【テレビADを志望する方へ】テレビ業界からドロップアウトした男から、テレビ業界を志す方へ伝えたいこと #2 大学1,2年生の経験
どうも、こんにちは。前回、嬉しいことに数名の方には読んでいただけたようなので、せっかくならと続きを書くことにしました。書いてみるものですね。
前回を振り返ると、勘違いをして理想の人生のレールから外れてしまったきっかけ、高校生の頃も含めて、学生時代のことをざっくりと、だいぶ大まかに書かせていただきました。(#1参照)
今回は、社会の大海原へと出る直前、大学時代のことをなるべく細かくお話します。
自信に満ちた自分から、変な違和感を覚え始めた時期です。
テレビの煌びやかな世界を夢見る学生さん、その他身近にそういった方がいる方はぜひ読んでいってください。きっと、もう一度将来を見つめ直すきっかけにしていただけると思います。
※決してテレビのアンチではございません。好きな番組はいくつもありますし、今も楽しんで視聴しています。自分がやってた番組以外は。
【大学1年】 他者より先をゆく優越感と安堵感
2015年の春、僕は都内の大学に進みました。#1でも書きましたが、高校時代にテレビ業界に進むことを夢見ていたので、学科はテレビ制作について学べるメディア系の学科です。
その大学は、収録スタジオがあったり、山ほどiMacがあって自由に使えたりと、クリエイティブな仕事を目指すには最適な環境でした。
実際、入学して早々、Adobe premiereやFinal cut pro、ediusなど、現在もテレビのスタッフたちが使うノンリニア編集ソフトが使えたので、それはもうテンションが上がったのを覚えています。
遊びで空きコマに適当な動画を編集していると、これがまた楽しいんです。この間友達と行った旅行の動画、好きなサッカー選手のプレー集、オシャレさだけを追求したなんの意味もない動画...
これだけ楽しいならばやはり自分はテレビが向いている。そう結論づけ、そこまでテレビ業界について深く調べたり、先輩を伝って話を聞くなどを全くしませんでした。ただただ「編集ソフトに触っている時間が楽しい」だけでは、この先待ち受ける地獄で生き抜くだけの材料にはなりません。
そもそもテレビの作り方として、premiereやfinal cutだけでなんとかしているわけではないですし、テレビ業界ではこんなことは常識どころの話ではありません。つまり、そんなことすら知らなかったのです。
編集に関する補足
※民放などの大きなテレビ番組は、番組予算や規模にもよりますが、基本的にオフライン編集→オンライン編集という分業制で、一般的にテレビで目にするド派手なテロップ、加工などはオンライン編集でいれています。オフライン編集というのが我々制作の請け負う部分であり、主にpremiereやfinal cutで行う映像、音声を並べる作業が主体です。オンライン編集は、先ほども申し上げた通り、テロップを派手にデザインしたりCGをはめ込んだり、放送クオリティを上げる作業と、放送法、番組のフォーマットに合うようになど、ルールに反しないように制作する工程です。このオンライン編集を行うのは、制作ではなく編集所のオペレーター(いわゆる編集マン)さんです。指示は出しますが。
上記の補足から察した方もいらっしゃるかもしれませんが、つまり我々制作ADは、どの画を使ってどの音を生かして、を選んでいくだけです。僕が大学のPCで楽しんでやっていたことは、いわばオンライン編集寄りの遊び。
つまり当時の私は、ただの無利益YouTuberでしかなかったのです。"映像"と広く括って、実に短絡的にテレビに結びつけてしまっていました。
まあ、大方の大人は大学1年生なんてまだまだ10代だし、将来について考えてる方が稀、そう考えるかもしれません。
しかし残念なことに僕の性格上、変に物事を達観する瞬間があり、だからこそ自分が将来の業界を絞っているのが「周りよりも数歩先を歩んでいる」という勘違いを起こさせ、他の道を探さないきっかけになってしまいました。
さあ、次の項からはいよいよ本格的に自分の将来が淀んできます。
【大学2年】 他者から制作を指示され感じた違和感。それこそが「テレビ番組を作る」仕事
大学2年生になって、この頃からある変化が生まれ始めます。
大学の指導カリキュラムの一環で、自分のやりたいメディアを選択して、そのジャンルについて深く勉強する授業が増えていったのが大学2年生の頃なのです。
僕は当然、放送のジャンルを選択。
放送の授業では、カメラの使い方、premiereでの編集の仕方など、今思うとだいぶ初歩的な内容でしたが、かなり業界の働き方に近しい勉強ができていたと思います。
そんなある時、授業の課題として、「自分の大切なものを映像で表現して作ってください」という演習課題が出ました。それがたしか、授業の中で初めての課題だったでしょうか。この課題制作中に初めて、自分の中で生まれていた将来への自信にブレが生じたのを今でも覚えています。
「やりたくない」
他人から与えられたテーマにどれだけふさわしい映像を作り、映像やナレーションを通して制作の意図を伝えれるか。これが問われた課題だったと思いますが、僕の心の中で「やりたくない」という気持ちがすごい勢いで押し寄せてきているのがわかりました。
別に普通じゃないか?なんでわざわざこの話をしたの?
