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#7【おにいさんのカメラ/フリー脚本(30分・演者5名)】

【あらすじ】
ここはとある学校の写真部。
部員は2人のみのもはや廃部寸前な部で、
ある日事件は起こった…。

深まる謎。不審な影。
彼らは幾多の困難に立ち向かい、
部を存続させることが出来るのだろうか?
(*コメディです)
【登場人物】
・部長…適当な部長。部室でずっと漫画読んでる。
・後輩…発想がクレイジーな写真部の部員。事件の発端。
・幸子…学校一のヒロイン(?)。推理力抜群。用意周到。
・校長…「私が校長だ」が口癖の校長だ。
・謎の少年…おじいさんのランプ、回想シーンで登場する、謎の少年。


部長 :でな、被写体が自分の好みの角度になったところで、
ファインダーをしっかり覗いて、パシャリ。こんな感じよ。
後輩 :へぇ~
部長 :少し写真が暗く感じたら露出補正使えば多少写りも変わるし、
まぁ今の時代オートでも十分綺麗に撮れるからな。
写真の写りは、とにかく計算されつくした被写体との距離で決まる!
後輩 :へぇ~、かっこいいっす!さすがですね部長!
部長:  ふはははは。まぁろくに勉強せずに二年間写真ばっか撮り続けたからな~。あっ!

部長、写真を撮影する。

後輩 :今のは何撮ったんですか?
部長 :ん~?女の子
後輩 :へぇぇ~。えええ!?
部長 :ん?
後輩 :女の子って、ダ、ダ駄目じゃないすか!?
部長 :なんで?
後輩 :と、とうさつは犯罪ですよ!
部長 :いや別に下着とってるわけでもないしさ~、問題ないよ。
外の桜の写真を撮るついでに、たまたま写りこんだだけだよ。
後輩 :…でも!
部長 :お前、女が嫌いか??
後輩 :いや、、そんなこともないですけど。
部長 :じゃあ、好きか?
後輩 :まぁ、どちらかといえば。。
部長 :好きなものを、好きな時に撮らないやつは、立派な表現者にはなれない。
カメラを手に取ってから数秒の間にも、場面は絶え間なく変化を続けるんだ。
迷っていたらその時間がもったいないだろう。
後輩 :か、かっけぇぇ
部長 :よし、お前は今日から社会的な規則やしがらみから解き放たれ、
現代を代表する表現者を目指す。そして俺と次の写真コンクールで優勝し、賞金5万円を手に入れる!
後輩 :はい!よ~し、やるき出てきたぞ~。部長!課外活動してもよろしいでしょうか?
部長 :お前は許可がなきゃ外も歩けないのか?
後輩 :歩けます!
部長 :よし、いけ!お前は檻から解き放たれた鳥だ!好きなところまでいってこい!
後輩 :ピヨピヨ~~~!

後輩、部室を後にする。

部長:  …あいつ扱いやすいな。ま、嫌いじゃないけど。

部長、部室にあった漫画を読み始める。
後輩、ダッシュで部室に戻り、急いで鍵を閉める。汗をふくジェスチャー。
部長、状況が呑み込めずにいる。

部長 :お、、おい!
後輩 :は、、はい!
部長 :随分と慌ただしくないか?
後輩 :ないです!
部長 :嘘つくな!
後輩 :はい!
部長 :..。
後輩 :..。

部長 :お前、まさか
後輩 :撮りたいものを、撮りました。
部長 :見せろ!

部長、後輩からカメラを奪い取り、中身を確認。

後輩 :素晴らしい写真が撮れました。

部長役は、その画像を客席に見せても良い。
(準備できるのであれば)

部長 :お前...我が校随一の美人で知られる幸子ちゃんの変顔写真じゃないか!
隠れて撮っちゃだめだろうよ。あやまってこいよ!
後輩 :嫌ですよ!部長が言ってくれたんじゃないですか!
好きなものを、好きな時に撮る。お前は檻から解き放たれた、って。
部長 :こういうことじゃないだろう!
後輩 :でも部長が...
部長 :人に迷惑をかけていいと言っているわけではない。あくまでも、自分が
後輩 :カメラを手に取ってから数秒間の内に、場面は絶え間なく切り替わっている。
部長 :...そうだな!もういい、俺は責任は取らないからな!
後輩 :まぁでも、一応もうしばらくここで隠れていることにします。
部長 :隠れる?お前この写真撮ったことばれてるのか?
後輩 :ん~。たぶんばれてますね。ほら!
部長 :ばっちりカメラ目線じゃねぇか。しーらね!

