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【創作SS】学校のカイダン2 ステップ&スキップ

 変な先輩。
 梅雨に入る頃には、そう思ったの。絵里が一目惚れしたという武志先輩と、いつも一緒にいる佐藤先輩。絵里が武志先輩のクラスを見に行くと一緒に視界に入ってしまう。そしたら、佐藤先輩も私たちに気づいて、視線を向けるのに、知らんぷりをするわけよ、気づいているなら、頭をさげるとか、笑顔を向けるとかのアクションをすべきだと思うのに、知らんぷりですよ。変と言うか冷たいと言うか。

 武志先輩は格好いいけど、佐藤先輩は一言で言えば「ジャガイモ」みたいな感じ、格好悪いと言うほどじゃないけど、何か冴えない。性格はちょっと陰キャ風。武志先輩とか、いつも一緒にいる友達とは楽しそうにしているけど、他の人には愛想が悪いし、絵里が武志先輩を想って見にきていることに気づいているなら、何かアクションをおこして欲しいんだけど、何もしてくれないのは、隠な性格なんだと思う。
 まぁ、あんまりおせっかいなのも困るけど。

「梨沙、武志先輩の笑顔、見た。すごく爽やかだった。あー-、もっと近くで見たい」
「そんなこと言うなら、今度、話しかけなよ」
「まだ、見てるだけで良いかなぁ」
 絵里の背中を押してあげたい気がするけど、余計なことかなぁ。

 移動教室から、絵里と二人で教室に戻ろうとしてたら、ちょうど武志先輩たちは階段を降りてくるところで、私たちはすれ違った。
 今回も会釈も会話も無く、ただすれ違うだけ。
 ただ、絵里は小さな幸運に、ちょっと「ポーッ」となった。名残を惜しむように、武志先輩の方を振り向くと
「えっ!」
と思う間もなく絵里が階段を踏み外し、体が下に傾いていった。
 念のため申し上げますけど、私は背中を押したりしていない。

 佐藤先輩が階段を駆け上がり、絵里の体を受け止めてくれた。
 佐藤先輩やるじゃない、グッジョブ!
と、思う間もなく絵里の声が階段に響いたの。 

「ちがー-う‼」
佐藤先輩は絵里に突き飛ばされ、変なステップで踊り場まで降りると、力尽きて倒れた。
「絵里、何やってんのよ、助けてくれた先輩を突き飛ばすなんて」
倒れたままの佐藤先輩が右手を上げて
「大丈夫、問題ない」
と声をかけてきた。

 突き飛ばした絵里は、反動で武志先輩にしがみついて
「武志先輩、好きです。付き合ってください」
突然、告白した。

 えー-どういうシチュエーションよ今。
 絵里、今まで「見ているだけでいい」とか言ってて、一回も話をしたことがないのに、佐藤先輩を「突き飛ばした」直後に、「付き合ってください」っておかしくない。いろいろな手順を飛ばしてない?
 武志先輩の目は点になっていた。うん、私の人生で「目が点」なんて言葉を実感したのは、初めてだと思う。

「先に行っている」
 固まっている武志先輩に声をかけ佐藤先輩は、独りで歩きだした。
 え、絵里のことを怒らないの、なんで何も言わないで立ち去るの。隠にも程があるわ。

 けど、佐藤先輩の後ろ姿、楽しそうにスキップしているように見えたのは気のせいじゃないと思う。
 うん、隠かはともかく、やっぱり変な先輩ね。

(本文ここまで)

 おわかりいただいた方も多いと思います。こちらの話の「リライト」と申しますか、B面という感じ「梨沙目線」で書いてみました。

 こういう話の構成は、拙著「恋する旅人」でも使っています。

 ちなみに、二人の女の子の名前は、「ジョジョの奇妙な冒険」のエリナさんとリサリサさんへのオマージュ。佐藤先輩は「にっこりみかんさん」の

 こちらに登場する「佐藤先輩」へオマージュです。この作品に登場する「みゆうさん」も、とても魅力的です。
 残念なことに、私は「にっこりみかんさん」のように「魅力的なキャラ」として描くことができず、力不足を感じます。
 けど、楽しく書くことができました。にっこりみかんさん、ありがとうございます。
 



 



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福島太郎
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