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【フィールドノート】取手滞在19〜20日目|2024.9.13-14|阿部健一

9/13(金)

18時半頃に新宿を出て、19時45分頃に取手に着く。
午前中世田谷で仕事があり、遅くとも14時くらいには解散になるだろうからまっすぐ向かえば15時半くらいに着くなーと思っていたのだけど急遽新宿の美容室に行った。この日を逃すと月末まで髪を切る余裕がない、しかもお世話になっている美容師さんが来月からアメリカに行ってしまう、どうにか今月中に行かねばならない、ということで数時間の隙間に詰め込んだ。
それでも19時過ぎにはつけると思っていたが、三連休前でお店は忙しく、また後任の美容師さんへの引き継ぎ式のようなものもあっていつもの施術より30分くらい長くかかった。申し訳ないタイミングで来てしまったと思ったが、そういうこともある、仕方ない。

19時45分頃に取手につき、その足で東口の北膳IIへ。この日はTAPの羽原さんと娘さんとごはんを食べましょうという約束をしており、遅くなってしまって申し訳ない気持ちで合流。前からおすすめされていた韓国料理の元山食堂という案があったのだが、元山食堂は19:45ラストオーダーで20:30閉店らしく、自分の到着遅れを受けて駅前に変更になった。連休前の北膳IIは混み合っていたけど、お店が奥に奥に長いので席を確保できた。
ビールをおいしくいただく。マグロの頬肉フライと卵とじがおいしかった。

オンラインでuniの優衣さんとも接続した。今日はミーティングでなければましてや接待でもないオフの会だけれど、どうしても話題はいま進めているクリエーションのことになってしまう。必要というのはあるし、仕事の話も場やメンバーを変えて話すと違った響き方をしてくるのでこういうもうひとつの時間は大事だと思うが、常に生活に仕事やクリエーションが重なってくることの負担や、結果としてそれを生じさせる側にもなっていることに少し心苦しさも感じる。
途中、娘さんに「最近学童でなにが流行ってるの?」とたずねたら「何も」と言われた。何も。

あっという間に時間が経ち21時半くらいに解散。西口の西友で買い物をしたかったので西口へ。平井さん家で切らしたみりんやお酢を買う。
買い物を終えて東口に戻ると、セブンイレブンの前の植え込みに座ってアイスを食べている羽原さん親子に再会した。「こんな時間にふたりで外で過ごすことってないので。夜風を感じています」と話してくれたが、取手のまちでアートプロジェクトをやり続けることと生活をすることと子育てをすること、その日々や年月のようなものが後ろに覗いているように感じた。
うまくことばにすることができないし、できるわけない。わたしはほとんど何も知らない。想像することしかできない。
軽くことばを交わして、団地に帰る。

井野団地への帰り道、ふとこうやって団地や駅周辺を行き来することへの慣れを感じた。考えなくても間違えずに道を曲がれるし、どれくらいの時間を費やすのか、どれくらいのエネルギーを使うのかも直感でわかるようになってきた。それは考えなくなってきたということだし、新鮮さを失い始めたということもできるかもしれないし、やっと冷静になってきたともいえる。こういう感覚は滞在を始めて2週間半くらいで訪れるという持論を持っていて、この日は19日目。なので来たかというかんじ。この変化の前後で感じることや見えるものがちょっと変わる。このことが今回の取手滞在で何をもたらすのかはまだよくわからないが、忘れないように書き留めておく。

9/14(土)

今日は午後から都内に出勤なので、スラックスとワイシャツを来ていつも通り朝の洗濯へ。めちゃくちゃ暑い。紫外線が日焼け止めを通り抜け半袖シャツから出ている腕を焼いているのを感じる。汗ばんだ肌がスラックスに張り付き、気持ちが悪い。

洗濯中は、おなじみローソンのイートイン。取手生活ではこのイートインにけっこう癒されている。日々手を入れないと自然に侵食されていくDIY精神必須な環境だからこそ、清潔で、涼しくて、インダストリアルな空間に気が休まるのかもしれない。取手という郊外においてコンビニのイートインは一番身近な「都市」的なものなのかもしれないなあとも思う。自分はまだまだ都市人間で、郊外暮らしには程遠いのかもしれない。
ランドリーでは今日も「いらっしゃいませ」と声をかけられる。もう驚くことはない。洗濯機に衣類をつっこんでいる横でお客さんがお店のお母さんに何かを差し入れし「じゃあ冷蔵庫に入れてきますからね」などとやりとりをしていた。

洗濯のあと、濡れた衣類を持って、通りをはさんで反対側に広がる田んぼエリアに行ってみた。住宅地の中を通る道は田んぼに入り込みやすくできているわけではなく、いい加減にいくとどんどん関係ない方角に誘導されかけるが、少し引き返すなどするうちに田んぼの際へ出ることができた。こうやって見ると取手には山がない。河岸段丘を除けば平たい地形だ。夏の雲から、徐々に秋の雲へと変わってきている。
それしか原体験がないから仕方ないのだけどやっぱり富山市の風景を思い出す。夜は真っ暗だし生活の役にも(直接的には)立たないけれど、田んぼの風景はけっこう好きだ。畑とは違う匂いもする。

団地に帰ると3階のお部屋にお住まいの方が階段室をほうきで掃いていたので、「こんにちは」と声をかける。20日目にしてはじめての階段室での住人との出会い。そうか、団地の階段室は自分たちで掃除しないと、誰かがやってくれるわけではないんだよなということに素朴に気が付く。部屋の外側がどこまで自分(たち)の場所なのか、このあたりはまだ体感的によくわからない。

11:30くらいに部屋を出る。長い長い出勤の道のり。ちょうどいい電車が11:42発で、これは取手始発でないのでいつもそれなりに混んでいる。もっと早く出ればいいけれどそれだと職場にやたら早く到着することになる。始発駅であってもその恩恵を受けるにはけっこう調整がいる。

車窓から差し込む日光がやはり腕を焼く。避けたいけれど、混んでいる車内ではどうしようもない。
隣に立っていた男女の会話が聞こえてくる。
「専門、けっこうみんな年上と付き合ってるんだよね」
「一年生男子余っちゃう」
「ねえわたし毎日常磐線乗ってるんだけど」

電車は走る。

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