「まくらべ通信」を読む<後編>
2023年2月9日、この日の活動は文学フリマ東京35でメンバーの本条恵さんが発行した「まくらべ通信」をみんなで熱く語ろうという回でした。
前回に続き選ばれた歌の紹介、後編です。
※()内はページ数
小林礼歩 選
たんぽぽの綿毛を蹴散らす 腹いせはいつかどこかに花を咲かせる (8)
僕たちは飼い殺されてしまうだろう銀のエンゼルほどの希望に (20)
水に浮くトマトは甘くないトマトでも遠くまでおよげるトマト (22)
来し方に花を咲かせて歩みゆく隣の町のベーグル屋まで 「ピクミン ブルーム」 (26)
花江なのは 選
街路樹が何の木であれ電飾を掛ければ街は冬になるのだ (11)
汗だくで漕げばここから下り坂つかのま風の住人になる (14)
ほどかれた舟が幾度も川べりにぶつかるようなさよならでした (24)
たまらなく恋しい例えば学食のカレーのビニールみたいな人参 (33)
大住花歩 選
その道を八時に行けばしゃがみ込む十九の俺に躓くだろう (11)
このごろの首輪は光る 犬だけを光らせ人は夜道を進む (11)
仲間からはぐれてしまったビル風の子が哭(な)いている九階トイレ (14)
どんな陽を風を言葉を浴びてきたチリ産アスパラ九十八円 (22)
そして最後に、本条さん自身も選んでくれました。
本条恵 自選
明けやらぬ五時半それでも味噌汁の湯気のあたりに朝が来ている (15)
どんな陽を風を言葉を浴びてきたチリ産アスパラ九十八円 (22)
あおう、って遠吠えのよう 遠吠えに応える声のない夕まぐれ (28)
自分が選んだ歌以外でもメンバーが選んだ歌に、うんうん、それも良いよね!というものばかりで、素敵な歌たっぷりの短歌集だと改めて認識した活動でした。