太郎の得意技はスタミナだな
この言葉は決して誉め言葉ではありません。もう30年くらい前になりますが、横浜市の市民体育祭に横浜税関柔道部として参加した時に、反省会という宴会で、柔道部の部長からいただいた言葉になります。
重ねて申し上げますが、誉め言葉ではありません。どちらかと言えば、「技も無いのに勝っただと、何だそりゃ」と、揶揄するような意味合いが強い言葉でした。しかし、太郎の心の柱としている言葉の一つです。
社会人とは言え、実業団選手のように激しい稽古をしているわけではなく、基本的には大会前に汗を流す程度の柔道倶楽部ですので、高校時代に比較すれば、年々、弱くなるような柔道部です。現役の高校生、大学生などと試合をすれば、かなりの確率で苦戦します。
その日の反省会では、それぞれの部員が戦績発表をして、部長が講評を述べる流れでした。太郎以外は1回戦か2回戦での敗退でした。太郎だけ僅差ではありましたが、2回戦を勝ち抜き、3回戦敗退でした。いずれにしても大した戦績ではないのですが、当時、太郎は倶楽部最弱の選手でした。誰もが1回戦敗退を予想する中での勝ち上がりでした。
「どんな技で勝った?」
「2回とも、僅差の旗判定です」
という、前振りがあり、部長からの
「太郎の得意技はスタミナだな」
という言葉に繋がりました。ほとんどの選手は、「得意技」、「必勝パターン」を持ち、ある意味、それが当たれば「勝ち」、通じない場合は「負け」という感じでしたが、太郎の場合は、社会人になってから柔道を始めたこともあり、「得意技」も「必勝パターン」もなく、ただ、ただ、勝利を目指して、攻め、守り、体を動かしました。
勝ったから何があるわけでもない、優勝など目指せるレベルでもない、愚直に愚直に体を動かすだけ。背負いも内股も、大外刈りも、何も通じなくても、一つの技で駄目なら次の技、次でも駄目なら次の次と、恥ずかしくなるくらい、みっともないくらい無駄な技を繰り出しながら戦い続け、勝利を得たことになります。
30年を経た今も、スタイルは変わりません。
仕事も趣味も、何をさせても、才能もセンスも実力もない状態です。みっともないくらいに足掻くことしかできません。光を諦めきれず、愚直に進むことしかできません。
進んだ先に何があるのか、何を得ることができるのかもわかりません。徒労に終わることがほとんどのような気もします。
周囲の賢い方々のように、無駄な体力を使わない方が得ではないかと思うことも度々あります。
しかし「太郎の得意技はスタミナだな」と言い、勝利を祝してくださった方がいたことへの感謝が未だ消えません。そして、税関を退職したものの、40歳で上京した際に、この部長との御縁により、東京の社会人柔道倶楽部に参加させていただくことができ、貴重な経験をさせていただきました。
このようなこともあり、「太郎の得意技はスタミナ」という言葉、当時の部長は冗談半分としてお話し、他の部員も笑い話としていましたが、太郎にとっては「宝物」のような言葉となっています。
結果も成果も何もなくても、修行を続けることができるのは、この宝物のおかげかもしれません。
肉体的なスタミナは厳しい状況ですが、精神のスタミナは枯らすことなく、修行に励みますので、皆様、引き続き仲良くしてくださるようお願いします。
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