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『希望と絶望』を1週間で10回観るということ。

『希望と絶望』ネタバレありの感想です。




7月8日に公開された日向坂46ドキュメンタリー映画第2弾「希望と絶望」を観ました。
観ました、というよりは10回観に行っているのですが、これは回数の自慢でもなんでもなく、ただ作中で語られる久美ちゃんの言葉をしっかりと受け止めるのに、私は10回同じ作品を観ないといけないほど時間がかかってしまったというわけです。

久美ちゃんのインタビューから始まるこの作品。「この2年間はあまり見てほしくない」という言葉で締めくくられたインタビューのあと、オープニングタイトルが流れて本編へと進んでいきますが、この冒頭のインタビューのもう一つのキーワードは「アイドルだけど人間でもあるから辛かったことを物語として美化して消化されてしまうのもなんかなと思う」という言葉。
少し言葉は変わりますが、映画の終盤の東京ドーム公演後のインタビューでも「ストーリーにはしたくない」と久美ちゃんが同じ内容を語るシーンが流れます。

舞台挨拶やインタビューで監督が「取材をしたけどなくなくカットしたシーンがたくさんある」と話されてる中で、2度も使われている久美ちゃんの「ストーリー(物語)にはしたくない」という言葉。
冒頭で使われた言葉を念押しするかのように終盤でもう一度使われるにも関わらず、初めて観た私はこの作品からストーリーを感じずにはいられなかったのです。

同じ映像も注目するメンバーを変えてみる、この出来事だけではなく前後も考える、そんなことを繰り返して見ているうちにようやく気付きます。
22人の2年間が2時間のストーリーにまとまるはずがないと。
さて、ここまで辿り着くのにかなり時間がかかってしまったわけですが、ここからはそのさまざまな視点から鑑賞した感想を書いていきたいと思います。




映画の楽しかった好きなシーンの感想だけを読みたい方は「最後に、、、」へ飛んでください。



映画はひなくり2019の東京ドーム公演サプライズ発表のシーンから始まり、2020年からの2年間が描かれている。
2020年はメンバーの休業や加入、初のオンラインライブなどもあるが、今回は5thシングルの販促期間、W-KEYAKI FES.2021、全国おひさま化計画2021、渡邉美穂卒業、キャプテン佐々木久美の5本を軸に感想を綴りたいと思う。

君しか勝たん期


5thのフォーメーション発表からヒット祈願のチアまでの映像はセンターを務めた加藤さんが中心となって描かれている。
これは映画を観にいかずともわかっていたことかもしれない。この期間はファンが確認できるテレビやラジオ出演、雑誌などの仕事だけでも『加藤史帆』の名前を多く見かけた。
とくにチアの前日のスケジュールは1ファンながらに心配したことを今でも強く覚えている。
早朝からのラヴィット、始球式、深夜のレコメン、それに加えて各CDショップのサインやコメントの書き入れ。
ファンが目にする機会だけでもそれだけの仕事があり、ヒット祈願のためのバク転の練習、センターとしてのまだファンにはわからない仕事など想像するだけであまりにも詰め込まれているスケジュールだと感じていた。

だからといって私はこの時期のスケジュールを運営の管理不足だというつもりはさらさらない。
ちょうどこの時期に突入した頃のインタビューで影山さんはこう答えていた。
「1期生は特に(仕事が)ない時代を経験してるから、忙しいとかネガティブな感情より充実してるとか嬉しい感情の方が大きい」
これは影山さんと同じ1期生である加藤さんも同様だったのではないだろうか。
しかし、いつも側にいるの久美さんでさえも「支えてあげたいけど私もどうすればいいかわからなくて」というような状況に加藤さんが追い込まれていったことも事実である。

5th期間と6th期間のメディア出演の違いを見て運営がスケジュールを見直したのではないかと感じる部分もある。
以下がテレビ、ラジオ、配信系のスケジュールであるが、5th発売前の1ヶ月と6th発売前の1ヶ月では明確な違いが見受けられる。(あくまで私がリアタイ予定のものをまとめたメモのため、情報を追いきれず取りこぼしてる可能性あり)
また10月はメディア出演はなくても全国ツアー中という違いはあるので単純に比較はできないが。


