おもひで
(なんであの時泣いてたんだろう)
申し訳なさそうな顔をしながらモスシェイクを注文するカップルを見て、ふと、過去の記憶が蘇った。
二十歳の頃、親が離婚し、そのついでに「お前の父親は本当の父親ではない」と、母親に亀有のガストで告げられ、池袋での1人暮らしを強制的にさせられた。
今となっては酒の肴にできるくらいまでにはなったが、当時はもうホントに。ホントに荒んでた。
超繁華街の飲食店に勤務しながら、己に投げられた角度のエグいフォークボールを受け止めるのだ。独りで。
自分で家賃を払っている5畳半のアパートを、漫画喫茶で過ごしているかのような感覚で流れる日々。
2週間ほどで限界を迎えた私は、メスというメスにLINEを送った。
相席屋で1回だけの子。
元カノ。
幼なじみ。
キャッチした錦糸町の女。
後輩と言っていいのか?というレベルの距離の後輩。
こじれた三十路。
元カノ。
相席屋。
元カノ。
元カノ。
和光市。
全員サシで飲み、もれなく酔っ払った俺が泣く。酷く醜い光景を領域展開していた。
そんな事を思い出した。
思い出しただけ。
もう二度とあんな情けないメンヘラ野郎にはならないし、酔って連絡などしない。
申し訳なさそうにモスシェイクを頼むお前らが俺のクソみてぇな過去を引きずり出したんだ。
幸せになれよ。
馬鹿野郎。