食物依存性運動誘発アナフィラキシー(food-dependent exercise-induced anaphylaxis:FDEIA)
やっと過ごしやすい季節になり秋が到来しました。
食欲の秋、運動の秋というように、何をするにも適した季節です。
今回は食事と運動、どちらにも関連する病態を取り扱います。
アナフィラキシーについては以前のハチの記事で扱っています。
ぜひ参考にしてください。
本疾患の病態
特定の食物摂取後に運動することにより誘発されるアナフィラキシーです。
食事摂取、運動単独では症状は起こりません。2-4時間以内の運動で誘発されることが多いです。
通常はアナフィラキシーを起こさないため、診断つきにくい疾患です。丁寧な問診が重要です。また食事摂取がなければ、運動しても症状は出ません。全面的に運動を禁止する必要はありません。
原因となりやすい食べ物/誘発因子
アナフィラキシーガイドライン2022には、小麦や甲殻類、果物が多いとされています。小麦は6割ほどを占めます。
また運動以外の誘発因子として、鎮痛薬(NSAIDs)や飲酒により誘発されることがあります。
発症時の運動として球技やランニングが多いですが、歩行や入浴といった軽労作でも発症する場合があります。
原因食物の診断方法
問診や皮膚プリックテスト、血中のIgE抗体検査を参考に原因食物を同定します。
確定するためには誘発試験を行う場合があります。
アナフィラキシーを起こす可能性があり十分な治療が迅速にできる環境で行うべきです。
補足:アレルギーにおけるトリビア
最後にアレルギーに関して、明日誰かに言ってみたくなるようなトリビアを列挙します。
【パンケーキ症候群】
これは長期保存しておいた小麦製品で起こるアレルギーです。
小麦を長期保管しておくと、運悪くダニが混入する場合があります。
この小麦を調理し接触すると、ダニの成分に反応し起きるアレルギーをパンケーキ症候群といいます。
パンケーキに限らず、小麦を使ったもの(お好み焼きやたこ焼き)でも起こります。小麦自体にはアレルギーがないため、小麦を避ける必要はありません。とっておいた小麦粉を使う際は注意が必要です。
【サーファーと納豆アレルギー】
サーファーは納豆アレルギーが多い、と聞いたことはありますか?
これは交差反応がかかわっています。サーファーはクラゲに刺されることが多いです。クラゲの毒の成分と納豆の成分が似ているために、何度も刺されるサーファーは納豆アレルギーになりやすいと言われています。
海沿いの病院でクラゲ刺症をよく目にしますが、納豆が好きな場合には注意するように説明しています。
【生まれた季節とアレルギー】
欧州内科学会の報告では出生した時期によりアレルギーの発生率が変わるといわれています(Eur J Intern Med. 2016 Mar:28:97-101. PMID: 26586605)。
救急外来を受診した患者のうち蕁麻疹や、アナフィラキシーなどで受診した人を同定しその出生した季節で比較しています。その結果、春生まれの患者が多いとわかりました。
春は花粉が多くアレルギーの原因、抗原が多い季節です。出生した時期とアレルギーが関係あるかもしれないというのは興味深いです。
終わりに
今回はアレルギーに関する事柄をまとめてみました。
アレルギー症状は派手でありよく救急外来でも遭遇します。
なかでもアナフィラキシーは命に直結する疾患であり、迅速に対処できるよう準備しておきたいです。
参考文献:
・一般社団法人日本アレルギー学会:アナフィラキシーガイドライン2022