ウルトラセブンへの想い3
以前、ウェブに掲載していた2004年頃の古い原稿の修正版です。作品を振り返りながら、私なりの感想を残します。根拠がない与太話と割り切ってお楽しみいただける方にお読みいただければです。
(以下:本文)
作品名 「ウルトラ警備隊西へ」
この作品と「ノンマルトの使者」、そして最終回「史上最大の侵略」が、金城さんが直接的に想いを発露した作品ではないかと考えています。
この作品は前後編となっていますが、まとめて考えます。
場面1 防衛センターへのキングジョーの侵攻
六甲山の防衛センターに、キングジョーが侵攻する場面では、アメリカと日本の国旗に向かっていきます。
そして、防衛センター到達寸前でセブンが現われ、国家の象徴である国旗を守ります。その後、セブンがキングジョーに馬乗りされ、蹂躙される時に背にしているのは日本の国旗です。
日本を守るためにアメリカが血を流しているようです。それに対し、ウルトラ警備隊(日本)は、ただ傍観しているだけとなっています。そして、次のようなナレーションが入り、後半に続きます。
ナレ 「ウルトラセブン危うし、ウルトラ警備隊の前に突然姿を現したスーパーロボットの正体は何か、セブンは果たして勝てるのだろうか。立てウルトラセブン、頑張れわれらのヒーロー」
防衛センターは「地球防衛軍の国際会議場であると同時に地下には秘密研究所がある」と設定されています。「国際会議場」とすることで、世界各国の旗がはためいており「国際連合」を象徴しているようです。その中心にアメリカと日本の旗を置いています。(最初の場面では違うのに、何故か途中で入れ替わっています)
キングジョーは「国際連合」や「アメリカと日本」に対し、侵攻し、怒りを向けています。
そして、ここがとても大事なのですが、ナレーションは「スーパーロボットの正体は何か」という謎かけをしています。これは、あまり見られない展開です。通常の回で全ての敵は「理由なき侵略者」だからです。
「謎かけ」のヒントは「キングジョー」という名前にあります。これは通説として知られていますが、「キング」は「金」、「ジョー」は「城」であり、「金城」がその正体となります。
金城哲夫さんは、この作品とキングジョーを通じて、沖縄を占領下に置きつづける、国際社会、アメリカ、そして日本に対し、大きな怒りを表現しているように感じます。
そして、批判を覚悟で、沖縄の真実を知って欲しいと、謎かけをしているように見えるのです。
また、四つのパーツが合体して完成するキングジョーは、「沖縄人」、「琉球人」、「日本人」、そして「アメリカの占領下にいる人間」として背反する想いを抱く金城さんの姿を表しているようでもあります。
場面2 ペダン星人とダンの交渉
ダン 「流石はペダン星人だ。我々をまんまと罠に陥れるとは」
ペダン 「ウルトラ戦士、どう、私達の味方にならない。地球はいずれ私達のものよ。そのほうが身のためだわ」
ダン 「僕は地球の平和を守るために働くんだ」
ペダン 「地球が平和なら、他の星はどうなってもいいというの」・・・①
ダン 「地球人がペダン星を侵略するつもりはないんだ。あのロケットは単なる観測ロケットだったんだ」
ペダン 「観測!?いかにも立派な名目だわ。だけど、それは何のためにやっているの。いずれは自分たちが利用するためにやっていること。その手には乗らないわ」・・・②
ダン 「そうじゃない。地球防衛軍の本当の目的は、宇宙全体の平和なのだ」
ペダン 「そう考えているのは、ウルトラセブン、あなただけよ。地球人はずるくて、欲張りで、とんだくわせものだわ。その証拠に防衛軍の秘密基地では、ペダン星人を倒すための武器を開発中だわ」・・・③
ダン 「それは、お前たちが地球の平和を乱すからだ」・・・④
ペダン 「それは、こっちの言うことよ。他人のウチを覗いたり、石を投げたりするのは、ルールに反することだわ」・・・⑤
ダン 「なるほど、地球人も確かに悪かった。こうしよう。僕は今度の事件を平和に解決したい。ウルトラ警備隊はペダン星人と戦うための武器の研究を中止する。その変わり、ペダン星人も地球から退却して欲しい」・・・⑥
