福翁自伝 11. 暗殺の心配
これまで御話し申した通り、私の言行は有心故造(ゆうしんこぞう)、わざと敵を求めるわけでは固(もと)よりありませんが、鎖国風の日本にいて、一際(ひときわ)目立つ様に、開国文明論を主張すれば、自然に敵の出来るのも仕方がありません。その敵も、口でかれこれ喧しく言って罵詈(ばり)するくらいは何でもないが、ただ怖くて堪らないのは襲撃暗殺の一事です。これから少しその事を述べますが、およそ、世の中に我身にとって好かない、不愉快な、気味の悪い、恐ろしいものは、暗殺が第一番であります。この味は