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"The LEPLI" ARCHIVE 134/『追記-桑沢デザイン研究所合同ゼミ+もう少し、プロ的な視点。』

文責/平川武治;
初稿/ 平成27年5月;
写真/ フンベルトワッサー作/クンストハウス-ヴィエナ-2014年10月06日:By Taque.
 
 今回のテーマは、
「もう少し、ファッションプロ的なる”時代へのまなざし”を付記しておきましょう。」 

「プロローグとして、」
 昨年は僕は「新らたなローカリズム」を考え、デザインの世界が今後、どのような新たな可能性を持っているか?あるとしたらそれはどのような根幹が必要なのかを学んでいました。
 一つは、昨年来からの「政治」を読むこと、知ることそして、政治を感じた場合、
どのように自分たちのこれからの國や社会へ向けてのなすべき行為が可能か?
僕たちの國に、豊かさと強さを増して行くために、「どのように若い人たちは社会へコミット
して行く可能性があるのか? ”自己満足”という閉塞感な世界へ逃げ込まずに!」
 この眼差しは、ファッションのみばかりではなく、”デザインの世界”においての今後の、
若い世代が持つべき、”デザインする事とは”の新たな根幹と”視点”であろうと考えています。

「近代デザインはどの様にアメリカ合衆国を富める国家にしたか?」
 ここでは、もう一度「近代デザイン」が誕生し、具体的に当時の社会にどの様にコミット
し始めた時代へワープしてみる必要があります。
 理由は、この「近代デザイン」が'30年代のアメリカ合衆国の当時の実産業に参画し、
デザイン力によって「国力」を発展させた時代だった事実をもう一度、学んでほしいと
感じ始めたからです。
 「デザインがどの様に社会を良くするか?」その結果、デザイン力で経済にどの様に寄与できるか? という視点が今、現在の時代に再び必要だと感じるからです。

 ファッションの”トレンド”も一昨シーズンから”’30年代”が来ています。
今シーズンでは、あのS.メンケスが「流線型/streamline」という言葉を使い始めています。
ここにはその時代が願望する新しさとしての”合理化や能率的や簡素化そしてスピード化”などが時代のボキャブラリィーとして込められていたのです。
 参考/ 「流線形シンドローム 速度と身体の大衆文化史」:原 克著。紀伊國屋書店発行/2008年2月15日刊。 
 
「ラグジュアリーブランドが再び、日本をビジネスの本拠地にし始める。」 
 東京の街の様が昨年秋頃より、様変わり始めましたね。
また、ラグジュアリィー系ブランドのブティックが我が物顔をし始めました。  
’70年、プレタポルテシステムが誕生して以来、’90年代終わりまでは、「プレタポルテ・
ファッションデザイナー」たちがその自由な才能を武器にクチュリェたちを脅かすまでの
主役の時代であった。
彼ら、才能と才気豊かなプレタポルテデザイナーたちの創造性に影響を受け
日本のファッション産業は成長を遂げてきた。
 ’90年の湾岸戦争以後事実、クチュールの顧客が減って、”ラグジュアリィー-ビジネス”と
いう新たな括りで”ハイ・モードのマーク・ビジネス”の新しさをミラノの老舗*GUCCI"が
YSLのアシスタントを10年経験した”トム・フォードをディレクターにビジネスを仕掛けた。
 しかし、流行の新しさを生み出すのはまだ、プレタポルテデザイナーたちだった
この時代では、グローバリズムの到来と女性の生き方が家庭へ戻り始めたこと
そして、”ファウストファッション”の登場で新たな局面を迎えた。
 ここには、”世界観と女性のポスト・ジェンダー化と価格破壊”という”新しい波”が押し寄せ
以後、時代性そのものが変革した。これによって、まともにこの新しい波を被り被ったのは
資本力の弱いプレタポルテデザイナーたちであった。
 一方、資本力が安定している”ラグジュアリィー-マークビジネス”は服を売り、コスメや靴
バッグを売り、ジュエリィと最近では時計を商い品目として、日本へ上陸。
その後、2000年以降は総てのメゾンが、新しいマーケットとしての中国へそのビジネスの可能性を求めて方向転換した。
 そして、約10年が過ぎた昨年来、かれらたち、”ラグジュアリィー-マークビジネス”の
商人たちは中国マーケットへの限界を知り始めた。
同じアジア人でも、日本人と中国人のマーケットモラルが違うことを知った彼らたち。
 ここで、昨年秋以降再び、”ラグジュアリィー-マークビジネス”の商人たちは日本へその
矛先を転換し直した。ここに来ての、表参道界隈の”ラグジュアリィー-マークビジネス”
ブチックの乱立はこの証拠である。

