「まくらべ通信」を読む<前編>
2023年2月9日。この日の活動は、文学フリマ東京35でメンバーの本条恵さんが発行した「まくらべ通信」をみんなで熱く語ろうという回でした。
メンバーそれぞれ好きな歌を3首選んで発表するということになっていましたが、ふたを開けてみたら3首に絞れない…!と言って4首以上選んできたメンバーばかり。
今回はその時に選ばれた歌を2回に分けて紹介します。
※()内はページ数
宮原まどか 選
「迷う」って打とうとしたのに三回も間違えて、もう「魔王」で生きてく(1)
バス路には赤白交互の花水木おしまいだけが赤白白白 (7)
二度三度腰を浮かせて座席から逃がそうとする誰かの体温 (17)
だましだまし去年の夏を乗り切ったサンダルでこの夏に踏み出す (21)
黒澤沙都子 選
Kindleをバグらせるのは本棚を追われた紙魚のたましいなのか (2)
天井を仰いで涙を堪えてる渡り廊下の蛇口はいつも (3)
川をわたるあたりで地上にあらわれる電車も海が見たいのだろう (23)
あおう、って遠吠えのよう 遠吠えに応える声のない夕まぐれ (28)
阿部二三 選
枯れた花など無かったというように花壇はいつも満たされている (7)
引き返す気はないけれど振り向けばきらめく脇道ばかりの道だ (12)
汗だくで漕げばここから下り坂つかのま風の住人になる (14)
二週間けっきょく開きもしなかった本を返しにゆく雨のなか (17)
嗚呼やはり別物だね、と言うために買い求めてみる「故郷の味」 (21)
散田帽子 選
たんぽぽの綿毛を蹴散らす 腹いせはいつかどこかに花を咲かせる (8)
人間は人魚に服を着せたがる人魚はそれで溺れてしまう (10)
失われつつある世界を救ってるときの私はいつもパジャマだ 「ペルソナ4」 (25)
君の住む街は今夜も天気図の傘のマークに隠れてしまう (28)
後編に続く