【創作】かざぐるま #シロクマ文芸部
こちらの企画に参加です。
(以下、本文です)
風車にふー-っと息を吹きかけて羽根を回転させてから娘に渡した。色ととりどりの羽根が混じり合い不思議な色合いを魅せている。娘は目を輝かして羽根を見つめていた。
夏祭りの夜、浴衣を着た君の笑顔はいつもよりも可愛らしい。
次第に回転がゆっくりとなり、カラカラと乾いた音を出した後に静かに動きを止めた。
「パパ、もう一回、もう一回ふぅして」
不満そうな、楽しそうな顔を見ながら風車を受け取る。その表情に自分がにやけてしまうのがわかる。
月に1回、会えるか会えないかの関係でも、小一の時から離れて暮らすようになり2年が過ぎても、君に「パパ」と呼んで貰えるのが嬉しい。
僕はもう一度、息を吹きかけた。
離れてくらしていても、生きている限り父は辞めない。
君がもう少し成長したら、僕を否定するかもしれないし新しい父と暮らすようになるかもしれない。それを否定はしないけど僕は父を辞めない。
回る回る羽根は回る。年月のように輪廻のように。
君の人生は、僕の人生は、これからどんな色を魅せるのだろう。
そして、いつか止まる時が来るだろう。
最後には、綺麗だったと思い出せることを祈りながら、風車を渡した。
(本文ここまで)
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あと、あの、無料ではないのですが「100円」のこの本は結構お買い得な気がします。今回のような「切ない話」から「馬鹿馬鹿しい話」まで、不思議な楽園がここにあります。
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