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未来の建設業を考える:「改革すべき大学教育」

建築学科の就職先

 12月1日から就職シーズンが解禁となる。大学3年生が就職を目指して活動が始まる。オリンピックもあり、公共事業の増加もあり、多くの学生が建設業界に押し寄せる期待も高まる。
 ここで改めて、昨今の建築学科の学部生の就職先を調べてみると、驚くべきことがわかった。建築系学部生の就職先を見ると、東大で64%が大学院、ゼネコンが5%(わずか3名)、設計事務所が1%、京大で81%が大学院、ゼネコンが51%、設計事務所が1%、京大大学院でもゼネコンが12%、設計事務所が9%、圧倒的に多いのは銀行IT商社の24%である。トップランクの大学における学部卒業生の数人しか、ゼネコンや設計事務所に就職していない。これを大学院生に広げても、ゼネコンや設計事務所の比率は小さい。銀行やIT業界が多く、必ずしも建築とまったく関係ない職種に就いているかどうかはわからないが、少なくとも建築学科卒業後、多くの学生がゼネコンや設計事務所へ就職していことではないのは事実。

建築教育と就職先のミスマッチ

 専門性の高い工学教育において、せっかくの建築学科の貴重な教育プログラムが学生の就職先との関係だけで言えば、有効に働いていないような気がする。もちろん、建築教育を通じて、全体の構成を俯瞰する力や物事のディテールを見極める目、そして何よりもひとつのモノを作り上げることによるプロジェクトマネジメント力の強化など、建築学における教育を通じて得られる知識やモノの見方は、就職先に関係なく、人間力や人間としての幅を大きくすることに、役立っているはずである。
 しかし、どちらかと言えば、設計デザインを中心とした建築学科の教育のありようが、社会ニーズとミスマッチを起こしつつあるのではないか、との懸念も大きい。
 全国平均で見れば、建築学科学部卒業生の就職先を調べた建築学会の報告(2009年)では、大学院16%、ゼネコン27%、設計事務所6%、住宅メーカー12%となっており、約半分は直接建築関係の会社に就職しており、この比率で言うのであれば、施工現場管理と言ったことに、もっと教育の比重をおくべきではないかとも思う。

求めれる発注者教育・プロマネ教育

 また、ゼネコンや設計事務所以外の多様な分野に就職する昨今の建築学科卒業生も、メーカーや金融機関の建築プロジェクトの発注者であったり、建設のプロジェクトファイナンスに関わったりと、建築に関係する仕事に従事することが多い。意外に狭い世界で、同期が発注者であったり、設計者、施工者であったりする経験も多い。
 そういった意味では、設計を中心としながらも、デザイン教育だけでなく、発注者教育プロジェクトマネジメント教育と言った、いまどきの就職ニーズに合致した教育プログラムへ再考することも必要ではなかろうか。
 建設業ハンドブック(2013)によれば、新規学卒者の全産業に対する建設業の割合は、1997年の10.4%をピークに、2012年は8.0%まで減り続けている。建設業の魅力を高めるためには、教育と就業ニーズが合致するような大学の教育改革も必要ではないか。

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