「”ラグジュアリィー-マークビジネス”のU-ターン現象の根幹は、」
 かつての手法、日本にブチックを作り、中国人たち観光客顧客を煽る処方である。
例えば、昨年末に東京で行われた、DIORのショーと展覧会がこの”ラグジュアリィー-マーク
ビジネス”の新たなビジネス展開の手の内を見せた。
ショーには中国からの上顧客と中国ジャーナリストを招待。
展覧会ではデザイナーではなく、ディレクタ-RAF君とそれを助ける白衣を着た”アトリエ”の”チーム・クチュリエ”たちが主役という新たな構造を自己宣伝した代物でしかなかった。
 これによって、”デザイナー”よりも、”F.ディレクター”へ、という構造が生まれた。
”VARIATIONS OF THE ARCHIVES”で価値ある多くのアーカイブを持っているメゾン系が
今後の時代のモードリーダーとなり、そのメゾン内で実際に働きてた”アトリエチーム”たちが
リアルビジネスのクリエーションの主役へ躍り出る。
 ここで、新たなモードビジネスは”チームワークビジネス”であることへの構造とシステムの
転換が行われ始める。この”ラグジュアリィー-マークビジネス”のU-ターン現象の根幹は
今後の東京の新しさ”カジノ・ビジネス”を目論み、新たなターゲットにまでその射程距離を
広げた陽動作戦であろう。このあらたな、日本における”カジノ・ビジネス”は今後のファッションビジネスに大きく影響を与えるであろう。

「そこで、モードビジネスが変わった。」
 ”ラグジュアリィー・マークビジネス”が中国から日本マーケットをシフトし直した根幹は、モードビジネスも大きくはインバウンドをターゲットにした”スーベニィールビジネス”であるということ。
 ”ラグジュアリィー”のイメージとクリエーションを実質ビジネスにつなげているのが、
巴里では”サンチェ系”と呼ばれているデパートをメイン顧客としたコピーブランドを結束しているアパレル勢である。日本で言えば、”カシヤマ”や”サンエー・グループ”であろう。
 ”パリ・ブランドで言えば、MAJE,SANDORをはじめに、KOOKAI,KOOPLEなどの
ブランドであり、彼らたちは確実にラグジュアリィーに負けずとリアル・ビジネスをリードし始めている。

 そして、彼らたちのもう一つの気になる動きは、パリのアパレル業界へも、サンディカ
(オートクチュールプレタポルテ組合)が大きくバックアップをし始めたことであろう。
 彼らたちへの人材育成機関として、従来はクチュールのお針子さん養成学校であった
この組合付属の学校、”Ecole de Chambre Syndicale”を”サンチェ”に隣接移動し授業内容もミシンを使ってのアパレル向けカリュキラムへ変更。
 そして、サンチェ系出身のプレタポルテデザイナーメゾンのコレクション参加も大いに
その門を広げた。これらの方針は確実に、”ファストファッション”へのビジネスプロテクトであり自国のファッション産業の経済効果を拡大するための手段である。

 もう一つは、やはり、日本よりも遅れていた”ITファッションビジネス”の進化であろう。
プレタポルテデザイナーのネット通販ビジネスへの参入、”NET-A-POTER"やイタリアン・
ヴォーグ社の“the corner.co.”とYOOXとのコラボビジネスも始まる。
 あのH&Mが始めた”ファスト・ファッション”のシニア版ブランド”COS”が好調である。
このブランドのマーケティング戦略はうまい。例えば、”COS”の戦略は同じ、スエーデン発のプレタポルテブランド”ACNE”をターゲットに絞り込んだ戦略で40代ターゲットを軸に
クオリティもそれなりのデイリィーウエアーにまとめ、抑えられた価格帯とともに見事に
成功している。”COS”東京も昨年11月に1号店が登場。
 今後、このゾーンが激戦になだろう、”ラグジュアリー”から”プレタポルテ”や”サンチェ系”
が影響を受け、ファスト・ファッションの”COS”で下限を囲われてしまっているのが
今の巴里のファッションビジネスの現実である

 「最後に、もう一つ、このモードビジネスがグローバル化した証拠。」
 面白い現象は、今まではフランスでモードの仕事をするには、当然のように”フランス語”が
必要であったが、今では、この”フランス語”よりも”英語”が本格的なビジネス語となり始める
フランスのファッション企業の営業やプレス関係で働くためには英語で面接されるところも
出てきた。ここにも、ITビジネス化の余波を感じる。
 しかし、アトリエでは変わらず、フランス語であるが、重要な仕事をする人たちは
イタリア語が話せないとその立場が与えられない。この現実は、アトリエの仕事のメインは、ほとんど”素材と工場関係”が変わらずイタリアがメインテリトリーであるからだ。

