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【3分で読める】「サムライハート/SPYAIR」を聴いて小説のワンシーンを想像した。【銀魂】
【※この物語は、「銀魂」のパロディを含みます。】
【あらすじ】
剣士は、お互いの実力を戦闘の最中に見極める。
刀を握る手に伝わる重みや、相手の表情。佇まいや発言のなかから、あらゆる情報を頭に叩き込む。そして、それらを元に相手の力量を図るのである。
それは決して、一朝一夕で身につくような能力ではない。
鍛錬により身についたそれは、決して誤った判断を下さない。
そう確信していた。この男に出会うまでは。
今、ハッキリとわかった。
この男、只者ではない。
それなりに剣技には自信があった。
決して自惚れなどではない。剣技の名門一家に生まれてからというもの、幼い頃から著名な剣士の指導を受けて育った。名を挙げただけで一般人が震え上がるほどの腕利きばかりで、指導とはいえ、一切容赦はなかった。
努力と鍛錬により身についたそれは、俺をより高みへと連れ出した。
「上には上がいる」とはよく言ったもので、俺がどれだけ強くなろうとも、さらに強い敵が現れた。その壁を破るには、さらに訓練する他なかった。
「強さ」というものには際限がない。
腕力のある男が、最強とは限らない。それと同じように、勝負に勝った回数も強さの証明にはなり得ない。条件や環境次第で、「強さ」は流動的に変化するものだ。
では、強さとは何か。
幼き頃からずっと考え続けてきた。
それを考え続けることは、自分がこの世に生を受けた理由に直結すると信じて疑わなかった。
なぜ俺は強くなる必要があるのか。
どうして日々刀を振るうのか。
何の為に?
なぜ?どうして?
それはきっと、相手を圧倒するパワーではない。
人を翻弄する巧みな話術でもない。
物怖じしない堂々とした態度でもない。
鋭い刀で不埒者を斬ることでもない。
それは…
「あのぉ」
目の前の男は、無気力にこちらに声をかけてくる。
だらしない格好。夕方にも関わらず、はねて飛び上がっている寝癖。
腰に携えた刀は、どうみても明らかに木刀である。身を守るには明らかに不用心すぎる。
隙だらけ…それでいて、隙がない。
鍛えた気配のないだらしない身体つき。にも関わらず、何とも言えぬオーラを纏っている。
一体…この男は何者だ。
「悪いけど、そこどいてもらえる?君のせいで逃げ恥の再放送、終わっちゃったらどーすんの。やっとガッキーと星野源がいい感じになってきたところなんだから。あー、言いたいことはわかるぞ。だがな、二十代後半の成人男性には、あれくらいの胸キュン度合いが丁度いいんだ。土曜日昼に食べるチキンラーメンくらい丁度いい。」
何を言っているのか、ほとんど理解出来ない。
汗が頬から滴り落ちる。
刀にかけた手が震えている。
「もしも〜し。息してますかぁ?」
心が、感覚が、研ぎ澄まされていく。
より高みへと到達するために、俺はこの男と対峙する。
これは神が与えた使命に違いない。
彼と目が合う。
その男は、鼻をほじりながら、不敵に笑った。
民奈涼介
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