そう思う方に向け、時系列を少し飛ばして、実際に制作会社で働き始めてわかったことのお話をします。
まず、そもそもテレビというのは制作会社レベルでは、よほどでない限り自分のやりたいことを実現させられません。
局の社員になって地位的に高い位置に登りつめるか、制作会社でも生きるので精一杯なほどに忙しい中企画提出をして通るなりしないと、ほとんど自分の意思が何かの作品になることなどあり得ません。
こと制作会社勤務に焦点を当てれば、自分がディレクターになろうとも、結局は受注する側とされる側の主従関係にある局の人間には抗えない。自分はAが面白いと思って考えに考え抜いた企画を提案しても、局の人の「Bで」という一言で、自分が一生懸命考えた案は海の藻屑。
つまり、テレビの制作会社に入るということは、他人の作りたいものを作るということなのです。
ここで学生時代の課題のお話に戻すと、僕はまだ、テレビ業界の構造、制作会社とは何たるか?を知れていませんでした。
だからこそ、あの課題制作の時「やりたくない」と思った自分がテレビには不向きだったことに気付けませんでした。
もし、この当時の私と同じ境遇にいる学生さんがいらっしゃったら言っておきたい。まして制作会社に入ろうとしているなら、テレビ局という日本有数の大企業から次のように指示され、言い返せる立場すら与えられずに淡々と仕事をすると思ってください。
某キー局「こういう企画やるよ。細かなリサーチとかはそちらの仕事だからよろしくね。構成は◯月×日に見せてね。時間ないから急ぎでよろしく。」
制作会社「承知しました。」
※実際はもう少し仲良しですが、わかりやすい語り口にしてます。が、関係性を表す会話としては結局これで、構図はこうです。
この構図が、制作会社勤務でいる限り続きます。
自分で0から何かを生み出すことはありません。
何が言いたいか。本当に自分のやりたいことをやって、世間に認められるかどうかを試したいのならば、それが叶うのはテレビ業界ではありません。
近年、SNSなどで、人気番組を持っている名前の知れた局のPや演出家が自由にやれているように見えるのは、それは局の人間だからです。
僕は卑屈で偏屈なところがあるので、だいぶ穿った見方をしてしまったかもしれませんが、業界のADさんたちは概ね同意してくれるのではないでしょうか。
だいぶ大学2年生の頃の話ではなくなりましたが、上記のお話をするにはもってこいなきっかけが大学2年生の時に起きていたので、話してみました。
振り返って始めてわかるとは情けないですが、テレビ業界の構図、仕組みを知ることが、今のテレビ業界を志す学生さんのためになるのではないかと思っています。
【#2 あとがき・ご意見募集】
少し長くなったので、またまた反響次第で続きを書くことにします。
大学時代の経験とテレビ業界時代の経験の相互性をもたせながら書いていくスタイル、これ、わかりやすいですかね。
僕はいいと思ってやってみたのですが、読んでくれた方はコメントで感想ください。
また、これまで身分を全く明かしていないので、僕が書き進めている事柄の信ぴょう性に疑問を持たれる方もいらっしゃるかも知れません。
そういった方には、詳細にとはいきませんが、僕がやっていた番組や在籍していた局のお話をできればと思います。
コメントください。できたら、TwitterやInstagramなどのダイレクトメッセージを活用してお話しましょう。
では、また。