この世はグロい

 目の前に人間がいるでしょ? 見てるでしょ? 段々この人が死ぬ姿とか朽果てる姿を想像してしまうんだよな。

 人間ってさ、生きてる限りどんな目に遭ってもおかしくないんだよ。
 人間が生きて、死ぬという事実が何よりグロい。「飛びだしゃ見える君の肉」なんて句を考え付いた奴は天才だと思うが、日常生活ですらグロい光景を産出すものはそこら中にある。包丁にしたってそうだしライターもそう。車は勿論。

 現実の方が遥かにグロいのだから、フィクションの中のグロさなんて些細な物なんだよな。それを規制する意味なんてクソほどもねえぞ。

 僕は本当に神経質だから、自分がそういう家にありふれた道具を使って非道に走らないかどうか不安でならない。今は理性がその衝動を押さえにかかってるだけだ。

 普通の人はこんなこと考えないって分かってるよ。俺が神経質過ぎるだけなんだ。でも、そういう恐怖を抱いてるってことがまさしく、お前らより思慮深いって証なんだぜ!

 人間は生きてる限り罪を犯す、その罪を自覚もせずに生きてる奴が多すぎるんだよ!

 僕自身、ひどいことをしてきたよ。僕を憎んでいる人間は数知れない。そういう人に復讐される可能性にすら恐怖している。
 僕はつくづく猜疑心深い上に利己的な人間だから、誰かが悪意で行動してると常に疑ってるし、今にもそれをこっちに向けるんじゃないかと戦々恐々してるんだ。