作中ではラヴィットの最終出演回放送後の加藤さんのインタビューが使われているが、このインタビューは監督が撮ろうとして撮った映像ではなく偶然の産物ではないだろうか。
監督は舞台挨拶でこのように話していた。
「密着していると聞けない空気感がある。〈中略〉そんなときでも美穂さんだけは答えてくれた」

さてインタビューの話に戻るが、開始時点では疲れこそは伝わってくるが話しかけてはいけない雰囲気は感じとれない。しかし、途中から様子は一変し「わかんないんですよね。どうしよう。家帰りたいです」という言葉をきっかけにインタビューは終わる。インタビュー終わりに監督の「すみません」という声が入ることも印象的であった。

前述した通り監督は聞けない空気感を察知できる方である。それでも「家帰りたいです」という言葉を引き出すことになったこのインタビューは、撮ろうとして撮った映像ではなく、偶然撮れてしまった映像ではないかと感じられる。

ここで当時のヒット祈願チア(以下、チアとする)のことを思い返してみた。チアに関しては1ファンの立場であれこれと語ることは申し訳ないと思い1度も語ったことはなかったが、私は総じて“失敗”というような扱いをされていることに違和感を覚えている。
映像は嘘をつかないが誤解を招くような切り取り方をすることが出来ると強く感じたのがこのチアの映像であった。

私がチアで印象に残っているメンバーの1人に金村さんがいる。渡邉さんと挑んだ「風車」の技も成功し、終わった瞬間は満面の笑みで誰よりも輝いているように感じていたが、もう一方の「風車」が崩れてしまったことやチーム全体の様子を考えて成功とは言えなかったことも影響してか、本番が終わって金村さんから「大成功だった」と語られることはなかった。

チアに対して違和感を覚えたのはそれだけではない。
本番終了後はファンの中でも賛否両論あり大絶賛といえる状態ではなかったが、それでもフラッグチームのメンバーからは本番終了後にもう一度6人で集まって楽しそうにフラッグトスをしている映像が送られてきたのである。
こうして楽しかったと感じているメンバーもいる中で“失敗”という風潮になってしまうのはどうしてなのか。
スタンツチームが挑戦した大技「エレベーター」は補助もなくメンバーだけの力で立ち上がったにも関わらず、成功でも失敗でもなく触れられることなく終わっていったことさえも疑問が生じていた。

グループで挑戦したことだから1つでも失敗があれば成功とはいえないと言われてみればそこまでかもしれないが、このチアがファンの中で触れてはいけない出来事のようになってしまったのは、どうも印象操作されているように感じてしまう。

チア終了後の感想はセンターの加藤さん、キャプテンの久美さん、風車に挑戦した高本さん、影山さんと続いていくのだが、ここまでのメンバーで前向きな表情とコメントをしたのは久美さんだけである。このあと、バレエのフェッテを入れ込んだダンスを披露した松田さん、潮さんへと感想は続いていくのだが、多くのファンの記憶に残っているのはおそらく終了直後のメンバーの表情とここまでの感想の節々であろう。
つまりは、21人(美玲さん欠席)がパフォーマンスする映像のどこを切り取り、誰が語るかで印象なんて簡単に変えられてしまうのである。


少し話が逸れすぎたので映画に話を戻すと、映画ではこのチア終了後の影山さんが感想を語っているところで久美さんが加藤さんを引き抜きにくるシーンが映し出される。
その後の加藤さんの様子も流れるが、ドキュメンタリーではなく普段の活動であれば放送されないようなシーンになっている。それほどギリギリの状態でステージに立っていたということだろう。

しかし、これは映画では映っておらず当時のチアの記憶だが、加藤さんが引き抜かれる直前の高本さんが話しているときには泣いている高本さんの背中をさすって励ます加藤さんの様子が映っていた。

