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第15話 ボクもやっと一人前だよ でもサチコって誰なの?

「犬の登録」って知ってる?

飼い主さんは、ワンコを飼い始めたら役所に登録するんだよ。

人間のコが生まれたときも登録ってのをするみたいけど、イヌを飼う時もそうするんだって。



ってことはサ。

ボクだって人間のコみたいに、世の中に存在を認めてもらえるってことなんじゃないかな?

「登録」っておいしいものじゃないけど、なんだかうれしいな。



今、ママは、ボクを連れて役所に来てる。

そして何か書類を出したんだ。

キャリ―ケースの中にいるボクにでも、あたりはザワザワとにぎやかで、人がたくさんいることがわかる。


ママはボクを役所の窓口前の椅子の下に腰かけて、ボクを椅子の下に置いた。

そしてカウンターの向こうの人にボクの名前を告げた。

それを聞いてボクはびっくりする!



登録したボクの名前は

「ポッキー サチコ ヤマシタ」


聞き間違えじゃないかと、ボクはキャリアケースの中で耳をピンと立てた。

書類を受け取る人も、その長い名前に驚いたのか、ボクの名前を繰り返したんだ。

「ポッキー サチコ ヤマシタ?」

ボクが聞き間違えたのではないみたい。



ママは聞き返されることを予想してたんだろう。

即座に、その名前の理由をこう言った。

「サチコはむかし飼っていた犬の名前です。」

ただそれだけ。

「そうなんですね」

担当者も書類を受け取りながらそう言っただけで、それ以上は何も言わなかった。

そして登録の印としての「鑑札」をママに手渡した。



これで、登録はおしまい。

ボクとママは、駐車場へと戻った。

車に乗り込んだママはボクをキャリ―ケースから出し、カラのケースを助手席の足元に置いた。

そうして運転席に座ったまま、昨日買ったばかりの新しいリードを後ろの座席に手を伸ばして取り出した。

さらにもらった「鑑札」をリードにつける。

ボクは鑑札を取り付けたリードを体にかけてもらった。



それは小さいけど、ピカピカ光ってる。

何か大切なもののような気がするね。



ボクはその場に座って、立てた前足だけで2.3回足踏みしてをママを見る。

ママはボクを見返して、ボクに話しかける。

「ポッキー。今度生まれてくるときは、ママの子どもとして生まれておいで」

ボクは、ママのこの言葉をうれしく思った。

だって、ママの子ならしょうちゃんと同じでしょ。

そしたら毎日一緒にお出掛けできるから、一人でお留守番してなくて済むんだよね。


だけどママのその言葉は簡単ではない、もっと深い意味があるんじゃないかなと直感する。

ボクはママの方を向いてしっぽを少しだけ振って見せた。

ママはそれを見てちょっと笑い、ボクを車の進行方向と平行になるように向きを変えた。

トントンと背中を軽く叩き「伏せ」を促す。

ボクが指示に従ったことを確認すると車を静かに出発させた。


体が進行方向と同じ方を向いてれば、車が多少揺れても気持ち悪さが和らぐはずだね。



ママがボクに言った、「ママの子」。

それにはどんな意味があるんだろう?

それにあの「サチコ」っていう人間みたいな名前。

ボクの名前の後にミドルネームとして付けたのはなぜ?

ボクは、顔を両前足の中にしまい込んでそっと目を閉じて思った。

お家に着いたらおやつがもらえるかな?

ジャーキーの他にミルク味のガムも欲しいな。





本日も最後まで読んで頂きありがとうございます。

またこの次にお会いできるのを楽しみにしております。





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