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カジノ〜絶対に損はしない“帝国のルール”を築き上げた男と女たちの運命

『カジノ』(Casino/1995年)

1990年の『グッドフェローズ』の成功で、手応えを感じたマーティン・スコセッシ監督。

再びノンフィクション作家のニコラス・ピレッジと脚本に取り組み、ロバート・デ・ニーロとジョー・ぺシをキャスティング。舞台を1970年代のラスベガスに変え、続編的なムードを漂わす『カジノ』(Casino/1995年)を撮影した。

今でこそラスベガスのカジノは大資本が投下され、徹底したビジネス・マニュアルが行き届き、年間数千万人もの観光客が訪れる家族向けの健全なエンターテインメント・リゾートの位置付けを確立しているが、1970年代前半は、まだまだ裏でマフィアが仕切り、眩しいネオンの陰で怪しげな色気と体臭が充満するような、如何わしい場所だった。

だからこそ、スコセッシは映画化の価値を嗅ぎ取り、食いついたのだ。観光客に用はない。面白いのは、裏金や既得権を好き勝手に操るどうしようもない奴ら。

そこは、色情、友情、犯罪、裏切りが渦巻く世界でもある。マフィア、政治家、金融屋、富豪、娼婦、詐欺師、イカサマ師、そして虎視眈々と組織壊滅を狙うFBI。

カジノの経営は、警備のない銀行で強盗をやるようなもんさ。ラスベガスは、罪を洗い流してくれるモラルの洗車のようなものだね。

『カジノ』パンフレットより
日本公開時の映画チラシ

『カジノ』では、帝国のルールを築いた実在した人物がモデルとなっている。

ロバート・デ・ニーロが演じる元締めサム・“エース”・ロススティーンは、フランク・"レフティ"・ローゼンタール。ジョー・ぺシが演じるヤクザ者ニコラス・“ニッキー”・サントロは、アンソニー・"トニー"・スピロトロ。シャロン・ストーン演じるビッチ妻ジンジャー・マッケンナは、ジェリー・マクギーといったように、すべての役がリアルだ。

また、スコセッシ映画と言えば、サウンドトラックの充実も避けて通れない。今回は何と61曲が選曲され、3時間ほぼ流れっぱなしという怒涛のような展開。担当したのはロビー・ロバートソン。ザ・バンドの楽曲を一切選曲していないのがまたいい。

ロック勢からは、ローリング・ストーンズ、クリーム、ジェフ・ベック、フリートウッド・マック、ロキシー・ミュージック、ディーヴォなど。

トラディショナル・ポップからは、トニー・ベネット、ディーン・マーチン、サミー・デイヴィス・ジュニア、レス・ポール、そしてホーギー・カーマイケル。

ブルーズ/R&B勢からは、マディ・ウォーターズ、B.B.キング、ダイナ・ワシントン、レイ・チャールズ、オーティス・レディング、リトル・リチャード。

その他では、バッハ、ルイ・プリマ、エミルー・ハリスと、まさにカオス状態。

1973年。マフィアのボスたちの息のかかったトラック運転手組合の会長アンディ・ストーンは、フィリップ・グリーンに6275万ドルを融資してカジノを買収させる。

そこで、やり手のエース(ロバート・デ・ニーロ)に元締めとしての白羽の矢が立つ。冷静沈着なエースは賭博のシステムや技術に精通しており、任された4つのカジノは大繁盛。裏金でボスたちを確実に儲けさせて信頼を勝ち得る。

エースには用心棒的存在の幼馴染のニッキー(ジョー・ペシ)がいる。最初は助言に従っているかのように見えたニッキーだが、持ち前のデンジャラスさで独自のネットワークを築いて力を拡大。人殺しなど日常で手の付けのようがない彼の存在は、やがてエースの悩みの種となる。

そんなエースにとって最大のギャンブルが、金や宝石にしか目がないビッチのジンジャー(シャロン・ストーン)との結婚だった。ジンジャーには昔からのヒモの男(ジェームズ・ウッズ)がいたのだ。

次第にエース、ニッキー、ジンジャー3人の運命は星屑のように絡み合いながら、意外な方向へと流れていく。やりたい放題の彼らに、FBIもマフィアも黙っていなかった……。

さて、日本のカジノやIRはどこまでやるのか。

文/中野充浩

参考/『カジノ』パンフレット

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