当時は高本さんの背中をさすっていたはずの加藤さんが、影山さんが話している途中でいなくなりしばらく不在という映像になっていたのだが、それが今回の映画で答え合わせとなったのだ。

前述したラヴィット後のインタビューは偶然の産物というのはここに繋がる。自身がボロボロの状態であっても自身の辛さを周りに伝えず、極限まで自分のことよりメンバーや仕事のことを考える。
だからこそ運営がスケジュールを管理しなかったのではなく、本人の気持ちとのバランスを見続けた結果追い込んでしまう形になってしまったのではないだろうかと。

当時を振り返ったインタビューで加藤さんは「しんどいと言えば仕事を減らされるのじゃないかと思ってチアの日にボロボロになるまでスタッフさんにも言えなくて勝手に1人で追い込まれてた」と回想している。

裏を返せば、このとき初めて「しんどい」と伝えることが出来たのではないだろうか。
チア翌日のブログでこのように語っている。

2021.5.27 18:40 日向坂46 加藤史帆ブログ


そして約1年後の小坂さん復帰後センターの際には「去年、自分がボロボロになったときに誰か側にいてくれたら嬉しかったなという想いがあったから側にいてあげられたらなと思う」と話している。

ここまでチアについて、5thの販促期間について語ってきたが、メンバーはファンが想像するよりずっと前に進んでおり、与えられた映像でしか判断できないファンがあれこれと邪推する必要はないのではないのだろう。
(とはいえ、『最強の加藤史帆』だからこそ乗り越えられたことであって、もう二度と繰り返さないでほしいという思いは消えない)




W-KEYAKI FES.2021


W-KEYAKI FES.(以下、ケヤフェス)はリハーサルの時点で倒れるメンバーが出ており、本番中に裏で倒れている映像も差し込まれていた。
炎天下でのライブであり、踊っていない客席のファンでさえも熱中症で倒れていた状況であったため、映画が公開される前から概ね予想していたことではあっただろう。

2日目(日向坂初日)の青春の馬のCメロ、ペアダンスのときに苦しそうに踊るメンバーがたくさんいる中、そんなメンバーを鼓舞するかのように久美さんが「おい!おい!おい!」と煽っていたのが印象的で、その後のMCで水に向かって走っていくメンバーの姿が忘れられないほど暑い日であった。

しかし、予想とは違っていたのがスタッフからの言葉だ。2日目終わりにLINEで指摘のメッセージが入り、それについて加藤さんは「がむしゃら感がなくなったねと言われてえ?となった」と語っている。具体的にどのような言葉がメンバーに向けられたのかは分からないが、翌日の円陣で久美さんが「昨日みたいなこと言わせないように頑張るぞ」とメンバーを鼓舞するシーンが映し出される。

さらには最終日の公演後、スタッフからメンバーへ「もっと踊ってくださいもっと歌ってください。個人個人のスキルをもっとあげてください。まだみんながみんなやってるのは小さい」という言葉が投げかけられる。

ここが今回の映画を観たファンの中で1番物議を醸し出しているシーンと言っても過言ではないかもしれない。

直後には“だから日向坂が好きなんだ”と思えるシーンが流れる。久美さん、加藤さん、高本さんがテントに向かって叫ぶシーンだ。
こんな近くで叫んでいたらスタッフさんにも聞こえているのではないかという疑問はさておき、こんなにも爽快で痛快なシーンが他にあるだろうか。「こんちくしょー!」「か弱い女の集団です!!」とテントに向かって叫び、近くにいた後輩たちは「ほんとそうですよ」と笑って見ている。さらにはそんな後輩たちへ「みんなも叫んだ方がいいよ」と促す。

なぜ物議を醸し出ているスタッフからの指摘のあとのこのシーンが好きなのか。メンバーが対スタッフへの感情をきっかけに同じ方向を見て一緒に進んでいこうとする姿が伝わってくるからである。

