ゆる言語学ラジオ「うんちくデータベースを作ろう!」の回に触発されて、最高のデータベースアプリ「コトバコ」を開発した。
最高のデータベースアプリが完成した
先日「コトバコ」というデータベースアプリをリリースした。ありがたいことに公開して一週間も経たないうちに数十名もの方がインストールしてくださり、心がありがたいという気持ちに満たされている。
今回はこのアプリを開発した経緯や、完成して思ったことなどをお話ししたい。まずどういうアプリなのかを試してみたい方は、以下からインストールしてみて欲しい。ほとんどの機能は無料で使うことができるので安心して欲しい。
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開発の経緯
なぜ今更メモ(データベース)アプリ作るのか。notionではダメなのか。
世の中にメモアプリは山ほど存在する。AppleStoreでパッと検索してみただけでも、ざっと数百種類ものアプリに出会えるし、GoodNotesやEvernote,notionのような素晴らしいサービスだって、誰でも無料で利用することができてしまう。
「優れた既製品があるにも関わらず、0から新しいものをつくろうとすること」をエンジニア界隈では「車輪の再発明」という言葉で表現する。
自転車を作りたいならタイヤ館に行って、店員オススメのタイヤを購入した方が品質も担保されていて満足度が高い。0から車輪を作るのはコストの無駄になりかねない、という教訓話だ。
今回の私の挑戦もまさに「車輪の再発明」になりかねない。中途半端な誰にも使われないアプリが出来上がってしまうなら、ハナから開発しない方が良い。
それを知っていながらも「データベースアプリを作ろう」と思ったのは、とあるYoutube番組の動画を見たことがきっかけだった。
ゆるコンピューター科学(ゆる言語学)ラジオのパーソナリティのお二人は「最高のメモを作る方法は?」「理想のデータベース設計とは?」という問いに対し、「そんなものはない」という結論を出した。それに至るまでの話はいずれも納得感のあるもので、非常に興味深い話だった。ぜひ一度目を通してみて欲しい。
動画を見終わった私は、メラメラとした何かが心に湧いてくるのを感じた。気づいたときにはパソコンの前に座っていて、キーボードをカタカタと叩き始めていた。
前提:万人に通ずるベストなデータベース設計は存在しない
これまで私は読んだ本の感想や覚えたい言葉をnotionを使って管理していた。notionとは誰でも無料で使える上にカスタマイズ性が高く、「痒いところに手が届く」データベースアプリの王様的存在だ。
notionでも事足りていたので、だからまさか自分が「データベースアプリ」を自作しようと考え始めることなど思っても見なかった。
結論からいうと、私はただ私好みのデータ管理アプリが欲しくなってしまった。既製品の優秀な自転車よりも、山登りに特化したフルカスタムなマウンテンバイクが欲しくなったのである。
万人に通ずるベストがないのはよくわかった。
しかしとある目的に特化させれば、「〇〇にとって最も美しいデータベース」は作れるのではないか。これが私の挑戦の始まりだった。
コンセプトは「ことばを集める美しい記録アプリ」
他アプリとの差別化を図るために
まずはコンセプトを決めた。「ことばを集める美しい記録アプリ」である。
なによりこだわりたいと思ったポイントは、美しいということ。使っていてテンションが上がることだ。アプリを継続的に使うモチベーションにもなるし、他アプリとの差別化も図れると思った。
notionはExcelやSpreadSheetなどに慣れている人であれば、ある程度触っていればそのうち扱えるようになると思う。しかし逆に機械が苦手な方にとってはかなりハードルが高いと感じられるツールでもある。
例えば私の妻は中学校の国語教師をしているが、システムにあまり詳しくない。彼女は「notionを使って覚えたい言葉を記録しているんだ」と教えたときに、とても興味を持ってくれた。
しかし「notionがよくわからなかった」とのことでnotionの導入は断念。私の方で教えてようと色々試みたけれど、やはり最初に感じたハードルの高さを払拭することはできなかった。
そこで私が開発するアプリでは、記録したデータを美しくみせることはもちろん、必要最小限の操作で簡単かつ直感的に記録できる機能美を大切にしようと思った。
誰でも簡単に、サクッと導入できる手軽さ。
それでいて自分が大切にしたいデータを綺麗に整えていく快感。
それこそが「コトバコ」の存在意義になると確信して、私は開発を開始した。
私の記憶力は鳥レベルなので、すぐに全部忘れてしまう
私は記憶力がすこぶる悪い。読んだ本の内容は数日経てば忘れてしまうし、過去に起きた出来事や思い出もほとんど脳から抜け落ちてしまっている。記念日、誕生日などの大切な日付も忘れてしまうので、妻には「俺の脳に期待しないでくれ」と念を押してある。
(※ちゃんとGoogleカレンダーにメモするなどの努力はしている。ただ会話のなかでさっと思い出すことが出来ない)
目を泣き腫らすほどに感動した映画も忘れてしまうし、
勉強になるなぁと読み進めた資料や参考本の内容も、忘れてしまう。
先月「きみの色」という映画を観てとても感動したけれど、既に主人公たちの名前は忘れてしまっているし、この文章を書くまで観たコトすら忘れていた。
それは非常に勿体無いなと日頃感じている。出来るものなら忘れたくない。
メモ帳を取るようにしたり、日記をいくつか試してみたけれど、効果はなし。「記憶力をあげる為の方法」と言われる説をいくつも試してみたが結局少しばかり改善しただけで、今のところ大きく変わったとは思えない。
そのようにして悩みつづけた結果、私はひとつの答えに辿り着いた。
「覚えておく必要はなく、いつでも取り出せるようにすること」が重要だということだ。
コトバコは、検索ワードでの絞り込みはもちろん、タグやフォルダでわかりやすく絞り込める工夫を施した。
「あれ、なんだったっけ…?」
となった時に簡単にデータを引っ張り出せるような工夫を施した。
キーワード検索したり
タグでジャンル分けしたり
カレンダーから探すこともできるので、
「先月あたりに登録した気がするんだけど…」
というシチュエーションにもバッチリ対応している。
デザインにもこだわっていて、我ながら非常に気に入っている機能である。
遊び心を満たすだけの贅沢な機能「泳ぐことば」
デザイン面でもう一つこだわった点がある。
それは「泳ぐことば」という機能だ。
gifを貼ろうと思ったがカクカクしていて酔いそうだったので、画像を一枚だけ掲載する。このそれぞれの文字が動き回ったり、突然回ったり、色が変わりながら主張を始めたりする様子が生き物みたいで面白い。
これは私が小学生の頃に観た「およぐことば」という師井聡子さんの作品をイメージしたものである。
アート作品とは不思議なもので、鳥レベルの記憶力でもしっかりと覚えていた。
言葉が水面を漂う様子が子供ながらにキレイだなと思っていたが、今改めて考えてみると違う視点が見えてくる。
「ことばをすくう」と「ことばを手放す」の二つの行為を繰り返す営みは私達が日常的に行っていることであって、それを具現化しようと試みたのがこの作品なのかな、などと想いを馳せるのも面白いなと思った。
実際に開発したアプリ「コトバコ」
そうして1ヶ月完成したのが「コトバコ」である。
無料でインストールできるので、まずは是非試してみてほしい。
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