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ハラカド訪問記3 ー商業ビルにデザイン事務所が入居している理由ー
ハラカドの3階に”れもんらいふ”というデザイン事務所が入居している。これもハラカドの特徴的なテナントの1つである。
商業ビルとオフィスビルの賃料を比較すると、一般的にオフィスビルのほうが安価であるといわれるため(注1)、あえて商業ビルにオフィステナントを入れる例は聞かない。例外は団地の1階の”ショッピングモール”的な場所にローカルなオフィスが入居することくらいか。団地再生として長野県佐久市のホシノマチ団地にあるホシノマチオフィス(シェアオフィス)を思い出す。
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さて、そこで本noteでは、なぜハラカドではオフィステナントが商業ビルの中に入っているのか、考察していけたらと思う。
結論からいうと、不動産側はリスク少なく、インハウスデザイナーを確保できるからであると考えられる。
不動産の管理業務には、デザイン会社と仕事をするものが多い。店内のイベントのポスターやポップアップの制作、各種イベントの装飾、テナント入れ替え後の案内板の更新、HPの維持・更新など、細かい業務を多く発注している。
当然、お気に入りの・顔なじみのデザイン会社はあるものの、イベントの目的や制作物の内容・要件などは管理会社が決める必要があり、デザイン会社との間のコミュニケーションコストがかかる。
ならばと、インハウスデザイナーを雇うことも考える。インハウスデザイナーとは、デザイン会社や制作会社に勤めるのではなく、事業会社のデザイン部門に勤めるデザインナーのことである。化粧品会社・食料品メーカー・電機メーカーなどに多く、不動産会社にインハウスのデザイン部門があるということは寡聞にして聞かない。建設部門が独立したように、あったとしても既に独立しているだろう。
インハウスデザイナーを雇うメリットは、自社の製品に理解が高い人が企画の段階から関与できることである。そのため、スピード感があり、またブランドイメージを維持しやすい。一方でデメリットとしては、競争機会がなくデザインが陳腐化する、人件費が固定費となり不況時のリスクをコントロールできないという点があげられる。
ハラカドに話を戻そう。れもんらいを商業エリアに入居させることで、管理する不動産会社(東急子会社)以上にハラカドに対する理解が深まり、デザインを外注するときのコミュニケーションコストが減る。むしろ管理会社よりもいい提案がくる可能性も高まる。さながらインハウスデザイナーであるが、賃料収入がある分、インハウスデザイナーを雇うより安い。デザインが合わなくなった時や不況時には、契約を切って一般の商業テナントに入れ替えればいいためリスク管理の視点でも嬉しい。
一般的にオフィステナントのほうが、商業テナントよりも長期間の契約になるため収入が安定する。閉店から新規開業までの期間は意外と長く、その間の賃料収入がなくなるため、テナントにはできるだけ長くいてもらいたいものだ。小杉湯原宿のnoteにも書いたが、コロナ禍でどれだけ人流が回復するかも分からない中でオフィスが安定的に稼働していることは、人流が回復しなかった際のリスクヘッジにもなっていたのだろう。
視点を変えて、デザイン会社としてのメリットも考えておこう。まずは安定した顧客の確保。少なくともハラカドが営業し続ける間ではハラカドの仕事がくるだろう。次に広告の精度があがる。自分達がデザインしたものの反応をダイレクトに感じ取れるのは、PDCAを回すうえでも有効であり、次の成功にも繋がりやすい。ハラカドに入居して、半オープンのオフィスになっているというトガったことをしていること、ハラカドに来るようなハイセンスな人たちの普段の生活の中での露出が増えることあたりの広告的な価値も最後に付け加えておこう。
まぁ、契約関係とか、秘匿性の高い大々的なPR戦略とか、あのオフィスでどうやるのかは気になるところではあるが。
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強引にまとめると、ハラカドの中にれもんらいふを入居させることは、ディベロッパー側のリスクやコストと、入居するデザイン事務所側の経営上のメリットを釣り合わせている絶妙なバランス感覚のうえで成り立っているのであろう。
いつの間にか前の記事から一か月以上空いてしまった。最新のハラカドの情報ではなくなっていたら、ごめんなさいである。次回最終回の予定。
注1:Uri Search、オフィスビルと商業ビルの売却はどちらが有利?、https://uri-search.net/blog/detail/5/