その日の夜、密着カメラへのインタビューで久美さんが「炎天下の昼間のライブのことを言われてしまうのが悔しくて、多分どんなに準備してたとしても無理。〈中略〉体力つけてどうにかなる問題なのかなと思っちゃいました」と話しているが、まさにその通りである。

ここまでが初めて映画を鑑賞したときの感想だが、これほどまでにスタッフが完全な悪として描かれていることに対してほんの少しの違和感を覚えていた。

繰り返し鑑賞しているうちにその違和感が浮き彫りになっていく。

ケヤフェス終わりにスタッフからのメンバーへ向けられた言葉は本当にライブ中の2日間の話だったのか。

炎天下で歌い踊ったことへの何の配慮もない言葉の選び方や全体の場で怒るというマネジメントには疑問が残ったままであるが、メンバーがアイドルとしてプロであるのと同様にスタッフもその道のプロである。素人である私たちが指導内容について非難する資格はない。

ケヤフェスのリハーサル時点のインタビューで久美さんが「(以前とは違い他で仕事をしてるメンバーもいて)心的にも間に合うか不安になって体力にも繋がってきてる」、富田さんが「気持ちがなかなか揃わないなと感じる」と話している。中には「不安で楽しめない」という声も上がっていた。

このライブを迎える前にメンバーの気持ちが一つになっていなかったことは事実であろう。
これはたらればの話になるが、このまとまりがない状況でライブのパフォーマンスのみならず「メンバーの一体感がない」という内容まで含めて指摘していたら、そう感じていたメンバーと感じていないメンバーでの認識の差が広まり、グループが崩壊していく可能性はなかっただろうか。運営を敵とすることで一致団結させるきっかけになったことはないのだろうか。
(とはいえ、運営がそこまで考えていたかは分からないし、前述した通り何の配慮もない言葉や指導方法には疑問が残る)


全国おひさま化計画2021


この全国おひさま化計画2021(以下、ツアー)は観ているだけのファンでも分かるほど公演ごとに演出が変わっていたことを覚えている。
2本披露されていた朗読劇が1本になり、MCの回数やダンストラックの位置など大幅なセトリ変更も見受けられた。
以下が初日の広島公演と千秋楽の愛知公演のセットリストである。
※期別曲、ユニット曲は1公演ごとにローテーションしていた。

全国おひさま化計画2021のセットリスト



おそらく大変な期間を過ごしたのだろうと想像していたのは千秋楽の久美さんのMCでの言葉だった。
「みんなの気持ちがなかなか一つになれなかったりとか、私個人的にはこのツアー大丈夫だったのかなという気持ちもあったんですけど」
この言葉を口にしながら涙ぐむ久美さんの姿を見たときに、ファンには見えないトラブルが起きていると察知したものの、それでも純粋にツアーが楽しかったと言えるほどメンバーからはその不安が伝わってこなかった。

映画ではなぜ演出が変更されることになったのか当時のメンバーの心境の変化にフォーカスして描かれている。

高本さんがリハーサル中に「(セットリストや演出が)確定しちゃってるからどうして私たちに一回聞いてくれなかったんだろうっていうそういう疑問が生まれてる」と口にしている。

ケヤフェスでは炎天下でのライブであろうと関係なくパフォーマンスについて指摘されている。これはプロとして扱われているからこそだろう。
それならば高本さんの言う通りである。ステージに立つ演者の意見も取り入れて演出が組まれてもおかしくない。
ケヤフェスからこのツアーでの高本さんのインタビューは、本番まではプロとして扱われず演出が全て決められた状態で渡されるのに対し、本番後はプロとして指摘される。そんなことを繰り返していたのだろうかと感じるシーンであった。

そして初日公演後「日向坂の良さってこんなに無防備に全力でどっかで大変なことになるんじゃないのか大丈夫みたいな、それでも全力で行っちゃうというのがすごさだったんだけどそこがちょっと弱くなってる」とスタッフに指導されるシーンが映る。
やはり公演後はいかなる状況であってもプロとしての指摘をされているのだ。

