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【3分で読める】「StaRt/Mrs. GREEN APPLE」を聴いて小説のワンシーンを想像した。【結婚式】

【あらすじ】
結婚式当日。世間一般に言われているような苦労もなく、トラブルのないまま今日という日を迎えることが出来た。

これから俺達夫婦は様々な体験をすることになる。
喜び、怒り、哀しみ、楽しみ。
そのスタートラインにたった今、俺は決心したことがある。

二人の思い出の曲が流れた3分32秒の間。
俺は、”想い”を再確認する。

披露宴には、「新郎新婦中座」と呼ばれる時間帯がある。会場から退場し、お色直しを行ったのち、装いを新たに再入場するという、披露宴ならではのパフォーマンスだ。

梨花は昔からウェディングドレスを着るのが夢だった。黄色と赤色のドレスが気に入っていて、選びきれずにどちらのドレスも着ることに決まった。今は某アニメのヒロインの姿を彷彿とさせる、派手な黄色のドレスを着ている。

多少スケジュールの遅れがあったものの、今では何事もなく式が進行している。両家挨拶や、挙式が済んでいることもあって、ほとんど懸念事項は残っていない。後はゲストとの披露パーティーを楽しむだけだった。

扉一枚を隔てて騒ぎ立てている仲間や同僚、親戚の姿を一人ずつ思い浮かべる。アルコールに頬を赤く染め、いつもより少し大きめのボリュームで話す彼らを見ていると、「俺は本当に結婚するのだ」という実感が改めて湧いてくる。

「ではそろそろ準備はよろしいですか?お父様がお手洗いに行かれているそうなので、席に戻り次第再入場致しますね」
「わかりました」
進行を務める司会者、そしてキャプテンと呼ばれる役職のスタッフが、今後の流れについてざっくりと説明してくれる。再入場が終われば、次は友人代表の余興に移る予定だと聞かされた。

「では行きましょうか」インカムから指示を受けたキャプテンが、別のスタッフへと指示を出す。それと同時にBGMが聞こえなくなり、俺達の思い出の曲が大音量で流れ出した。

曲に合わせて扉が開き、拍手喝采に包まれる。
何かの主役になることに慣れない自分も、流石にこの瞬間は少しばかり気持ちが良かった。皆から祝福されて、まるで二人の生活をまるっと肯定されるような気分になれた。

しかしこれはあくまでもスタートラインにすぎない。
楽しいことも、哀しいことも、充実感も、憤りも、なにもかもをこれから少しずつ経験することだろう。どんなことがあっても、彼女となら乗り越えられると信じている。だから俺は、こうして今この場に立っているんだ。

友人代表のスピーチで、小学生時代の親友から言われた言葉を思い出す。
「幸せと思える貴重な時間を過ごせるのは、この場に二人の人間がいるからです。一人でも幸せになることは出来ますが、二人でしか経験し得ないことが世の中には沢山あります」

ボロボロ涙を流す梨花を見る。思わず繋いだ手をぎゅっと握りしめる。
それに気づいた梨花はこっちを見て、泣きながら微笑んだ。

あぁ、そうか。
こういうことか、と思った。

新郎、新婦の席に到着し、着席する。
音楽は止んでいるはずなのに、頭の中ではあのフレーズが繰り返されていた。俺はこっそり、あの大好きなフレーズを口ずさんだ。

最後まで読んでいただきありがとうございました!
今回は「StaRt/Mrs.GREEN APPLE」を元に小説のワンシーンを執筆いたしました。ミセスの楽曲は、聴いてて楽しいものばかりですね!

実は著者、かつて結婚式場で音響オペレーターの仕事をさせて頂いたことがあります。そして実際に「StaRt」を再入場の演出で使用した新郎新婦がいらっしゃったので、このような設定を思いつきました。

最後のシーン、主人公が口ずさんだのは果たしてどのフレーズなのでしょうか?是非想像を膨らませながら、楽しんでもらえれば幸いです。

民奈涼介


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たみな涼介 | シナリオライター/アプリエンジニア
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