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コットンクラブ〜ギャングが経営した伝説のナイトクラブとジャズを描くコッポラ監督作品
『コットンクラブ』(The Cotton Club/1984年)
フランシス・フォード・コッポラ監督の『コットンクラブ』(The Cotton Club/1984年)は、1920年代後半から30年代前半にかけて人気を誇った伝説のナイトクラブを舞台に、ジャズと銃弾、愛とセックスに生きる男と女の姿を描いた傑作。
1920年にアメリカで制定された禁酒法は、「スピークイージー」と呼ばれる“もぐり酒場”と、そこに絡むギャングの闇ビジネスを活気づけた。
そんな空間で、必要不可欠なエネルギーとして機能したのがジャズであり、やがて「狂騒の20年代」(Roaring Twenties)のサウンドトラックとなっていく。特に需要のある高級クラブでは、ジャズ・バンド/ダンス・バンドは持てはやされた。
1927年12月、NYのハーレムに新装オープンした「コットンクラブ」はその象徴。経営者はアイルランド系のギャング、オウニー・マドゥン。舞台に上がるのは黒人たちだが、客席に座るのは白人のセレブリティや連れられたフラッパーの女たち。“綿花畑”の名の通り、南部の黒人をテーマにした演奏やダンスが繰り広げられた。
スターも数多く生まれた。中でもクラブと専属契約を結んだデューク・エリントンは、1927〜1932年まで出演。彼とその楽団はこの5年間で絶大な名声を確立。
トランペットが叫び、クラリネットがすすり泣き、トロンボーンが咆哮する。そんな「ジャングル・サウンド」で連日連夜のように客席を沸かし、ジャズの発展にも大きな貢献した(この頃録音されたデューク・エリントン楽団の音楽は、アンソロジー盤などでまとめて聴ける)。
また、コットンクラブが生んだスターは、他にキャブ・キャロウェイ楽団などが有名。
映画は1928〜1932年を設定し、音楽とダンスの興奮、男と女の恋の行方、ギャングの争いなどをエンターテインメント化。5000万ドル(当時のレートで120億円!)という大金を使って、完璧なセット再現で魅せてくれる。
ちなみに製作者のロバート・エバンスは、「この映画は金を吸い尽くす吸血鬼だ」と嘆き、資金調達に苦しんだ。
遂にはLAのコカイン密輸に関係する未亡人に、スポンサー探しを依頼。ようやく見つけたスポンサーが何者かに殺され、死体となって発見。疑惑はエバンスにも掛けられ、潔白は証明されたものの、「次に殺されるのは俺かもしれない」と、しばらく姿を消したというエピソードもある。
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主演はリチャード・ギア。ビックス・バイダーベックやジョージ・ラフトをモデルにしたディキシー・ドワイヤー役を演じた。
当初はシルヴェスター・スタローンに話が持ち込まれたそうだが、自らコルネット
演奏するギアの演技を観ていると、このキャスティングは成功だった。
ヒロインには、コッポラ作品の常連だったダイアン・レイン。彼女に言わせると、「監督はディテールの天才よね。徹底した完全主義者で、カメラに映らないところまで全部計算に入れているの」。
物語では、二つの恋が描かれる。一つはギャングのボスであるダッチ(ジェームズ・レマー)に気に入られたコルネット奏者ディキシー(リチャード・ギア)と、ダッチの愛人で自分のクラブを持つという野心に燃えるベラ(ダイアン・レイン)。
そしてもう一つは、コットンクラブのタップダンサーのサンドマン(グレゴリー・ハインズ)と、歌手のライラ(ロネット・マッキー)。
ダッチに雇われることに嫌気がさしたディキシーは、暗黒街のボスでコットンクラブのオーナーであるオウニー・マドゥン(ボブ・ホスキンス)の口利きで、ハリウッドのギャング映画でスターとなる。
そして時は大恐慌時代へ。コットンクラブは相変わらず賑わっているが、ギャング同士の抗争が激しくなる中、問題ばかり起こすダッチが射殺される。ディキシーは自由になったベラをハリウッドへ誘うのだが……。
黒人カップルのロマンスやグレゴリー・ハインズのタップダンスは、この映画のもう一つの見どころ。また、クラブのマネージャー役でトム・ウェイツが登場したり、コッポラの甥っ子で若かりし頃のニコラス・ケイジも出演。その他のキャスティングの豪華さにも注目だ。
文/中野充浩
*参考・引用/『コットンクラブ』パンフレット
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