当時のインタビューで渡邉さんが「今の日向坂はどこかこのツアー中で意識を変えないと」と話したまま、映画内ではツアー中の変化が語られることなく千秋楽の久美さんのMCに飛ぶわけだが、千秋楽公演前の円陣で久美さんがメンバーに「いろんな気持ちがあったツアーだったと思うんですけど」と伝えるシーンが映っている。
密着していなかったはずはないので、ドキュメンタリー映画にしてもなお流せない映像だったか、尺の都合でカットされてしまったのかはわからないが、この久美さんからメンバーへの言葉でいかにこのツアー期間がメンバーにとって大きな期間だったかが伝わってくる。

そしてツアーを振り返ったインタビューで美玲さんは「今までは言われたことをやってメンバー内で相談したことは大人の方たちに伝えてなかったけど、ツアーで大人の方たちに相談してみるとセトリを変えてくださったり一緒にライブを作り上げることができた」と答えている。
同様に久美さんは「自分たちが表現者としてやることだから自分たちが納得してやらないとダメだ」と答えており、このメンバーとスタッフとの距離感はファンにも伝わる形で現れたのではないかと感じるのが東京ドーム公演の発表方法である。

ひなくり2019で東京ドーム公演の開催が発表された際は、メンバーにもサプライズとなっておりファンと同じタイミングで伝えられる形となっていた。
東京ドーム公演を聞かれたメンバーも「嬉しい」という気持ちはあれど「不安」を語っていたメンバーの方が多かった印象が強い。

一方でひなくり2021での東京ドーム公演の開催はメンバーの口から発表された。この発表以降で、東京ドーム公演を不安と語るメンバーはおらず、それはツアーの期間を経てメンバーとスタッフで話し合えるようになり、メンバー自身もプロの演者として納得してステージに立てるようになったからではないだろうか。



渡邉美穂卒業


映画内でも一つの軸となっていた渡邉さんの卒業。卒業が発表された際から1年以上前から考えていたと語られていたが、一度はバラバラになりかけた日向坂46がもう一度同じ方向へと進み始めたのは渡邉さんが最後にグループに残してくれたものと感じて仕方なかった。

予告でも使われていた言葉で休業前の小坂さんに対して渡邉さんが「手を離すのは簡単だけどここで私が手を離したらこの子は二度と戻ってこないかもしれない」というシーンがある。

これは小坂さんにだけではない。
1stシングルのヒット祈願で箱根峠を走りながら、自身も走っているにも関わらず挫けそうなメンバーの背中をさすりさらには歌いながら鼓舞する姿。
2ndシングルのヒット祈願で、濱岸さんをずっと応援しながら一緒に歩いていた姿。
3rdシングルのヒット祈願で失敗してしまった高本さんの元へ誰よりも早く駆け寄り励ます姿。
なぜかヒット祈願の思い出ばかりになってしまったが、振り返ってみればいつも弱ってるメンバーの側に寄り添っている姿が思い浮かぶ。

渡邉さんがツアーを振り返り「嫌な雰囲気のグループのまま去りたくなかったというのもある」と語っていたが、まさにその言葉の通りで、卒業を決意したのであればグループやそこに残るメンバーがどうなろうと関係なくなるにも関わらず、ずっと寄り添い続けたことが容易に想像できる。


映画の中でメンバーに卒業を伝えるシーンが使われており、渡邉さんの口から卒業が伝えられたあとメンバーの表情が抜かれていくのだが、不自然なほど他のメンバーより長い時間久美さんが映し出され、久美さんが微笑んで画面が切り替わる。
この微笑みの真相はわからないが、久美さんと渡邉さんは同じ視点からグループを見ていたのではないかと想像した。

