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「ヒップホップ以降の吟遊詩人」小林大吾の音楽の魅力を伝えたい

先日、僕の敬愛する吟遊詩人・小林大吾のライブを観に行ってきました。

恵比寿LIQUDROOMの上のカフェが会場。カフェのほう初めて行った

小林大吾の魅力を言葉で伝えるのは難しい。ビートに乗せて、歌うように詩を読むスタイル。音楽的にはラップではなくスポークンワーズと呼ばれるジャンルで、“ヒップホップ以降の吟遊詩人”というのが氏のキャッチフレーズになっています。

美しいトラック、めっちゃいい声、そして絵本的な異国情緒とシニカルなユーモアを感じる詩が魅力です。僕は2010年くらいにライムスター宇多丸さんのラジオで披露した生ライブを聴いて知り、それ以来ずっと心のアーティストの1人として聴き続けています。

いや、こんなん言っても伝わらん。百聞は一聴に如かず、なので僕の好きな曲などをいくつか貼ります。

ジャグリング

悩み多きウェルテルの末裔諸君
日々とは気分にまではたらく重力とのたたかいだ!

この一節で小林大吾のファンになったと言ってもいい。自分の中で些細な悩み事をぐるぐるジャグリングの玉みたいに回し続けてわしゃサーカスかーい!という詩。私もまた生きるのが上手くならずに思考のジャグリングばっかり上手くなった人間の1人です。マジで気分にまで働く重力と一生戦い続けるのが生活だし人生だよなと思う。でもそんなに絶望してるわけじゃないよ、という絶妙な心情に共感する詩。

話咲く種をまく男

月曜日ならこないだもきたぞ、一体何の用だ?

ラップではなく「ビートに言葉をはめていく朗読」が小林大吾氏の魅力なのですが、この曲は後半がっつりラップしている。前半の語りもパンチラインが多く、後半に向けて畳みかけていくので音楽的カタルシスがあります。小林大吾は詩を聞いてこそというアーティストですが、歌詞とかあんま興味ないんすよねーという人にも聴いてほしい1曲です。

コード四〇四

左から順に顔がいい運がいい都合がいいというきわめて充実したラインナップのうち、本物と呼ばれて然るべきなのは言うまでもなくひとり。友人たちは満場一致で三人目を選んだ。

動画は当時限定盤でしか聴けなかった旧アレンジで、最近正式リリースされました。そのへんの経緯歌詞も公開されています。僕の紹介力の限界を感じたので、本人による解説などに触れていただきたいという思い。

自分も文章を書くときは「リズム」のことばっかり意識して書いているんですが、小林大吾氏の詩というのはまさにリズムとの親和性を重視して書かれているのが好きなのもかもしれないなあと思いました。


小林大吾氏はグラフィックデザイナーとしても活動しており(そっちが本業?)、元々楽曲のリリースとかライブとかはあんまり多くありませんでした。しかし、近年は盟友のタケウチカズタケさんと「アグロー案内」というプロジェクトで継続的に新作を出しており、過去作も含めてサブスクでも聴けるようになりました。いい時代になった。

で、今年も恵比寿でライブがありました。以前小林大吾氏のライブを見たのはもう10年以上も前のことでした。あれから僕も色々あって病気で死にかけたりもして、生きてるうちに小林大吾のことはちゃんと書き残しておこう、と思ったのでライブのチケットを取り、現場に行き、今これを書いています。重いよ。

気分にまで働く重力と戦って日々酒を飲んでいたらこうなりました

自分はあんまりライブとか行かないタイプで、ましてや1人で行くとか人生で初めてでした。これは膵ありの皆さまには伝わらないと思いますが、「もう膵臓もないし逆にライブくらい1人で行くか……」というマインドになり、そこでチケットが取れてしまった。偉大なる小林大吾のライブとか本当は全て即完するべきだと思っているので、人類の皆さんはもっと頑張ってください。

会場限定のCDが欲しかったので物販に並んだら、演者のお2人が売り子をやっており、しかも1人1人にサイン書いたり写真撮ったりなどのめちゃ丁寧な対応をしていました。わざわざ小林大吾さんのほうから「お名前聞いていいですか?」と言ってくれたのでありがたくサインもいただきました。

「たろちんさん……聞いたことあるような……結構長い方ですよね……?」みたいなことを言っていました。「いや、僕あんまり表に出てこないファンなので……」と言いましたが、断続的にこういうブログとかツイートとかで布教してるのが目に入っていたのかもしれません。生きているうちに「ファンです」と言いに行けてよかったです。

ライブは小林大吾氏が自分で歌詞を飛ばしていることにも気付かないレベルでワンコーラス丸々歌詞を飛ばしてやり直したり、曲の合間にMCではなくオリジナルCMを流したり、最近ハマっているせんべいの話をしたりとライブイベントらしい展開でよかったです。好きな曲いっぱい聴けたのも嬉しかったですが、酒飲まなくなってからせんべいにハマってるのでおいしいせんべい情報が聞けたのがめちゃくちゃありがたかった。

栃木の会社・ひざつき製菓の「雷光」というせんべいらしい。必ず探し出して買う

いい音楽、いい言葉をお求めのみなさんは、ぜひこの機会に小林大吾を聴いてみてもらえると嬉しいです。ジャンル的にはマニアックな音楽に属するとは思うんですが、表現としてたくさんの人に刺さる普遍性も宿していると思っています。僕は随分と救われました。

以下、個人的な余談なのでメンバーシップ向けに。元々ライブという空間が苦手な自分が初めて1人でライブ行ってみて思ったことなど。

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