西安博物館のユーモラスな石像
西安博物館の庭で見かけた、獅子に跨る胡人の石像。
一つではなく、その石像がずらりと並ぶ。
胡人と獅子は関係が深い。
中国語でいう「胡人」は西域の人。ペルシャ人もソグド人も皆一様に「胡人」となる。ソグディアナを故郷としたソグド人は、東西シルクロード交易で莫大な富を得た民族であり、中国に獅子つまりライオンを連れてきたのも彼らだったのではないかと考えられる。
ライオンは古代、アフリカ、西アジア、インドに生息していた。戸倉英美氏の『獅子舞の来た道』によれば、20世紀初頭までは、ライオンは中東のほとんどの地域とインド北部に生息していたという。胡人は、ライオンを手懐け、芸を仕込み、雑技とした。その曲芸が仏教とともにシルクロードを通じて中原に伝え、西安や洛陽の都の一大エンターテインメントになったのだろう。獅子舞の原点ではないだろうか。
獅子の記述が中国の文献で最初に出てくるのが『後漢書』の章帝章和元年(87年)「月氏国献獅子」と、二年(88年)「安息国献獅子」だ。月氏国とは紀元前3世紀から1世紀ごろにかけて中央アジアや北方アジアに存在した遊牧民族の国で、安息国とは古代イランのパルティア帝国だとされる。これらの西域の国から漢に献上されたライオンは、宮廷で飼われたという。昨年、東博の『三国志展』で、後漢の都・洛陽で2世紀に制作された獅子が展示されていた。意外にリアルだ。
そして、胡人と獅子の図柄は、初期は仏教芸術で見られ、隋唐以降、壁画、陶器、俑、石像、銅鏡など様々な作品のモチーフとなった。「胡人騎獅子図」も一つのお決まりのモチーフであることから、当時、胡人がライオンに跨って雑技をしたのではないかと推測できる。
参考:『胡人与獅子:図像効能与意義再探討』陝西省歴史博物館 楊瑾
http://www.docin.com/p-1698262070.html