それはこの卒業を伝えたシーンでの久美さんの微笑みを見て6thシングルの特典映像「ひなたの夏休み」を見たときに違和感を覚えたことを思い出したからだ。

「ひなたの夏休み」で今後の目標について話していた際に、渡邉さんがほんの少し間をおいて「みんなと楽しく過ごせたらいいな」と笑いながら話すのだが、他の5人が個人やグループの規模の差はあれど日向坂のメンバーとしての将来を語るのに対して「学校を卒業しても学生みたいな楽しいことをできるのはここにいるからだと思うと、この時間を大切にしたいと思った」と今を語っていたのだ。
その際に久美さんから「でもみほは話すとそうっすねって愛想笑いして終わらせるよね?」と大事な話ははぐらかすと指摘されており、その場は渡邉さんの持ち前の明るさで笑って終わっていたが、このやりとりは私がずっと気になっているシーンであった。

もしかしたらこのあたりから久美さんは気付いていて、そして卒業発表の際の微笑みに繋がるのか。真相は久美さんにしか分からないがそんなことを考える一コマであった。

そんな2人の会話はエンドロール後に流れる。

久美さん「みほがいなきゃ乗り越えられなかったこといっぱいあるし」
渡邉さん「大丈夫ですこれからも。日向坂は」

もし渡邉さんがこのタイミングで卒業していなければ、久美さんと同じ視点からグループを見てまとめていくのは渡邉さんだったに違いないと感じるシーンだった。
だからこそ、役職を持たないこのタイミングで卒業を決意したのかもしれないと考えたがそんなこと邪推しても仕方ない。


卒業に関してもう一つ気になるシーンといえば、ドーム直前に陽性者が判明するシーンだ。
ここで泣き崩れる渡邉さんに対して、メンバーが「絶対できるよ、絶対チャンスあるよ」と声をかけ、スタッフも「絶対やろうな」と声をかけている。それでも渡邉さんが「全員でステージに立たなきゃ卒業できない」と泣いており、気持ちを切り替えて挑んだドーム公演終了後には「全てをちゃんとステージに置いて来ました」とインタビューに答えている。

この会話から考えると、この時点では卒業セレモニーの開催は決まっていなかったのだろう。
まだメンバーには伝えられていなかったのか、それともここで22人が揃えなかったから急遽用意されたのかは分からないが、誰よりも22人でステージに立つことにこだわり、最後までメンバーのために寄り添い続けた“アイドル渡邉美穂”のラストステージは22人揃ったというハッピーエンドを迎えられたことだけが救いである。



キャプテン佐々木久美


この映画は久美さんの「1メンバーとして思います」という言葉で本編が終わり、エンドロールが流れる。
しかし、この映画内での久美さんは1メンバーとしてというより常にキャプテン佐々木久美として描かれているように感じていた。

映画内で使われているインタビューはどれも「私は」ではなく「メンバーが」という視点で語られている。
他のメンバーが「自分のことで精一杯。周りを見る余裕なんてなかった」と話している場面でさえも久美さんは「私が」という話をしていない。

誤解のないように先に述べておくと
私は佐々木久美さんが日向坂46のキャプテンで本当に良かったと思っている。それ以上に佐々木久美さんが大好きだという気持ちがある。

さて、映画の話に戻ると小坂さんが休養すると発表された際に久美さんが項垂れるシーンが映っている。
後にインタビューで「休めると知って安心した部分もある」と答えているが、メンバーが休養すると聞いて責任を感じてしまうことに、優しさや思いやりを感じるとともにその責任感の強さが少し不安になった。

チア後のインタビューのシーンでは、加藤さんを走って迎えに来て裏に連れて行く久美さんが映っているが、久美さんはスタッフさんに加藤さんを任せてすぐにスタジオに戻っている。
生配信中のスタジオにスタッフは入れない、だけど久美さん自身も演者であり裏へついて行くわけにはいかない。
きっとそのバランス感覚が鋭いのだろう。

