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ブルース・ブラザース〜33歳で逝った伝説のジョン・ベルーシ

『ブルース・ブラザース』(THE BLUES BROTHERS/1980年)

音楽を愛する人なら必見!という映画があるが、中でも『ブルース・ブラザース』(THE BLUES BROTHERS/1980年)はその筆頭ではないだろうか。今更、解説不要なくらい“マスト”な作品だが、その魅力を改めて振り返ろう。

1975年10月にスタートしたTVバラエティ『サタデー・ナイト・ライブ』に、レギュラー出演していたジョン・ベルーシとダン・エイクロイド。

二人がフロントマンとして立つブルース・ブラザースは、番組のファーストシーズン終了後の1976年夏の一つの旅をきっかけに、エイクロイドが違法経営するバーで発案され、メンバー集めを経て1978年に番組の1コーナーとして開花した(誕生秘話はこちらから)。

その後、ベルーシが主演した映画『アニマル・ハウス』が大ヒット。ブルース・ブラザースは実際にバンドとしてもステージをこなし、1978年11月にリリースされたファースト・アルバム『Briefcase Full of Blues』が翌年早々全米1位に輝く。

ディスコ全盛期にあって突如ブルースが復活したのだ。それくらい彼らの影響力と人気は高まっていた。映画化の話はハリウッドの重役との電話1本で決まったという。

300ペーシにも及んだ脚本はエイクロイドが担当。撮影は1979年8月からスタートしたものの、ベルーシの重度のドラッグ常用が災いして、スケジュールも予算もオーバーしてしまう。

シカゴ市とイリノイ州の好意的な協力の反面、監督のジョン・ランディスは、ベルーシとの撮影には疲労困憊したらしいが、それでもベルーシのカリスマ性は疑いようもなかった。エイクロイドはこのトラブルまみれのパートナーを擁護し続けた。

当時、ローリング・ストーンズのキース・リチャーズとも親交のあったベルーシだが、キースもこの男に魅せられた一人だった。

クレイジーな奴らとさんざん付き合ってきた俺の基準で測っても、ベルーシと過ごした時間は特別な体験だったよ。(キース・リチャーズ)

キース・リチャーズ自伝『ライフ』より
日本公開時の映画チラシ

伝説のコメディアン、ジョン・ベルーシ扮する、ジョリエット・ジェイク・ブルース。そしてベルーシのパートナーであるダン・エイクロイド扮する、エルウッド・ブルース。人呼んでTHE BLUES BROTHERS!!

映画は出所してくるジェイクを、エルウッドが中古で手に入れたパトカー“ブルース・モービル”を従えて、刑務所前で出迎えるシーンから始まる。

二人が育った孤児院が資金難で、5000ドルの税金が払えず差し押さえの運命にあることを知ると、出向いた教会で導きの光を見るジェイク。「バンドだ! バンドしかねえ!」

二人は神の使徒となって、解散状態の自分たちのバンド=ブルース・ブラザース・バンドの再編成に乗り出すべく、次々と昔のメンバーのもとへ。

警官、謎の女、右翼団体、カントリーバンドらを巻き込んでのドタバタ劇が繰り広げられる中、バンドは遂に大金が稼げるコンサートを開催。そして5000ドルを手にシカゴの税務署へ急ぐ二人。しかし、彼らを待ち受けていたのは!?

ジェームス・ブラウン、アレサ・フランクリン、レイ・チャールズ、キャブ・キャロウェイ、ジョン・リー・フッカーといった、ブルース/R&B界のビッグネームたちの出演も話題になった。さらにスピルバーグ監督やモデルのツィッギーの出番もある。

また、ブッカー・T&ザ・MG’sのスティーヴ・クロッパーやドナルド・ダック・ダンなど“本物”のメンツがバンドを編成。ウィルソン・ピケットに捧げる「Everybody Needs Somebody To Love」、マジック・サムに捧げる「Sweet Home Chicago」など、サントラ盤は映画の興奮が刻まれた忘れ得ぬ名盤となった。

歌と踊り、笑いとアクション(カーチェイス!)といった要素が詰まっているだけでなく、映画全編に魂の救済と音楽への愛が貫かれていることに何よりも心が打たれる。

黒い帽子に黒いサングラス、黒いネクタイに黒いスーツという二人のファッションも視覚的に忘れられるはずもなく、その後の『マトリックス』や『メン・イン・ブラック』など、数多くの映画がオマージュしていることでも有名。

1950年代のジャズマンやブルースマンは、警察に目をつけられることが多かったので、あえてビジネスマンのような装いをしていた。ジョン・リー・フッカーがモデルだ。

そして映画では二人はサングラスを掛けっぱなしで、最後の最後になってベルーシが一瞬だけ取るのが泣ける。

1982年3月5日、ジョン・ベルーシはドラッグの過剰摂取が原因で、ホテルの一室で死亡。享年33。

死ぬ間際まで、自ら出演する映画の企画に取り組んでいたという。1998年に続編『ブルース・ブラザース2000』が公開されたが、“ジェイク”が生きていたらどんな映画になっていたことだろう。

文/中野充浩

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