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"The LEPLI" ARCHIVES-58/ ひらかわ式パリコレクションを論じる。 S&S2012−2/AGANOVICH, ANTHONY VACCARELLO編:

文責/平川武治:
初稿/2011年10月 3日:
 AGANOVICH*/
見えるものが”歪んで”見え始めて来たモダニズム。』
この軽さと分量の戯れは何処かで体感した。
蜃気楼なのか? デージャブなのか?
それとも、僕自身の遥かな時間への時の逆廻りなのか?
しかし、それらは嘗てのモダニズムの中での総て。
決して、昨日でもなく、明日でもない。
たとえ、そこが故宮の中庭の一角に佇んだとしても、
絵になる美しさはあるだろうが、今日ではない。
僕にとっての今日とは
今から起こりえる総ての時間の始まりでしかない。
結局、”モダニズム”とは
歪んだミラーの前に立った自分自身なのだ。
見えるものが”歪んで”見え始めて来たモダニズム。
見えなかったものに懐かしさを感じさせてくれたショー。
所々に見え隠れする”明日”と言う断片を拾い集めるだけ。

 ANTHONY VACCARELLO**/『イエールからANDAM,』
この優等生コースを歩んで来た彼の実力?
 新しさがあった。
それが空気感にまで伝わったショーだ。
健全な姿態が或は、デカダンな容姿が
先ず、必要とされる。
そこには既に、絶対的なエロスが宿っている。
そのエロスの表情を仔細に見取って
自由に注意深くコラージュした世界。
ここには、少しモダニズムを超えた位置に
彼の、このナイーフな青年の眼差しはある。
スカートはこれ以上に隠し切れない所まで
若さ故の、大胆さで切り取られている。
ボディーを覆うものは
幾つかのパターン化された布の断片により
着る女の姿態をただ、エロスに委ねる。
しかし、そのエロスは
スポーティーなディテールによって
却って、新鮮さを与える。
当然だが、これらを構築するための素材は
選ばれたものでないといけない。
ストレッチが効いた下着素材に
メタルパーツが効き目を見せる。
アップルプリントに
スワロスキーが小さく光るトップスのシルエットは
’80年代を思わす分量まである。
トレンドのコンビネゾンも旨くこの世界でこなしている。
 
”イエールからANDAM,”
このパリ-サンディカの優等生コースを歩んで来た彼を
この街のファッションピープルたちは
満足げに、自慢顔で優しく見守っていたコレクション。
彼の今後の成長はやはり、愉しみである。

 AGANOVICH*/
https://www.aganovich.com/
2005年にロンドンで立ち上げたデゥオ•ブランド。
NANAはロンドンのセントマーティン校出身、
ブルックがスタイリング担当。日本人パターンナーがアシストしている。

 ANTHONY VACCARELLO**/
https://en.wikipedia.org/wiki/Anthony_Vaccarello
2006年、ブリュッセルのラカンブル校出身。
僕も彼の卒業コレクションの審査員をした。
2007年、イェールコンテスト受賞。
この時に、K.ラガーフェールドに見出される。

この2012年のS&Sシーズンは
これからの活躍が楽しみな大型新人が登場したシーズンでもあった。

文責/平川武治。
初稿/2011年10月 3日。





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