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システムによる効率化(交通系ICカード)によって失われたモノ。

改札を通ろうとしたタイミングで、AppleMatchの充電が切れていることに気がついた。suicaはAppleWatchに紐づいていて、スマホからは使用することができない。つまりsuicaを使用することはできない。

こういう事は一度二度ではなく何度も経験があるので、対処には手慣れている。少し離れたところの売り場で切符を購入するだけだ。

久しぶりに現金を使うな、と思いながら財布を開く。
するとそこに年配の方が困惑した様子で立っていた。

声をかけて話を聞いてみると、suicaのチャージ方法がわからず困っているとのこと。僕はどこでエラーが起きているのかを把握したかったので、最初から操作してもらうようお願いする。

昔のsuicaカードは、一度筐体に差し込み、現金でチャージを終えてから返却されるような仕組みになっていたと記憶している。チャージを完了させるか、キャンセルするまでカードが返却されない。

最近は違っていて、特定の位置にカードを置くだけで手続きを進めることができるようになっているらしかった。財布やパスケースに入れた状態でカードを読み取れるようにするための仕様なのかなと思う。

しかし今回はそれが仇となっていた。彼女はカードが読み取られたことを確認し、その都度カードを財布にしまっていたのだ。手続き中は置きっぱなしにしなければならないので、勝手にキャンセル扱いになってしまう。

やはりそれが原因だったらしく、その後難なくチャージが完了。丁寧にお礼をいただいたので、自分の分の切符を購入して改札を通過する。

するとどうだろう。
ホームを歩く間も、ニヤニヤが止まらないのだ。
オキシトシン(幸せホルモン)が分泌されるのを肌で感じる。

「人は善い行いをすると自分自身が幸せになれる」と聞いたことがあるが、それを久しぶりに体験した。

「相手にも喜んでもらえて、自分も嬉しい気持ちになれる、なんてwin - winな法則なんだ!」そう心のなかで叫びながら電車に乗り込んだ。


タイトルに「システムの効率化によって失われたモノ」と書いた。これは「思い遣りの心」といった抽象的なのものではない。「人助けの機会」である。

わざわざ人が人を助けなくたって、システムがなんとかしてくれるのが当たり前になった。残されているのは「システムエラーを解決するお手伝い」だけ。まさに今日僕が体験したものである。

 GoogleMapをみれば道案内も、旅行ガイドも必要ないし、タクシーだってアプリで呼ぶことができる。振り返ってみれば昔は知らない人に道を聞かれることも多かったが、今となってはほとんど機会がない。

もちろん、だからといって「システム化、けしからん!」とは別に思わない。それによって世の中が便利になっていることは間違いないからだ。ただし、誰しも他人に感謝されたいという欲求があるはずで、それを満たす機会が減ってしまったことは少し残念に思える。

これは仕事にも当てはめられる。少ないコストでどれだけ成果を上げられるかという戦いなので、基本的には効率化が重視される。幼少期に比べて、大人になると「感謝する」「感謝される」機会が減るのは間違いないだろう。

AIの台頭によって、今後よりその傾向は加速すると思う。システムが最適化され、人の介在する余地はなくなり、HtoH(Human to Human。思いついてカッコよかったので使ってみました)のやりとりは減少する一方ではないだろうか。



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たみな涼介 | シナリオライター/アプリエンジニア
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