部長、漫画を再び読み始める。後輩はカメラをこねくり回したのち、スマホをいじり始める。

後輩:  しかし、世の中便利になりましたよね~、
デジタルカメラで撮影した写真が簡単にスマートフォンに送れるなんて
部長:  ほんとな~。画質も今じゃ大きく違わないしなぁ。
まぁ俺はあくまでもスマホじゃなくカメラを好むが。
後輩:  ぶっちゃけスマホ一台あれば充分ですよね。
部長 :何言ってるんだ。古いものには古いなりの良さがあるんだぜ?
現にお前は今、そのカメラで写真を撮ったんだろ
後輩:  まぁ、そうなんですけど。その撮った写真を見るのが結局スマホだったら、意味なくないっすか?
部長:  、、、
後輩 :部長、おじいさんのランプって話知ってますか?
部長 :なにそれ?
後輩 :元は児童文学の話で、今は教訓話として語られるみたいなんですけど。
部長 :知らないなぁ。
後輩 :では、教えて差し上げましょう。回想スタート!(唐突)

下手から謎の少年が出てくる。格好は古くの着物。

部長:  え、誰だ!?
後輩 :昔、とあるところにとある少年がいました。
彼はとある一家の生まれで、とある理由から両親や親戚がいませんでした。
部長:  謎が多すぎて全然入ってこないな。
後輩 :ある日彼は初めてランプという道具を手にする。
これまでに触れたことのない明かりを灯す道具に心奪われ、
彼は村の便利屋からランプ売りへと転職しました。

(この間も少年はマイムを続ける)

後輩:  やがてランプ売りとして成功し、妻、子供、家庭を持ち、幸せの絶頂だった。
謎の少年:  ふははははははは!(勝ち誇ったような笑顔)
部長 :少年キャラおかしくない!?
後輩 :しかし、彼は大きな壁にぶち当たる。
彼の住む村に電気を通す計画が発案された。
電灯が普及されれば商売道具であるランプが売れなくなってしまう。
そうすれば、家族を養うことが難しくなる。彼は、とんでもないことを考えついてしまいます。
謎の少年 :よし、村長の家に火をつけよう!
部長 :どうしてだ!?!?
後輩:  逆恨み故の犯行だった。商品のランプを右手に、
火打ち石を左手に構え、彼は村長の家にたどり着きます。
謎の少年:  長年の恨み、晴らしてやる。

少年は石をカチカチ鳴らす。

謎の少年:  あれ、あれ、クソっ。つかない。こうなったらライターを。
(ポケットをまさぐる)忘れてきちまった。

少年はカチカチと石を鳴らし続ける。

謎の少年 :くそっ。(石を投げ捨てて)古くさいものは、いざというときに役に立たない。
後輩 :そこで彼は気づく。
謎の少年 :はぁ!特大ブーメランじゃないか!!
後輩 :今やランプも古くさく、時代遅れのもの。
察した少年は家に戻り、ランプを一箇所に集め、灯油を垂らし火を放ちます。ランプ売りをやめた少年は街に出て、本屋さんを始めた。
謎の少年 :(メガネをかけて)文学こそ、次世代に必要なアイテムですぞ。
後輩:  めでたしめでたし。

少年はお辞儀し、上手より退場。

部長 :最後までキャラが定まらなかったな。
後輩 :つまり、「古いものは、肝心な時に役に立たない」のですよ。
部長 :俺が古い考え方だって言いたいのか!?
後輩 :シンプルにいえば、はい。
部長 :お前、俺のこと先輩だと思ってないだろ。
後輩 :まぁ、はい。
部長 :もうこの部活やめようかな。
後輩 :そんなこと言わないでください!
2人だけの部活ですから、僕1人になったらやっていけませんよ。
部長 :部長と、副部長しかいないからな。なんだよこの部活。もう俺は漫画を読む。

