ウェインズ・ワールド〜みうらじゅんも思わず宣伝部長を買って出た“ヒップなお馬鹿”映画
『ウェインズ・ワールド』(WAYNE’S WORLD/1992年)
ダン・エイクロイドとジョン・ベルーシの二人旅がきっかけで生まれた偉大なるバンド=ブルース・ブラザース。そんな彼らを生んだ人気バラエティ番組『サタデー・ナイト・ライブ』(以下SNL)から、1989年に再びエクセレントな二人組が誕生した。
楽天家のウェインに扮するのは、カナダ出身のマイク・マイヤーズ。そして小心者でロマンチストなガースに扮するのは、物真似の天才ダナ・カーヴィー。
というだけでも、エイクロイドとベルーシを彷彿とさせてくれるコンビだが、マイクは1989年より、ダナは1986年よりSNLのレギュラーとして活躍。
ウェインの自宅の地下室をスタジオにした、CATV向けのほとんど海賊放送という設定(現在のYouTuberのようなもの)で、ロックとパーティが大好きな二人がホストになって毎回ゲストを招き(エアロスミスやマドンナも出演)、タイムリーな話題をギャグにする5分間の寸劇トーク『ウェインズ・ワールド』は、たちまち看板コーナーとなった。
これをさらに膨らませたのが、映画『ウェインズ・ワールド』(WAYNE’S WORLD/1992年)で、SNLから飛び出したキャラクターが映画化されるのは、やはり『ブルース・ブラザース』以来12年ぶりのことだった。製作はSNLの生みの親ローン・マイケルズ。ちなみに、ウェインが口にする「エクセレント!」は全米で流行語にもなった。
ストーリーは、彼らを利用して一儲けを企むTV局のプロデューサー(ロブ・ロウ)への仕返しや、ウェインが恋するジョーン・ジェットばりのロック美女(ティア・カレル)との恋を軸に進められていく。
だが正直なところ、内容そのものはどうでもよく、ロックでパーティーな世界観とエクセレントなギャグの数々を、どれだけ楽しめるかが重要な映画だ。
クイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」を仲間たちと車の中で口ずさむシーンは、この曲を全米2位のリヴァイヴァル・ヒットへと押し上げた。
また、本人役でアリス・クーパーがライブを披露し、ミートローフもカメオ出演。楽器屋での「天国への階段」禁止令なんて、ギターを買いに行ったことがある人なら思わずニヤついてしまうだろう。
結果、本国アメリカでは大ヒット。すぐに1億ドル以上の興行収入をたたき出した。
しかし当時、日本が誇るヒップスター・みうらじゅん氏が、この“ヒップなお馬鹿”映画の私設宣伝部長を買って出て、メディア出演の度に「エクセレント!」を連発したにも関わらず、日本では彼らのセンスやジョークがまったく理解されずに不発に終わる。
翌年の続編に至っては、配給すらされない始末だった。ヒップな馬鹿とスクエアな馬鹿。前者の美学やクールさが通じなかったことは残念でたまらない。
なお、2018年末に大ヒットした映画『ボヘミアン・ラプソディ』に、マイク・マイヤーズがクイーンが所属するレコード会社の社長役で出演。同曲を聴いて、「若い子たちが車でヴォリュームを上げて、頭を振れるような曲じゃない」と言って、却下するシーンがあって笑える。
文/中野充浩
参考/『ウェインズ・ワールド』パンフレット
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