【ショート・ショート】ナンシーの加古川縦断スーパークイズ〜!の巻
幼馴染で加古川市内のケーブルテレビ局に勤務するミッキー・ヨネダからのたっての願いでクイズ番組に出演することになったナンシー。ならば、いつものハゼの親玉、ゴン・しのはら、マガモのヘイゾーを伴って出演を承諾。内心はハラハラドキドキだが、そこは幼馴染のためにと明るく返事したのだった。
「ボクはクイズ得意やからな」と相変わらずのんきなゴンはいうが、「オレ、マガモ仲間に変なところ見せたら舐められるやん」などとヘイゾーはつぶやいている。やはり心配性は相変わらずである。
「大丈夫、加古川にちなんだクイズだし、何とかなるんじゃ・・・」
ナンシーは自分に言い聞かせつつ平静を装って、3名を集めて加古川に関する知識をスマホで調べるのであった。
さて、当日。
優勝商品は加古川特産の「神戸牛食べ放題」と「焼きあなご」の詰合せと聞いてから、がぜんやる気になったヘイゾーはこっそりカモ仲間と特訓に励んでいたので顔つきが先日とは明らかに違っている。ゴンもハゼたちからの応援を一身に受けて気楽ながらも気合を入れる。
そんなこととは知らずナンシーは全員で頑張ろうと声をかけるのであった。「いくよ〜!みんな〜!」
ミッキー・ヨネダは初の司会とあってこちらも声が大きい。
第1問!
「加古川出身のタレントさんといえば・・・。
「陣内●則!」ヘイゾーは叫んだ!
ブ、ブ~〜
「なんでや〜!!!」みるみるゴンの眉間にシワが。
ヘイゾーは笑う。「最後まで問題聞かんやつや、こいつ」
ナンシーはホッとしつつ出題を待つ。
「・・・陣内●則さんですが、月九ドラマで主演されている女優さんと・・・」
ピコン!
「ナンシーさん!どうぞ!」
「上野●里さん!」
ピンポン、ピンポーン!
「そんなんオレでもわかるわ!」ぼそっとヘイゾー「なあ、ゴン」
「押して正解するのがクイズやん」
ナンシーが絡んでくるヘイゾーをにらんでいると、
第2問!
「黒田官兵衛の奥方『てる』の出身は今で言う何町?」
ゴンは歴史に弱く答える気がなさそうだ。それを見たヘイゾーはホッとしていたがひたいに汗が少し。ナンシーだけが恐る恐るボタンを押す。
「志方町(しかたちょう)・・・」
ピンポン、ピンポーン!
ヘイゾーは「ええ〜、オレわかってたわ、これもぉ」
「“しかた”ないなあ」とヘイゾーはゴンに答えられなかったことだけが嬉しかったようでつまらないダジャレ。
第3問!
「加古川市が誇る偉大な歌手菅原洋●・・」
ヘイゾーが押しそうな手を止めた。学習している。だが今回は裏目に。
「菅原洋●さんの実家がある商店街の名前は?」
「寺家町(じけまち)商店街!」ナンシーが押す一瞬のすきを突いたゴンが正解し高笑い。ちらっとヘイゾーにどや顔。
「油断してた・・・」ナンシーはちょっとゴンを見直した表情。
ナンシー正解1 ゴン正解1 ヘイゾーは0。もう眉間にシワはなく目にうっすら光るものが・・・。
ミッキーは続ける。
「勝負は白熱しています!ではここで視聴者の皆様に番組からのお知らせと、出演のお三方には気合をいれなおしていただきましょう!このクイズは3週連続放送予定で来週は加古川駅前、再来週は平荘湖畔から中継です!」
「さあ、みなさんいいですかあああッ!」
「駅前に行きたいかあーーーーーーーッ?」
「オオオーーーーーッ!」
3名はガッツポーズで返答。どうやら勝負心に火がつき、出演にもなれたようだ。
「神戸牛食べ放題に挑戦したいかあーーーーーーーッ?」
「オオオーーーーーッ!」
「平荘湖に行きたいかあーーーーーーーッ?」
「・・・・・・・」
無言の3名に、ただただ冷や汗を拭い、
(急に決まった企画でもやはりちゃんとした人選をすべきだった・・・)
と、ミッキー・ヨネダは今日の夜は絶対、神戸牛で冷たいビールを浴びるほどやろうと決意した。
その時、ヘイゾーは、自分の「0」と表示されたボードを見つめたまま、
「この企画パクリやんな、あの有名なTV局の」とつぶやいて天を見上げるのだった・・・。