「最後に、目立つ問題点、」
 このような時代性になるとアーカイヴからコレクションを作る場合、今の若いデザイナー
たちにはその持ち得た”リアリテ”がない。殆どが、サイトやブログそれにインスタ等の
”ヴァーチュアルリアリティ”の世界でモードにも関わってしまっているからだ。
 そのため、フラットな平面性、ヴィジュアルからのデザインになる。
故に、”分量”のデザインが出来にくい或いは、出来ない。
表層のシルエットのコピーは出来るが、今の”時代の分量感”に置き換える
”ニュアンスのデザイン”ができないデザイナーと、パターン力の低下が目立つ。
 これらの”新世代デザイナーの欠点”を自覚し、これを改め学ぶ方法は、やはり、
「教養を深め、歴史と学ぶ、古着を触る、古い映画を見る、そして、自分の育ちを省みる。」
そして、「熟練者の仕事を敬い学び、オープンマインドであること」等と、”人間性とスキル”。
 案外、大いなる勘違いが多いのは、”ファッション学歴振り回し族”たちは
この”ディシプリン”がない。特に、日本においての彼らたちは”勘違い”が甚だしい。
彼らたちの今後はもう、見えてしまっている。

「トレンドについて考えると、」
 ここ数年来トレンドのキーワードは変わっていないと読める。
トレンドの根幹は不変であり、その”意味付け”だけが変化させているということである。  
[メイントレンド+サブトレンド+ホロ-トレンド=新規トレンド+継続トレンド-1
+継続トレンド-2,,,]と、”新規トレンド”が出にくくなった分、2,3シーズンほどの
”継続トレンド”によって、”売れ線”をホロしている。
ということは、売れ残った”先シーズンのトレンド”を売り切るための「継続トレンド」でしかない。

「終わりに、”問題”はその次に起きることだ。」
 「自民党は憲法9条の改正に動き、自衛隊の海外派遣をどんどん実現化を推し進めるだろう」
安倍政権の目論見は明らかだ。日本の国の姿をかえることにある。
強かに、この国の風景を変質させていく青写真の作り手たちが蠢きはじめるだろう。
 ’20年の「東京オリンピック」や「カジノ」を可能な限り、経済効果として利用し、
この広告産業の一つを今後の歴史的契機と、安倍政権が変えようとしている國体とは、
それぞれの社会体制システムによって構築されてしまったアメリカ合衆国の属国としての
「社会」が、『再-安保改定』により、もっともらしく残るが、嘗ての日本國が持っていた
「日本人としての気骨」や「気概」ある毅然とした「國体」、「世間」は喪失してしまう。
 安倍の渡米により、アメリカへ5千億円以上の軍事産業への兵器武器類の購入があった。
安倍政権の目論見によって、彼らの論理で言えば、「何時、玉が飛んで来るか解らない自衛隊に対しての」僕たちの國家の防衛費予算の増加率は世界1位になり、'64年を基にした軍事予算の増加率は、54.5%である。
 出典/日経新聞5月09日付け、「世界はこう変わった」より、
 ここで皆さんにお願いすることは、「自分たちの国家が今後、どのような「国政」により、
どのような「国家」になるか?にはやはり、ファッション以上に関心を持ってください。」
というお願いです。

「平成の大軍拡、軍事予算の拡大化とその結果の軍事国家への参入、」
 この現実を皆さんはどれだけ、認識しているのだろうか?
解ったふりして、投票に行かず、政治のことを発言するのは一番悪い。
親の筋をかじってカッコつけているからこれでいいのか?
 「1月14日に閣議決定した平成27年度(2015年度)政府予算。そのうち防衛省予算は
前年度比2.0%増で過去最大の4兆9801億円となる。しかし、補正予算案に盛り込まれた
防衛費(2110億円)と合計すると5兆1911億円となり、「5兆円」という大台に乗る。
これは「平成の大軍拡」と言っていいだろう。」
 出典/東洋経済オンライン/2015年01月26日より抜粋。
<a href="http://toyokeizai.net/articles/-/58914">http://toyokeizai.net/articles/-/58914</a>
 
 そして、「カジノ法案」もそうであろう。これらの発案の根幹に何が蠢いているのか?
結局は「金/カネ」でしかない「世間」と「社会」の確立と肯定。結果、「より「格差社会」が「ギャンブル依存症」が増加するだけのごとく変わらず、”倫理観なく”構築されてゆく、
そのための「利権」政治。与えられた”シナリオ”を棒読みしているだけが、
今の”安倍政権”の実態である。
 これはグローバルな日本企業にも、地方自治にも言える警告である。
常に、「問題は、その次に起きることだ。」

文責/平川武治。
初稿/ 2015年5月。



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