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サローヤン 強盗(ヒューマン・コメディより) を読んで

みなさん、こんにちは。サローヤンの「ヒューマン・コメディ」の章にある「強盗」を読んだ感想を書いていきます。

あらすじです


舞台は第二次世界大戦のアメリカです。

日本が真珠湾攻撃をしてから太平洋戦争が始まり、南半球の島々でアメリカと日本が戦い、ヨーロッパではイギリスやアメリカとドイツ、イタリアが戦っていました。アメリカ本土は戦場になることはありませんでしたが、戦争に行った家族の訃報のニュースが多く伝えられていました。良いニュースや悪いニュースを伝えるために、電報局は日々頑張っていました。

そんな電報局で起きたある日の出来事です。

スパングラーという電報局の局長が事務所でいたとき。電報局の前の歩道をウロウロとしていました。なにやら、中の様子を窺っているようでした。

「君か」

若者がとうとう電報局へ入ってくると、スパングラーはそう言いました。若者のことを知っており、故郷の母に手紙を送った青年でした。その際に、若者あてにお金が届けられていたので、それをわざわざ返しにきたのかと思っていました。

「君は優しい人だ。わざわざ返しにこなくてもいいのに」

「残念だが、そうではない」

若者がそう言うと、全身を震わせながらポケットから拳銃を取り出します。

「命が欲しかったら、ここにあるお金をすべてよこせ」

若者は悪酔いしており、頭に血がのぼっている状態で興奮していました。今は、あちこちで殺人や強盗などが頻繫に起こっている。だから、自分が誰かを殺しても、殺されても、構わない。とスパングラーに向かって言います。

「そうか。では、持っていくがいい」

スパングラーは冷静な態度でレジの中から売上金を出し、カウンターの上に置きました。

「君が怖いからではないよ。君が困っているからだ。このお金を持って故郷に帰りなさい」

若者はスパングラーの対応に戸惑い、お金に手を伸ばそうとしましたが、触れようとしませんでした。スパングラーは故郷の母へ贈り物として受け取ってほしい。といい、銃を捨てるように説得します。

「もういっそ、自殺したほうがいいのだろうか」

「なぜそんなことを言う。いいから受け取りなさい」

スパングラーは若者が銃を置くと同時に、お金を彼の前へ置きます。若者は膝を崩し、涙を浮かべます。

「すいません。僕は、お金などそんなものいりません。強盗をしたのも、そのためではありません」

若者は自分の過去について語っていきます。

将来に不安を感じ、仕事についてもクビになり、相手に迷惑かけてばかりでした。軍人になってアメリカのために戦い、死ぬことも考えましたが、肺に問題があったので軍人にもなれませんでした。肺の病気も進行し、お金がないため、医者にも行けませんでした。

そして、世の中は戦争真っ最中で暗いニュースばかりで、あちこちで強盗や殺人が起き、自分ことばかり考えている連中が多くいることにうんざりしていました。

「もし、あなたが逃げたり、冷たい態度で僕を見ていたら、撃っていました。しかし、あなたは違った。僕のことを親切にしてくれたうえ、お酒まで頂いた。あなたとは初対面に近いのに」

若者は感激のあまり、涙を流しながら続けます。

「僕は、今はっきり分かりました。この世の中に1人でも善良な人間がいれば、世の中捨てたもんじゃないと。だって、ろくでなしの僕を損得抜きで関わってくれた。それが、ただ純粋に嬉しかったんです」

若者はそう言うと、スパングラーに深くおじきをし、お金を貰わず、電報局を出て行きました。

若者が出ていった後、スパングラーは彼の持っていた銃の弾を捨てます、そして、若者が母に送った手紙を取り出し、大事そうに眺めるのでした。


感想です


この物語に出てくる若者のように、貧富の格差やコンプレックス、病気などといったものに悩まされ、ひねくれたものになってしまう可能性は誰でもあると思います。しかし、環境や誰かの出会いなどによって、ひねくれた心や身体を回復することだってあります。

若者が心の優しい気持ちを持っており、一時的な歪みによって引き起こされているものだ。とスパングラーはそう判断し、損得なしで彼と関わることができたから、若者が加害者にならなくて済んだと思います。

スパングラーのように

寛容な心を持つことで誰かを助け、その助けられた誰かがいつか、自分と同じ立場になった人を助ける。

そういった連鎖が生まれると、ひねくれた人が少しでも減っていくのかもしれません。

私も病気などによって、ひねくれた心が続いていた時期がありましたが、色んな人の出会いや文学の出会いによって、少しずつ心が回復していきました。

何事も時間はかかりますが、諦めずに前に進み、感謝する心を忘れないようにしてきましょう。

自分の闘病生活について、少し触れた記事があるので、良ければ一読ください。

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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