ペダン 「宇宙人同士の約束ね」
ダン 「そうだ」
ペダン 「わかったわ。あなたを信じることにする。私達の誠意のシルシとして、あたし、つまりドロシー・アンダーソンを返すわ」
説明の必要がないほど、国際会議の席上にいるようなリアルな会話です。当事者のはずなのに、後進国である「地球(日本)」を無視し、宇宙人(先進国)同士で、どう事態を収拾するかが話し合われています。
①、②、③では、占領下におかれたままの「沖縄」そして、それ以前に「日本(薩摩)」に侵略された「琉球国」の怒りと哀しみが込められています。
④では、侵略者、帝国主義の傲慢さが描かれています。侵略者は、現代でも同じ言葉を使います。(補足:元の文章は2004年頃書かれています)
「イラクが世界の平和を乱し、大量破壊兵器を製造しているから、先制攻撃するのだ」
と語る者がいました。
そして、それを支持する者もいました。悲しく、苦しいこです。人間は、ウルトラセブンの放送時から、まるで成長していないのでしょうか。
金城さんは、侵略者の言葉の欺瞞、空虚さを⑤で反論し、最後には⑥でダン(アメリカ)に「地球人(日本人)も確かに悪かった」と謝罪させています。
現実社会では、ダン(アメリカ)は謝罪どころか、さらに鞭を振り上げ、コブシを叩きつけることを繰り返しているように感じられてなりません。
場面3 防衛センター作戦本部
ダン 「みんな、何を疑っているんだ!まずは相手を信じることです。そうでなければ、人間は永遠に平和を掴むことなどできっこないんだ」
場面2では、冷めた視点で描かれていたダン真の願いが、ここに込められています。金城さんは「沖縄」「琉球」「日本」「アメリカ」全てを通じ、誰もが平和に暮らせる世界の実現を願っていると感じます。
この話以降「ダン=金城さん」を思わせる場面が多くなり、最終的には、「セブン」「ダン」「金城さん」は地球(日本)を守るために働きながら、地球人(日本人)ではない存在として、平和を願いながら戦わなければならないこと、そして、日本、沖縄の自立などの様々な苦悩を抱きながら、戦いに殉じていくようになります。
場面4 キングジョーの最後
セブンはキングジョーを倒すことができませんでした。私の記憶違いでなければ、セブンが倒せなかった唯一の敵がキングジョーです。そこには、「キングジョーは、アメリカには倒させたくない」
という金城さんの心が表現されているようです。しかし、番組的にはキングジョーを倒さなくてはなりませんので、ウルトラ警備隊(日本人)により、キングジョーは倒されます。
キングジョーはあお向けに倒れ、そこからUFOが飛び立ちます。
そのUFOは、キングジョーの魂のようにも見えます。それに対し「セブン」(アメリカ)はワイドショットを放ち、UFOはこなごなに爆発してしまいます。
金城さんの魂がこなごなになってしまったような悲しい場面です。
(本文ここまで)
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。このシリーズは一旦、ここで完結となります。
「ノンマルトの使者」については、多くの方々が考察をしていますので、興味がある方は、そちらをご覧ください。
そして最終回「史上最大の侵略」について、私なりの感想はあるのですが、「言わぬが花」とも感じているところです。
今回のシリーズについては
「金城哲夫さんや関係者の方々に、失礼なことをしているのではないか」
という恥ずかしく、悩ましい気持ちもあります。
ただ、このような拙い原稿でも、一人だけでも「戦争と平和」、「沖縄・日本・米国」について考えてくださる方がいるかもしれない、と考えて投稿しています。御理解いただければ嬉しいです。
明日、6月23日は「沖縄慰霊の日」です。
78年前の悲劇を消すことはできません。けれど、先人たちのおかげで今の平和な時代があります。
#かこに感謝し今を受け入れ未来を夢見て
#地には平和を人には愛を