未来の建設業を考える:「真のICT国家の実現へ向けて」
IT先進国「エストニア」
皆さんは、エストニアという国をご存じだろうか?エストニアはいわゆるバルト三国で、ロシアに近接し、経済的にはフィンランドなど北欧圏と深い結びつきがある国。1991年にロシアから独立した。人口150万人と小国ではあるが、Skype(スカイプ)と呼ばれる通信ソフトを生み出すなど、設立当初からICTで国を変革しようと努力しており、現在では、世界でも先進的なICT戦略を構築している国として有名である。
世界的に有名なのは、2002年に導入されたクレジットカードサイズのICカード。15歳以上の全国民が所有している。実際、住所等の把握が困難な人たちもいるため、国民の80%程度が所有している、と言われてる。このICカードは、IDとしてパスポート代わりにもなり、ICチップの中には、個人データ、認証情報、デジタル署名情報などが含まれ、すべての行政サービスがオンラインで利用できる。
会社設立もオンラインで、わずか20分で認可される。行政サービス以外にも、公共交通機関のオンラインチケット、教育システム、企業顧客システム、駐車場の支払いができる。
医師からの処方箋も薬局でIDカードをかざすだけで、デジタルカルテが一人一人に作成されているなど、ICTの活用範囲は広がっている。銀行取引の99%はインターネットで実施されているとのこと。税務申告も、95%がオンラインで実施され、個人の申告ではなく、国が個人へ確定申告内容を通知し、それに同意するか修正するかで、わずか5分以内に確定申告を済ませているとのこと。さらには、国政選挙も、自宅からインターネット経由で投票可能な「電子投票」システムが活用されている。
ちなみに、エストニア国の「閣議」は、スクリーンとパソコンのみで、完全ペーパーレスの会議となっているそうだ。
また、ICカード以外にも、国民全員に電子メールアドレスXXX(名).YYY(姓)@eesti.eeが配布され、国や自治体からの通知は郵便ではなく、すべてメールで通知される。
ここまで言うと、個人情報の扱いやサイバーテロは大丈夫かとの疑問が生まれる。
これに対しては、個人情報はアクセス記録が国民に開放され、国民一人一人のデータが確認できる市民ポータルサイトにおいて、いつでも自分の情報を知ることができる。また、サイバーテロから実際攻撃を受けた経験を踏まえ、NATOのサイバーセンターが設立され、世界的なサイバーテロ対策の拠点へと育ちつつある。
日本のICT戦略は?
このような状況を調べると、日本のICT戦略も、もっと革新的に発展させなくてはならないと思う。ICTを活用するリスクやデジタルデバイドなどの課題はあるものの、ICTの発達が日本を幸せにし、便利にし、ICTによるイノベーションが生まれる土壌を急速に整備する必要がある。
建設業としても、BIMが普及しつつあるが、データのやりとりやデジタル署名によって、何を変えることができるのか、何が便利になるのか、次世代へ向けた取り組みへの期待は大きい。