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大人の密やかなひとり遊び、音読

伊藤亜紗氏の『どもる体』(医学書院)を読んだのはおよそ1年前だ。 社会で100人に1人いるとか言われる吃音者のひとりであるが、医療的なフォローや自助団体によるサポートをほぼ受けずに進学し成人となり、就職してやってきた私にとって、吃音を心(脳みそ)と身体の不思議と位置付け、論理的でありながら可笑しさが散りばめられた『どもる体』は、吃音の基本知識を得るのみに留まらず、目からウロコの話ばかりで吃音の複雑さに知的好奇心がくすぐられた。ポジティブで刺激的でとにかく素晴らしい内容だった

    • 穂村弘『短歌ください』を読んだら生まれた短歌(7月)

      ・スリッパを独自のルールで履き替える我が家は誰かと暮らしてるみたい ・泡の中お湯の蛇口に手が届くのはここで一年暮らした成果 ・特売の干物3枚298(にーきゅっぱ)買えないよ誰か一緒に暮らそう ・部屋の隅埃まみれの誰かの巣きれいに吸い取るわたしのために ・今日上下おそろいだったんだレアだなまあすぐ脱いでシャワー ----- 穂村弘さん著「短歌ください」(KADOKAWA出版)を読んだ日、いつもの生活の中でポンポンと57577のリズムが浮かんできました。とはいえ頭の中

      • 敵わない友達

        一人で暮らしていると基本的に食べることばかり考えている。 特に仕事の帰り道なんて、あーだこーだ一日の反省しつつも、だんだんと"いかにこの疲れた心身を満たすか"に気持ちが移り、家に辿り着く頃には何からどう用意していい感じの夕飯を自分に与えるか、ほんとそれしか考えていない。 心でよだれを垂らしながら帰宅する。郵便ポストを確認するとはがきが入っている。ちらりと見ると食のことなど忘れて立ちつくした。 昔から「敵わないなあ」と思うことばかりの友達からだった。そのはがきは彼女らしさ

        • 書きものをしてみます

          連休中に立て続けて読んだエッセイが面白かった。そしたら「文章を書く」ことが頭を占めはじめた。 わたしは日々、言葉のことを考えているのではないかと思う。一つは吃音者だから。わたしの吃音は、物心ついた時から発語にまつわる心身のコントロールできないものだ(と、わたしは解釈している)。立ちはだかる吃音の壁にぼろぼろになりながら、「言いやすい言葉に瞬時に到達する思考回路」は、壁をかわし、よじ登り、その場を突破する手段なのだと自然と心得て、自分で生み出せる(=話せる)言葉の引き出しを大

        大人の密やかなひとり遊び、音読