ケヤフェス前のインタビューでは「今はありがたいことに色々仕事させていただいてるメンバーもいてそういうのが積み重なって心的にも間に合うか不安になって体力にも繋がってきてる」と答えているが、山梨でのリハーサル直後に東京に戻って生放送をしてまた山梨へ戻っていったことはファンでも知っていることで、自身がそんな生活を送っていてもさらに他のメンバーのことを気遣っている。

なぜこの話をしているのかというと、私が映画の中で1番胸が締め付けられたシーンが僕なんかのフォーメーションが発表されたときの久美さんのコメントだからだ。
「こさかなが心配だなって気持ちがおっきくて。W佐々木は保護者としてあそこに配置されたと思ったので、後ろにはとしきょんがいるし、全力で支えておかないとまた崩れちゃうと思うので」
初フロントに選ばれたのにも関わらず、最初に浮かんでいることが後輩のサポートという事実。
この言葉を聞いて、佐々木久美さんがキャプテンで良かったと思ったことは紛れもない事実であるが、その一方で佐々木久美さんがアイドルでいてくれることそのものを評価してくれる大人は周りにいるのかと心配にもなった。
久美さんに任せておけば日向坂は大丈夫だと周りの大人が判断していないかと。

1stシングルのヒット祈願が終わった直後のシーンを思い返せば「あんた辛いのに無理したでしょ」と近くで見ていて支える加藤さんがいることも事実である。
しかし、メンバー以外の周りの大人やファンが「佐々木久美さん」ではなく「キャプテンの佐々木久美さん」を無意識のうちに評価してしまっていないかと不安になる。

私は、W佐々木がフロントに配置されたから安心というよりは、W佐々木がフロントに選ばれたという事実が嬉しい。
久美さんはポジションに関係なくその場所に求められているパフォーマンスをする方だと分かっているので「フロントおめでとう」という言葉は少し違うのかもしれないが、1ファンとして「久美さんがフロントに選ばれたことが嬉しい」と伝えていきたいと思っている。
まさに渡邉さんの「幸せになってください」という言葉が的確なのかもしれない。


さて、あれこれと邪推してもドキュメンタリーはあくまで過去の話であり、今の日向坂はすでに次のステップへと進んでいる。
最後は久美さんへの愛を語って脱線してしまったので感想はここまでにしたい。




最後に、、、

なんだかんだと尖った視点で見た感想を書いていたらかなりの長文になってしまいました。
あれこれと書きましたが、ひとことで言えば日向坂46が大好きです。この気持ちは変わりません。

好きだからこそ映画を観て違和感を覚えた、その違和感がなくなるまで考えた、その結果こんな考えに至った、そんなところです。

リハビリしてるこのちゃんのところへリスペクトスリーがサプライズで会いに行くシーン、本当は近付きたいけどソーシャルディスタンスを保つ美穂ちゃんと、構わず抱きつきにいくとしちゃん。そして「としちゃんは身体に触れたいだけでしょ」とスタッフさんに言われる始末。そんな中でニコニコしてこのちゃんとハイタッチしてるひなのちゃん。
好きな日向坂詰まってました。

みーぱんがセンターと発表されて、泣いて喜ぶあやちゃん、嬉しそうにみーぱんの元に走ってくる紗理菜ちゃん。
美玖ちゃんがセンターと発表されて嬉しそうにしてる丹生ちゃん。出来ないという美玖ちゃんを抱きしめる影ちゃん。
こんなフォーメーション発表後の姿が見れるなんて幸せですよね。

ってかのフォーメーションが発表されたあと、列に並んだときに美玖ちゃんに1番に声をかけるきょんこ。
僕なんかのMV撮影で泣いてる菜緒ちゃんの元に駆け寄っていくけど、特に声をかけることもなく心配そうに周りをウロウロしてるきょんこ。
そのあと菜緒ちゃんを抱きしめるきくとしを後ろから見守ってるきょんこ。
めちゃくちゃ好きです。思いやって心配してるのに行動には移せない不器用さ。だけどそれがかっこよかったりして。

