「何か」がある文章の秘密

高橋源一郎さんの『ぼくらの文章教室』という本を読んだ。

文章教室っていうタイトルだけど、文章の技法を教える本ではない。うまい文章を書くコツのようなものが書かれているわけでもない。高橋源一郎さんが「何かある」と思った文章を取り上げ、それを読み、それについて考えるという内容だ。

いい文章には、いったい「何が」あるのだろうか。

取り上げられているのは有名な文書もあれば、全くの素人が書いたものもある。原文が外国語のものもあれば、日本語の文章として破綻しているように見えるものもある。でも、その文章には何かがあるのだ。

高橋源一郎さんはそれを感じている。だからその文章を取り上げ、その理由を掘り下げていき、そこから見えてくるものに光を当てる。それは例えば、一生で一度だけ文章を書いた老女のものだったり、初めてお金をもらう仕事をしたイタリアの少年の日記であったり、スティーブジョブスの講演であったりする。

そして高橋源一郎さん、というか「僕ら」は、ひとつの結論に達する。それは何か?……ということはここには書かないけれど、「何か」がある文章には、あることが共通しているのだ。

いい文章とは、まるで読んでいる自分のために書かれているように感じる、と高橋源一郎さんは言うけれど、まさにこの本も自分のために何かを言ってくれているような、そんな気持ちになる本だった。

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