部長は漫画を読み始める。

後輩 :そういえば部長。最近人気沸騰中のアプリ知ってますか?
部長 :どんなの?
後輩 :最新のアプリなんで部長知らないかもしれないですけどぉ
部長 :なんて名前
後輩 :SNOW
部長 :知ってるわ。さすがの俺も
後輩 :これでさっき撮った写真に猫耳とかつけられるんすよ~、
これをこうして、、可愛くないですか。
部長 :…。まさかとは思うけどさ、お前これ投稿とかしてないよな?
後輩 :してないですよ~、さすがの僕も送る先は選びますって。
部長 :だよな...ん!?
後輩 :ん??
部長 :送ったの?
後輩 :はい。
部長 :誰に
後輩 :ゆきちゃんに
部長 :馬鹿なの!?
後輩 :まずかったっすか!?
部長 :今時写真なんてあっという間に人に伝わるもんなんだよ。
ゆきちゃんが仮にSNSにでも投稿したら、すぐさま拡散されて…。。大変なことに。
後輩 :はぁう!!!
部長 :どうした!?

後輩は部長にスマホの画面を見せる。

後輩 :時すでに遅しとはこのこと…。
部長 :「エイサツ高校3年、学校のヒロイン幸子さんの変顔画像!#猫耳なう#盗撮 」。いいね!15!
後輩 :いいね15もついてるんですか!?変顔するだけでいいね15って凄い。
部長 :いいから早く消してもらえよ!
後輩 :もう無理っすね。リツイート5。
更にインスタグラム、ティクトックにも転載されてますし。
部長:  あーあ。ま、俺には関係ないか。

部長は再び漫画を読み始める。

部長 :あー。おもしれぇキャプテン翼。
後輩 :見てください、これ!?本人のリツイートがありました!
部長 :ん?
後輩 :「犯人、生かしはおけない。今にみてろ。」
部長 :あー、終わったな。
後輩 :ひとごとじゃないですよ。助けてくださいよ!

上手よりあらだたしい音を立てて幸子ちゃんが登場。

幸子:  失礼しまーす。
後輩 :うげっ。

後輩はダッシュで物陰に隠れる。

幸子 すいません、ここに寺田くん(後輩の名前)いませんか?
先輩: (漫画を読みながら)知らないよ。寺田くん、さっきどっかに歩いて行ったけど~。
幸子 :そうですか。

幸子は置いてある後輩のカメラを手に取る。

幸子 :これは誰のカメラですか?
先輩 :あ、それは俺のだよ。
幸子 :先輩の。ふぅん。

幸子はスマホを取り出し、先輩に向ける。

幸子 :この写真に見覚えはありますか?
先輩 :(一目もくれずに)知らないなぁ
幸子 :そうですか。では、もう一度聞きます。このカメラはあなたのですね。
先輩 :は~い。
幸子 :この写真は先ほど盗撮され、SNSに流出したものです。
そして、投稿主のゆきちゃんいわく、寺田くんがおくってきた写真。
寺田くんの所属する写真部。そして、私は盗撮されたのに気づいた時、
犯人がこのカメラを持っていたのを確認しました。
先輩:  …ん?幸子ちゃん?
幸子 :犯人はあんただな?
先輩 :ちょっ
幸子 :寺田くんの先輩であるあなたは、寺田くんにこの写真を転送し、いたずらさせた。違いますか?
先輩:  濡れ衣だって。俺はそんなことしてない。
幸子 :だって、今写真見せた時も、漫画読みながら返事しましたよね?
いかにも見る前から知ってるかのように。
先輩 :いや、知ってるっちゃ知ってるけども。
幸子 :はい、証拠はいただきました。(ポケットからレコーダーを取り出し)今あなたは犯行を認めましたね?
先輩 :用意周到すぎるだろ!!探偵かよ!
幸子 :いまから、校長先生と話に行きます。
先輩 :やめて。
幸子 :部員2人の部活動。不祥事があったと知れわたれば。
先輩 :廃部…?
幸子 :それじゃあ。ごきげんよう。