他のメンバーが不安で楽しめないと話しているときでも「今回は笑顔を届けるパフォーマンスがメインになってるのでとにかく私たちがまず楽しまないと」としっかり構えているまなふぃ。
周りに余裕がないときほど冷静なまなふぃがいてくれることの安心感は計り知れません。

僕なんかのジャケ写撮影の菜緒ちゃんのスチールを見て「かわいい」「さらに大人っぽくなったよね」と話してる紗理菜ちゃんと茉莉ちゃん。
もうただのファンじゃないか。メンバーがファンになってしまうところも好きです。

東京ドームの本番前に菜緒ちゃんを励まして歩いていくみくにん。「みんなが菜緒さんを待ってる」とひとことでファンとメンバーの総意を伝えられる天才。
ステージにあがる直前に「おかえり」と声をかける美穂ちゃん。こんなの泣かない人いないでしょ。
美穂ちゃんの「おかえり」はズルい。そんな美穂ちゃんの姿を近くで見てきたメンバーがたくさんいます。これからも大丈夫です。

東京ドーム公演後にくみちゃんが真面目にインタビュー答えてるのに、スカートの裾持って「結婚式ごっこ」しちゃうとしちゃん。
仲人がドレスの裾持って歩く意味不明さもひっくるめて好きです。

東京ドーム公演後にひよたんへのインタビューがなくリハーサルしてる表情がズームになっただけなので、そのときどう思っていたのかは分かりません。語らなかったのか、まだ語れなかったのかはわかりませんが、もしかしたらファンは知らなくていいことなのかもしれません。
それでも、美穂ちゃんの「またいつか東京ドーム立つときは行きます。普通に勝手にステージにのぼって、そのときはひよたんもいると思うんで」という言葉があるようにやはり少し心残りではあるんですよね。
卒業生の3人もドームに足を運び、約束の場所でひらがなけやき1期生12人が揃ったように、いつかきっとその願いが叶うことを信じています。

密着映像は嘘はつかないけど、切り取り方で印象操作は出来てしまう。
10回も見てるとさすがにそこに行きつくものだなと思ったり、どんな映像を見ても日向坂を嫌いになるはずもなくさらに好きになっていく一方でした。

もし私が同じ期間に密着して映画を作るなら、新メンバー加入のドッキリを打ち合わせしてる先輩メンバーとか、外出自粛期間にすずちゃんと丹生ちゃんが中心となって作ってくれた手洗いうがいガラガラヒーの動画とか、休業中のこのちゃんに千羽鶴折るメンバーの映像を中心に使ってたでしょうね。ツアー中にキュンのセリフをご当地にあわせて変えてたり、セリフを考えすぎてラジオで相談してたりして、そうしてファンを楽しませてくれたとしちゃんの特集とか間違いなく作ってました。
今回の映画で語られてた期間や部分は伏せて、どんな困難もメンバーで支え合って乗り越えましたという映像にしていただろうし、そういう意味ではファンとしてではなく、制作者として冷静に判断できる人が必要だったと言いますか、、、

舞台挨拶でとしちゃんが「編集でハッピーな感じにも出来るけどどうする?って久美さんに監督が言ってるのを何回も見た」と話していましたが、それでも今回のような作品になったということ、タイトルが「希望と絶望」になったということには何かしらの意味があると考えています。
ツアーの千秋楽で久美ちゃんが言ってくれた「おひさまの皆さんに支えられてこういう楽しい時間を過ごすことができてるんだなと」という言葉が監督にも響いたから、ファンのインタビュー映像が使われたり、ファンのおかげでまた同じ方向を目指せたという映画になったのかと考えたり、考え始めるとキリがありませんが感想はこのあたりで。


最年長の久美ちゃんが「どんな未来が待ってようときっとそれは自分たちが全力で進んできた結果だし絶対後悔することはない」と言いきれるグループが頼もしいし
最年少のひなのちゃんが「やっぱり日向坂っていいな、日向坂好きだなって全員が改めてそう思えたらといいなと思います」と言えるグループの未来は希望で満ち溢れてるなと感じました。

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