ハゼ

半年ほどおれは何も書いていなかった

潮時は今かもしれない

毎日そう思う

それは土の下で窒息死を図るようなものだ

魂が死にかけていては

藻掻くのは容易なことじゃない

手に力が入らない

飯が不味い

誰にも相手にされていない

それはまあ、いいとしよう

フィルムに写った他人を見て

情熱を燃やすより

便器に溜まった水に映る自分を見て

死にたくなる頻度の方が高くなるのは

どういうわけだ?


彼女はおれがおれ自身の話をすると

作家みたいと言った

あまりおれの話はウケが良くなかった

彼女がおれの本を読みたいと申し出たが

きっぱり断った

そうすると

腹も減らず

どういうわけか

すべてをぶっ潰したくなるほどの怒りもなくなる

歯抜けの犬だ

人殺しの目から

怯えた魂が伝わって来る

そんな状態でも凧糸だけは見える

おれの背に

彼らの背に


はなっから期待もせず

コントロールするチビどもをよそ目に

最後くらいは気ままに

酒をボカンと一発

あとは二日酔いの焼け野原





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