幸子ちゃんは上手より退場

後輩 :困ったことになりましたねぇ。
部長 :ねぇ、じゃねぇよ!とばっちり食らったじゃねえかよ!
後輩 :そもそもは部長が悪いんですよ。好きなもの撮ってこいっていうから。
部長 :お前がこんなクレイジーなやつだと思わなかったんだよ。
後輩 :さて、どうしましょう?
部長 :とりあえず、お前はスマホの写真消しとけ。
後輩 LINEの履歴は消せないですよ。フォルダ内のデータは消せても。
部長 :あー困ったなぁ。いっそ、さっきのお兄さんみたいに、校長室に火でも放とうか。
後輩 :先輩、くるってますね。
部長 :お前だけにはいわれたくないわ!

上手より、ドアのノック音がする。

校長 :校長だ。
後輩 :はっ。やばい!

後輩は一瞬上手にはけ、戻ってくる。

後輩 :しばらくは大丈夫です。鍵かけてきましたぜ。
部長 :余計おおごとにならないかそれ。
校長 :わたしは校長だぞ。何故鍵をかけた!隠し事でもしているのか!?
部長 :ほら、やばいって!あけてこいよ!
後輩 :へい、わかりました。

後輩はもう一度、上手に戻り鍵をあける。
校長と幸子ちゃん入場。

校長 :校長だ。なぜ鍵をかけたのか説明してもらおう。
部長 :あの~、最近戸締り週間だから、しっかり鍵をかけておかないとなぁって。
後輩 :そうそう。最近物騒ですからね。
校長 :そうか。それはそうとして、先ほど、この幸子さんから苦言を受け、そのことについて君達に事実確認をしたいと思ったのだが。
部長:  そうですね。えーっと。なんのことですか?
校長 :幸子さん、例のものを。
幸子 :はい。

幸子ちゃんはレコーダーど録音した先ほどの音声を流す。

校長:  詳しいことは彼女から聞いている。正直に話せば悪いようにはしない。さっさとげろって、楽になったらどうだ?
部長 :こいつ、本当に教師か?
後輩 :まるで悪役ですね。ま、どちらかといえば今回は僕たちが悪者ですけど。
部長 :ふざけてる場合か!?
校長 :さぁどうする?

部長:  わかりました。
後輩 :部長?
部長 :すべて正直に話します。
校長 :さぁ、真実をおしえてくれ。
部長 :この事件の犯人は…こいつです。(後輩を指差して)
後輩 :えぇぇぇ!!!
部長 :私の監督不行き届きです。
後輩 :庇ってくれる流れだったじゃないですか。
部長 :うるせぇ。もうやけくそだ。俺は関係ない。
後輩 :あーそうですか。じゃあもう知りません。
(やけになって大きな声で)部長そういえば、幸子さんの他にもたくさん、女子の写真盗撮してましたよね~。
先輩:  ばか!
校長 :なに?私は校長だ。聞きづてならんぞ。

後輩は部長のもつカメラをかっさらう。

後輩:  ここに全て残っているはずです。
部長 :お前、見損なったぞ!
幸子 :この部活の絆薄っぺらいな。
後輩 :ここをこうして、ここの、、あれ?ない?
校長 :ないではないか?この素敵な背景画像がどうかしたか?
後輩 :いや、そんなはずは…
校長 :詳しいことは校長室で聞こう。なぜなら、私は校長だ。
幸子 :そうですね。行きましょう。

校長と幸子ちゃんに両肩を掴まれて、上手に引っ張られる後輩。

後輩 :貴様、仕組んだな!覚えてろ!この恨み、忘れないからな!!

上手より退場

部長:  ふぅ。

部長は漫画に挟んであったSDカードを取り出す。

部長 :やっぱり古いものの方がいいなぁ~!


暗転


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たみな涼介 | シナリオライター/アプリエンジニア
最後まで読んでいただきありがとうございます! ▶︎「4コマ漫画」「ボイスドラマ」 などで活動中のシナリオライターです。 活動費用が意外とかさむため、よろしければサポートして頂けると嬉しいです!“あなた”のサポートが私のマガジンを創ります。 お仕事のご依頼もお待ちしております!