に応募してくる子は、学校では落ちこぼれです。だけど、縁があり入社した以上、大事に育てたい、成長して欲しいと思う訳です』
という想いを遺したいという気持ちがありました。画一的な試験では採用に至らない生徒を受け入れ、育てる役割も担っていただいているのが、地元の企業さんだと考えています。普通の採用試験では採用に至らなかった冨塚でしたが、地域に密着している中小企業だから救えたということになります。
「鉄鋼業・溶接道」という、女性にとっては「荒野」のような世界に飛び込んで生きる姿を描いた「黒田製作所物語」は、「わたしらしいはたらき方」を貫ぬいた「女性活躍三代記」であり、フィクションではありますが、そこには「生きる力」を探訪する経営者や従業員の、真実の姿も描かれていると考えています。
毎回のように思いますが「自分で書いた気がしない」、皆さんに書かされた物語のような印象です。
次のリンクからamazonのサイトで黒田製作所物語を御購入いただけます。紙書籍については「試し読み」で、あとがきをお読みいただけますので、あとがきだけでも読んでいただけたら嬉しいです。
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