営州と安禄山、そして渤海
山口博先生の「ソグド文化回廊の中の日本」を読み始めました。
安禄山や史思明がソグド人であることは知ってましたが、生まれも育ちも営州(現在の遼寧省朝陽市)とのこと。当時、西の長安、東の営州と呼ばれており、営州はシルクロード交易の拠点だったらしい。
営州にはソグド人や突厥人が多く暮らしていたという。ソグド人のコロニーは300人から1000人単位だと言うから相当数のソグド人が営州に住んでいたと考えられる。その営州のバザールで商人をして節度使に媚び売って成り上がったのが安禄山なのだ。
安禄山が生まれる少し前には、唐によって滅ぼされた高句麗の王族がこの営州に流刑されていたという。彼らが混乱に乗じて営州を脱出して建てた国が渤海だ。
高句麗の王族は契丹の反乱のドサクサでの脱出だったが、ソグド人が手伝った可能性がある。アフラシャブ壁画に高句麗の使者が描かれているように、ソグドと高句麗は外交関係にあったのだし、なんせ営州にはソグド人がたくさん住んでいたのだ。こんなお金になりそうな話にソグド人が動かないはずがない。
渤海は、その後、渤海使として日本にたくさんのソグド商人を送りこむ。沿海州で獲れるテンの毛皮や、渤海では獲れないタイマイという海亀の杯、ソグディアナ産の蜂蜜、人参を売りに。
すごい話だ。来日したソグド人といえば、鑑真に同行してやって来た安如宝しか知らない。謎多き国の渤海にソグド商人が絡んでいたとは!
ちなみに安禄山は
押渤海経略使、渤海郡軍司令官などを経て出世したので、渤海をバックアップしてたとしてもおかしくない。
この本を読みに都立図書館に通ってるのだが、あとがきを読むと著者の山口氏は91歳。去年の本だからもう92歳かもしれない。人生最後の研究書とのことだが、すごいな。