野球のグローブが欲しかった話
これは子供の頃の話だ。
昨今のジェンダーフリーの話題を見聞きしていて
ふと思い出した事がある。
小学生低学年の頃だったと思う
当時あった「こども会」がサ終を迎えたのだ。
これは町内会や自治会のような地域の小さいコミュニティで
地域の子供やその親御さん等が参加していた物だ。
その「こども会」が解散するにあたって
子供が集まった時に使うおもちゃや備品等を
「じゃんけん大会」で子供達に配布するイベントが行われた。
が、私が集会所に行った頃にはほぼほぼ終了していた。
やる気のある子供達はきっと、開始時間から会場に集い
大いにイベントを楽しんだのだろうと思う。
だが、現地に到着した私が見た物は
残り僅かな残骸と古びた野球のグローブ
そして小さな男の子が残骸を眺めている所だった。
その場を仕切っていた女性は妙齢で
残ってるのはこれだけ
じゃんけん勝負して勝ったら持って帰れる。
とルールの説明をしてくれた。
謎のおもちゃや何に使うか分からない物まで
大量に並ぶ残骸の中で、唯一形を保っているのは
どうみても「古びた野球グローブ」のみだった。
そして女性にじゃんけん勝負を挑み
見事勝利を得た私は
「そのグローブが欲しい」
欲しい商品の希望を伝えたその瞬間である
「何言ってるの!!あなた女の子でしょう!
この男の子がグローブを欲しいって言ってるのよ!!」
「じゃんけん勝ったじゃん!!!」
「こうゆうのは男の子にあげる物なの!!
はい、あなたはこれよ!!!」
「なにこれ」
「これは・・・パーティーの時に
部屋を装飾する綺麗なものよ
女の子だしコレの方がいいでしょ?
グローブは男の子のものよ」
「ほらぼうやは私とじゃんけんしましょうね
じゃんけん、ぽん!
あら負けちゃったの?でももうお終いの時間だし
このグローブはあなたにあげるわ」
「その子負けたじゃん、こっちは勝ったのに」
「グローブはいまこの子にあげちゃったの
だからもうこの子の物よ。
あなたはもう帰りなさい?」
未だに非常に不服であった事を覚えているし
勝負のルールがこうも簡単に覆る理不尽さ
グローブを欲しがってたかどうかも謎な
ぽかんとした顔の男の子。
数年後、無事に邪悪な感情により
厨二病を患った事はいうまでもない。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?