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愛と栄光への日々〜バンドと音楽への愛に満ち溢れたジョーン・ジェット主演作

『愛と栄光への日々』(Light Of Day/1987年)

マーティン・スコセッシ監督、ロバート・デ・ニーロ主演の伝説的作品『タクシー・ドライバー』の脚本を書いたポール・シュレイダーは、その後監督業に進出した。

そして『アメリカン・ジゴロ』『キャット・ピープル』などを手掛ける中、1981年には新しい脚本を書き上げた。タイトルは『Born in The U.S.A.』。

シュレイダーはこの映画のためのサウンドトラックを、ブルース・スプリングスティーンに依頼するため脚本を送る。これを読んだスプリングスティーンは、テーマにもストーリーにも感動して快諾。

しかし、不運にも様々な問題が生じてしまい、映画製作は頓挫。結果、タイトルだけが生きることになり、1984年にあの歴史的なベストセラー・アルバム『Born in The U.S.A.』が誕生。クレジットには「ポール・シュレイダーに感謝を込めて」と刻まれた。

一方のシュレイダーは、諦めずに映画製作を再開。今度はスプリングスティーンが主題歌をプレゼントする。その「Light Of Day」は映画のタイトルになり、1987年に公開されることになった。

日本公開時の映画チラシ

『愛と栄光への日々』(Light Of Day/1987年)の主演は、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で、チャック・ベリーの「ジョニー・B・グッド」をダックウォークしながら弾いて、R&Rの歴史に貢献したマイケル・J・フォックス。

そして、ランナウェイズでガールズバンドの伝説を作り、脱退後に自前レーベルから「I Love Rock ‘n’ Roll」で全米ナンバーワン・ヒットを放った、ロック界永遠の姐御ジョーン・ジェット。

二人は映画のために実際にバンドを組み、意気投合。吹き替えなしで映画中の音楽を演奏した。撮影2ヶ月前から練習に励み、シカゴのバーに覆面バンドとして登場。「オハイオから来たバーバスターズ」とだけ紹介されただけなので、観客たちは歓喜に包まれたという。

マイケル・J・フォックスは、本作で自作曲も披露。ジョーンはもちろん映画初出演。だが、見事な演技力で映画の完成に一役買った。二人の母親役には名女優ジーナ・ローランズ(2024年8月死去)。こちらも映画に大きな深みを与えている。

アメリカでは大ヒットこそしなかったものの、80年代を強烈に感じる佳作として評価されるべきだし、ロックファンなら決して記憶から葬ってはいけない、音楽愛に満ち溢れた作品だ。

物語の舞台はオハイオ州クリーヴランドの工場地帯。ジョー(マイケル・J・フォックス)は工場で働きながら、姉のパティ(ジョーン・ジェット)のバンド「バーバスターズ」でギターを担当している。

町の酒場では人気上昇中で、二人は明日のロックスターを夢見て、未婚の母でもあるパティの子供と三人暮らし。厳格な母(ジーナ・ローランズ)は、反抗的で母親の役目を果たそうとしないパティを家族の厄介者にしている。母と娘の関係は離れるばかりで最悪だった。

家財道具を売り払い、バンを買い込んで巡業の旅に出る「バーバスターズ」。しかし物事はうまく運ばず、メンバーたちの心は一つにならず、パティは子供をジョーに預けたまま、売れ線のヘヴィメタル・バンドに加入してしまう。

そんな時、二人の母親が末期のガンであることが判明。死を直前にして、家族の絆は戻るのだろうか………。

ジョーン・ジェットがいるだけで、ステージのシーンは圧巻。1986年にリリースしたアルバム『Good Music』から「This Means War」が披露されるだけでなく、ラストシーンではブルース・スプリングスティーンの「Light Of Day」をプレイ。

映画の後は、今もロックし続ける姐御ジョーンの歌が、もっと聴きくたくなるはずだ。

文/中野充浩

参考/『愛と栄光への日々』パンフレット

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